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薄幸の町娘は、借金返済のためクエスト受付所で働きます
夏野わおん
夏野わおん

5-5.5 待ち時間の暇潰し

公開日時: 2021年6月22日(火) 17:01
更新日時: 2022年1月6日(木) 12:17
文字数:997


 次なるハーレムの師匠候補。

 高級武具の商人が到着するまでの間。

 

 ソファにて相手を待っている雄一郎とツインテールは、無駄話に華を咲かせていた。

 

 

「……で、どうなの?」

 ツインテールが呟く。

「今までの中で、何か学べそうなことはあったの?」

 

 ぷかぁ。

 雄一郎は天井を仰ぐ。

 

「――世の中、金とラッキースケベなんだなってことはわかった」

「そんな世紀末、あってたまるか」

 

 

「でも、実際そうだったじゃんか!」

「何が?」

「お前もだいたい理解できてるだろ?」

 

 雄一郎は阿呆を曝した。

 

「――『π』ルストンさんは、金で年上お姉さん侍らせてたし。

 ――『H』野郎は、他人の胸揉んでも怒られないみたいだし!」

 

「……その表現の仕方、やめて。

 字面が汚過ぎる」

 

 

 ツインテールは、カップに少し口をつけた。

 香り高い紅茶で喉を潤していく。

 

「――というかさ」

 

 そして濡れた唇を指で拭うと、ツインテールは言った。

 

「あの人たちがモテる理由なら、他にあったでしょ」

 

 

「え。どこ?」

「見てて気づかなかった?」

「全然」

「マジか、この男」

 

 痛めた眉間を摘み、彼女は答えた。

 

「――みんな、わりと人格ができてたでしょ」

「へ?」

「パイルストンさんも、エイチさんも、相手の女性のことをちゃんと思ってたじゃない」

 

「……『レンタル彼女』と『エロハプニングからの成り行きパーティ』だぞ?

 本当にそうか?」

 

「そりゃあ、お金で解決するのはイケないことではあるけどさ。

 ちゃんと相手の心情を優先するようなルールを定めていたし、会話の内容に上下関係はなかったでしょ?」

 

 

 顎に手を当て、雄一郎は回想してみる。

 

「うーん……一理あるかも?」

「でしょ?」

 

 さらにツインテールは、こう付け加えた。

 

「エイチさんもさ。確かにスケベなところはあるけど、その分すごく控えめな方だったじゃない」

 

「でも、ああいう奴が極悪な事件を起こすもんだぞ」

「それは偏見……いや、あんたの場合は僻みか」

「いま、なんか言った?」

「いいえ、何も」

 

 

 とにかく、とツインテールは言った。

 

 

「あんたがモテないのは、ただ一つ。

 ――人格が破綻してるからよ!」

 

「もうちょい言い方考えてくれないかなぁ!?」




 …………三人目のハーレムの師匠が到着するまで、あと少し。

 

 それまでの間に、雄一郎たちが殴り合いの喧嘩をおっぱじめなければいいのだが。

 

 

 付き添いとしてソファの後ろで見守るバイトとシュガーは、ただただ祈る。

 

 

 「「……(お願いだから武具屋さん、はやく来てー!!)」」

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