絶望召喚士、今日も元気に生きています

~ロリ巨乳上司と下顎の無い犬との冒険者ライフ~
珈琲豆
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チワワだよ!これどう見てもチワワだよ!!!

公開日時: 2020年9月1日(火) 08:00
文字数:2,480

「聞いたよ!!冒険者の素質のある人が来たって!!?」



そう言って俺の目の前に現れた少女は、「ロリキョニュウ」という人種だった。人間族のロリキョニュウ種…もうそうとしか言えない。身長は俺の胸元くらいまでしかなく、たわわな胸とふんわりとした金髪が揺れている。


「あら、サリーちゃん。耳が良いんですね。もう伝わってしまいましたか」

受付嬢は若干嫌そうな顔をしながら言う。

「ちゃん付けで呼ばないでって言ってるでしょ!私は歴とした、この冒険者ギルド カラアーワ支部召喚士職員長 兼 専属召喚士代表だよ!」


サリーと呼ばれる少女は、そのしっかりある胸を張って答える。

待てよ?代表?この子が?


「いや~私嬉しい!ついにこの支部にも召喚士が来てくれたってことが嬉しい!!」


もう既に入ったことになってしまっている。


「いやいやサリーちゃ…冒険者ギルド カラアーワ支部召喚士職員長 兼 専属召喚士代表。彼はまだ入ったわけではなく…」


それを聞くとサリーちゃ…冒険者ギルド カラアーワ支部召喚士職員長 兼 専属召喚士代表は目を潤ませて上目遣いで俺を見る。


「え…私…ぬか喜び…?」


俺は迷った。心底迷った。

だが、男たるもの、上目遣いで求められてしまったら応えるしかないだろう。それもこんな可愛い子ならば。


「いいえ、本日より召喚士ギルドに入りたく参りましたヒデオ・サモンです!召喚士としての経験は一切ありませんが、熱意と根気強さならばあります!ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いします!!」


あぁ…受付嬢の視線が痛い。さっきまであんなに嫌がってたのにどうしたって視線が突き刺さる。

だが反対に、サリー代表は目を輝かせて俺の方を見ていた。


「ヒデオさん…!!熱意のあるお言葉ありがとうございます!!任せてください!一流の召喚士に育て上げてみせますよ!!」


こうして、俺とサリー代表は固い握手を交わした。隊長の手は小さく、柔らかかった。


「はぁ…じゃぁこっちの書類に指印をお願いします。はい、大丈夫です。では頑張ってください」

俺は渡された書類(文字は見たことない形だが、不思議と読める。ギルド規約に関する承諾書だった)に指印を押して投げやりな励ましの言葉を聞く。


それが済むと俺はギルドの一室に案内された。


「ここが私たちの支部の召喚士が集まる本部です!」


そこは大きめの机が3つと本棚が2つあるだけの質素な部屋だった。

「思っていたより狭いんですね…」

「ま、まぁ…」

サリー代表は苦笑いして答える。


「この部屋では何をしているんですか?」

「ここはギルド職員の部屋として利用されていて、例えば召喚士宛てに依頼がきたりすればこちらで整理し、依頼に適した専属の召喚士に回す~って作業をしたりします!あ、各部署につき3~4人は職員と専属冒険者が在中しているんですよ!」

「でも俺たち以外いないんですが…」


俺が尋ねると、サリー代表の表情が曇った。


「いないんです…もともと。

今この支部の専属召喚士は…私だけで…職員も私だけ。

まぁ…それと言って仕事がたくさん来るわけじゃないし、私だけでなんとかなっているんだけど…」


「前はもっといたんですか?」

俺は何も物の置かれていない2つの机を見ながら尋ねた。

「うん。みんな都の方に行っちゃった」


部屋の中をどんよりとした空気が包み込む。


「で、でも大丈夫!今はそれより、ヒデオさんを召喚士にすることが先決です!」


サリー代表はそう言いながら、トタトタと棚の方に行って一冊の本を持って戻ってきた。


「これが召喚士の道しるべです!」


渡された本には「召喚士のススメ」と書かれていた。

中をめくると、こんなことが書かれていた。


『召喚士とは、魔物や精霊と契約を交わし、共存する者のことである。

歴史は古く、伝説の五勇者は世界創造に携わった神の化身、五龍を召喚したとされているし、今でも人々は精霊召喚を用いて生活の手助けにしている。

人々の生活と切って切り離せない召喚の技術、これを世の為人の為に使おうとする君にこの本を捧げる。』


「召喚ってのはこうやって、人の生活と密接な関係にあることなんです!

だからヒデオさん、あなたでも一流の召喚士になれますよ!」


サリー代表は無理に明るく言った。だが、俺には「誰でもなれるから需要が無いよ」という意味合いに感じて仕方がなかった。


代表に促されて俺は次のページをめくった。


『一般的な召喚は2つ。

1つは精霊召喚。世界の基盤となる4つの属性の精霊を召喚する技術だ。

この精霊はあらゆる種族に対等に接するため、誰でも召喚できる。

もう1つは魔物召喚。魔物とは魔力を帯びた生物のこと。時に人間に牙を剥く彼らも、条件さえ満たせば召喚は可能である。

魔物にも人間にも5つの種類の魔力があり、自分の持つ魔力にあった魔物とのみ契約を交わすことができる。』


「というわけでヒデオさんの魔力の種類を確かめてみましょう!

ちなみに私は風の魔力を持っています。なので」

代表は床に手を当てる。床に魔法陣が浮かび上がり、中心から緑っぽい毛色の小型犬が姿を表す。目のクリクリした随分愛らしい姿だ。…うん。これチワワや。


「こうやって風の魔物を召喚できます!」


小型犬は代表を見るやいな、胸に飛び込んでいく。代表はそれを優しく抱きしめて頭を撫でていた。くそう、羨ましくないんだからね!!くそう!


「それ…魔物なんですか?」

「うん!列記とした風属性の魔物「渓谷の犬・グリースバルゴンズ」です!」

「名前と見た目のギャップ!」

「私は「巌窟王」って呼んでいるけどね!」

「呼び名もかよ!」


だが、俺には疑問が残る。


「それって…どんなことができるんですか?」

目のクリクリした小型犬。到底戦えるようには見えない。

「これはただのモフモフじゃないよ!!風を起こせるモフモフなんだよ!!」

クゥ~ンと鳴く巌窟王。俺の頬をそよ風が撫でる。


「戦えるんですか!!?」

「戦う気だったの?グリースバルゴンズは愛玩用の魔物だよ?」


ずいぶん雲行きが怪しい。やはり召喚士というのは間違いだったのだろうか?


「とりあえずは魔力の種類を見極めましょう!場合によってはヒデオさんもモフモフの犬を召喚できますよ!」


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