絶望召喚士、今日も元気に生きています

~ロリ巨乳上司と下顎の無い犬との冒険者ライフ~
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絶望召喚士、闇の眷属を手にする

召喚士とはなんぞや?

公開日時: 2020年9月1日(火) 07:00
文字数:2,035

この文章は、今後私のような目にあった人々のために捧げる。

第32代召喚士ギルドマスター「ヒデオ・サモン」


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俺の名前は左門英雄さもんひでお。今年で26歳、前の世界では証券会社の平社員だった男だ。


っと、こんな話はどうでも良い。察しの良い方は気がついていると思うが、俺は別世界に飛ばされてしまったようでね。前の世界の経験なんて大して使えない世界に来てしまったわけだから、どうでもいいんだ。


俺がこの世界、どこかで読んだファンタジー小説のような世界に来た経緯なんかもどうでもいい。俺が昔読んでいた異世界小説の、トラックに轢かれて〜っていう流れとは大きく異なるが、今となっては昔の話。ありきたりだから話さなくてもいいだろう。

夢の中で俺の嫌いだった部長の文句を言っていたら部長が「随分君は口が達者だね!転勤してもらうよ!異世界にね!!」って言われて起きたら異世界だった、それだけだ。


ありきたりだろう?


おっとモノローグが長かった。

それで、俺が異世界に来て何をしたか、そこが大事だよな。

俺は異世界に来て「召喚士」って職に就くことになったんだ。


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「魔法使いにはなれないの!?」

「だからぁ…あなたの身体能力、持つ魔力量、全てを見ても無理。勇者ポロンドが聖剣を持っても英雄になれないくらい無理」


俺は森で倒れているところを冒険者に発見され、病院に運ばれて、看病されていた。

最初は朝起きたら見知らぬところにいるわけだから焦ったよ。でも周りが西洋人っぽい顔つきだったりトカゲの顔してたり耳が尖ってたりしてる人たちが流暢に日本語喋っていれば、すんなり異世界だなって落ち着くわけで。

喋る人たちは「ニホン語?これは大陸共通言語ファルだろ?」って言うんだけどな。


俺が来た世界は、様々な民族が仲良く暮らす剣と魔法の王道ファンタジーワールドだった。

となれば男なら魔法に憧れるわけ。

俺は魔法使いになれると信じてギルドに来たんだ。

冒険者になりたかったらギルドに行けってのが世の常識みたいでな。俺はギルドで自分に合った仕事を鑑定してもらったわけ。


で、召喚士を勧められた。


「ヒデオさん。鑑定の結果ですと、あなたは魔法使いになるために必要な魔力が足りません。戦士になれる身体能力もありません。魔工技師に必要な知識もありません。ただ幸いにも精神力と少しの魔力はあります。

もし冒険者を名乗りたければ召喚士になるしかありません。」

冒険者ギルド受付嬢のメガネのお姉さんは冷めた口調で俺に言った。


「んでも…そういうのって勉強したり訓練を積めばなれるんですよね?ほら、魔法の勉強とトレーニング、しますよ?」

「訓練しても良いですが、その間あなたは怪我人でもないのに病院で寝泊まりするんですかね?働きもせず、タダ飯を食らうんですかね?」


凄く厳しい。もう涙目だ。

確かに今は金も仕事もないニートとして病院の隅で泊まらせてもらっている。だから冒険者になろうと思ったんだけど…


「まぁ…正直、あなたは冒険者なんて職には就かずにどこかの商店で雇ってもらったほうが良さそうですけどね」

相変わらず、受付嬢は冷めた口調で俺を説き伏せる。

だけどこれだけは譲れない。俺は冒険がしたい。この未知なるもので満ち溢れた世界を探索したいのだ。あとチート能力でもあって、可愛い女の子たちとのハーレムライフを送れれば完璧だ。


「で、どうするんですか?諦めて酒場にでも勤めますか?」

「召喚士も誰でもなれるわけないですよね…?」

「召喚士は魔力があればほぼ誰でもなれます」


即答だった。


「じゃ、じゃぁ…召喚士って沢山いるんですよね?僕はもっと人出のたりなさそうな…魔ほ…」

「召喚士は人気が無いので人はほとんどいませんね」


待ってくれ。


「この世界の人に冒険心は無いのか!」

「冒険する場所が無いんですよ。もう大概の場所は勇者様が行って調べちゃってるんで」


おのれ勇者ぁ…


「…じゃぁ冒険者なんていらないじゃないですか」

「んー、形式上冒険者と言っているだけで、本来は人々の依頼をこなすギルドの組合員ですから。昔からのしきたりで「冒険者」って言っているだけで冒険はしません」


なんだか腑に落ちるような落ちないような。


「まぁそういうわけなんで頑張って職場探してください。必要ならばクエストボードで探しましょうか?」


ここに来て俺は迷いが生じていた。なにせ本来ならば異世界転移モノならばチート能力でも手にして世直し~!!!といった流れになるはずだ。だが、現状では世界は安定しているし俺にチート能力が無い。これじゃ美女ハーレムなんてできる宛ても無い。


そうなってしまうと、異世界スローライフ?まぁ確かにこの世界なら満員電車の苦痛も嫌いな上司もいないわけで、早めの老後のようなまったりした生活ができそうではある。


どうしたものかと思案している時だった。


「聞いたよ!!冒険者の素質のある人が来たって!!?」


奥の扉を開けて1人の少女が駆けてきたのだった。

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