カナの件で私が誘拐されてからというもの、カルロは公爵家の影を私に付けるようにしてくれている。
なんだか申し訳ないなと思いながらも、こうして役に立ってくれているから、私も甘えることにしている。
「リタ、どんどん頼ってくれていいんだからね? 僕としてもその方が安心できるんだからさ。遠慮しないで欲しいな」
そう言って貰える私は、本当に幸せ者だと思う。
ちなみにマリオ達は1ヶ月の停学処分になった。
◇◇◇
今日は久し振りに神殿に来ている。
聖女の最終候補としてレイとアミの二人を選んだことで、聖女としての私の公務を分担できるようになったからだ。
二人とも既に聖女としての神力は、私に引けを取らないレベルに達しているので何も問題無い。今日も二人はそれぞれ聖女の公務を行っている。
で、私はと言えば、
「え~と...今日はレイが神殿の癒し担当で、アミが街の清掃担当か...じゃあ私は孤児院に慰問にでも行こうかな」
こんな感じで結構グダグダだったりする。さすがに公式行事とかは私が出席するけど、普段はこんな風にかなり自由にさせて貰っている。
◇◇◇
孤児院に来るのは、あの人身売買事件以来だったりする。事件後、子供達の待遇は大幅に改善されたので、みんな元気そうな顔をしている。
良かった良かった。安心したよ。
「聖女様~! ご本読んで~!」「聖女様~! 刺繍教えて~!」「聖女様~! 鬼ごっこしよ~!」「聖女様~!」「聖女様~!」
「ちょ、ちょっと待って待って! 私の体一つしかないからぁ~!」
元気過ぎる子供達を甘く見てたよ...
「うん!? ねぇ、あの子はなんで一人で居るの!?」
子供達の攻勢が落ち着いた頃、私の目に一人の少女の姿が目に止まった。その子は誰とも絡まず一人で本を読んでいた。
「あ~...あの子はね~...誰とも話さないの~」
「だから誰も相手にしないの~」
「聖女様も放っておいていいよ~」
子供というのは時に残酷だったりする...悪意は無くとも思ったことを素直に口にしてしまうから...
私は放っておけなくて、その子に話し掛けてみた。
「こんにちわ、お名前聞いてもいいかな?」
「......」
「なに読んでるのかな?」
「......」
「みんなと一緒に遊ばない?」
「......」
て、手強い...仕方ない。心の声を聞くか。
『......』
無心ですか! ここまで心を無に出来るってある意味凄いな!
これは手に負えないと思った私は、院長である神父様に聞いてみることにした。
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