異世界傭兵物語

~ 物理と魔法を極めた最強の魔族になりました。仲間と楽しく冒険したり、領地経営もしちゃいます!~
黒鯛の刺身♪
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第七十話……誕生! 邪神ラムザ! 【side・魔将ラムザ】

公開日時: 2021年5月18日(火) 19:09
文字数:2,214

【Side・ラムザ】


 俺様の名はラムザ。

 今は魔族となって生まれ変わり、ズン王国の宰相をしている。



 俺様は祭壇に生贄を捧げ、再び神の召還に取り掛かる。

 まぁ、神と言っても邪神の類だが……。


 印を結び、呪文を詠唱する。


「……ハクルガ・オリ・ペドロニア・パルス……、我が召喚に応えよ!」


 すると、青白い光と共に、巨大な邪神が現れる。

 背丈は50mもあるだろうか。

 この邪神は、上半身が巨大な角を生やした悪魔、下半身は巨大な龍の姿をしていた。



「使徒ラムザよ、久しいな! 何の用だ?」


「……ははっ、先日、邪神様が提示なさった『戦なしにこのシャルンホルスト台地を絶望の地へと貶める』という課題を達成したことのご報告です!」


「おう、そうであったな! 見事だ! 氷雪の巫女をここまでうまく操るとはな。ククク……」

「……で、其方の願いは、邪神と成りて、我が後継者となることであったな?」


「ははっ、左様にございます」


 しかし、邪神は少しだけ首をかしげる。



「その前に、一つだけ問おう」


「なんなりと!」


「人間も魔族も、普通は王や魔王になることを望むものだ。であるのに何故、其方は我が後を継ぎたいのだ?」


「……それはですね、私も最初は王や公を目指したものです。しかしながら、宰相に成りて民衆が要求することは、『やれ食料が足らない!』だの『もっと豊かになりたい』というばかり。しかも、自らの手で掴もうとせず、上の者にただ要求するだけなのです。そしてそれが叶わないとなると、『王が悪い!』と喚きちらすのです。自らが努力せぬのに……」


「……ほう」


「よって、王と違って無条件に崇拝される神への道こそ、我が望みと悟りました! そして、最高の幸せと考えます!」


 邪神は納得したように深くうなずいた。



「……だがラムザよ、我が願いも、聞き届けれような?」


「ははっ、必ずやこのシャルンホルスト台地を、阿鼻叫喚の地獄絵図と化して見せます!」


「よかろう! では、今から其方に、我が力の全てを授けよう! 時間を止めることのできる魔剣シュバルツシュルトの力と共に、この世界に闇をはびこらせよ!」


「……ははっ、必ずや!」


 邪神は納得した様子で、その姿をエネルギー体に変える。

 そしてそのエネルギーは全て私の体に降り注いだ。



――ズドォォォン


 あたりにまばゆいばかりの閃光。

 凄まじい衝撃の末。


 俺様の皮膚は若返り、心には若き情熱が滾った。



「うぉぉぉおおお!」


 素晴しい。

 魔族も人間をも超越する神の力が宿ったのを感じる。

 まさに、何でも出来そうだった。


 試しに軽く魔法を唱えると、近くの岩山に大きな破孔が開き、その向こうの青空が見えた。

 しかも、全然魔力が消費した感じがない。

 魔力は無尽蔵と思える感だった。



「……うはは、わはははは! このラムザ様こそが、この地上の支配者に相応しい!」


 遠くの地平線から出でる日の出さえ、俺様の力に平伏しているようだった。




☆★☆★☆


――ズン王国の王城の地下牢。



 俺様は乏しい灯の中、牢の中のエドワードに話しかける。



「エドワードよ、いい加減俺様の言うことを聞け!」


「……もう、嫌なのです。私はあなた様の覇業に十分協力したはずです!」


 エドワードは頭を振る。

 こいつは殺すには惜しい。


 人間や魔族にしては珍しく、約束を必ず守るのだ。

 ……かつ、有力な魔族に知己が多くいる。



「……まぁいい。何十年も地下牢で頭を冷やせ!」


「……」


 ……そう、魔族である我々は人間より遥かに長寿。

 急いでことを為す必要性は無かったのだ。




☆★☆★☆


――王城の大広間にて。



「ラムザよ! 先日の魔王ベリアルの処分、誠にご苦労であった!」


「ははっ! 誠に有難き仰せ!」


 ズン王国の実質の支配者シャルロッテ様からお褒めの言葉を頂く。


 彼女からすれば、魔王ベリアルはまさに目の上のタンコブだったのだ。

 ……まぁ、ベリアルを殺したのは、もちろん別の理由もあるからなのだが。



「これで、カミル様に魔王を名乗って頂いても良かろうか?」


「ははっ、万民がそれを望んでおりますゆえ!」


 ふふふ……。

 魔王か。

 今や、大変い安い代物だ。

 そんなもので満足してくれるなら、いくらでもくれてやろうではないか。


 ……せいぜい魔王如きの呼称で喜んで、俺様の手駒となってくれ。



「……で、ついてはじゃ、ベリアルも倒したことだし、魔剣シュバルツシュルトを返してもらえぬか?」


 ……たしかに、魔剣シュバルツシュルトは魔王の証。

 これは返さねばいかんかな。


 時間を止められる力が惜しいのだが、誰でも使えるわけではないしな。


 ……もはや、邪神の力をも得たのだ。

 時間など止められぬでも、どうとでもなろう。



「わかりました。ここに魔剣シュバルツシュルトをお返しいたします」


 俺様は跪き、魔剣をシャルロッテ様にお返しした。



「流石はラムザ殿、揺るがぬ忠誠心は確かなものですな!」


 重臣たちが俺様を褒め称える。

 相変わらず単純な奴らめ……。




☆★☆★☆


――その二日後。


 シャルロッテ様の子カミル様は、盛大な魔王就任式を挙行。

 その費用は、全て寒さで凍える領民への重税で賄われた。



「宰相様、反乱でございます!」


「……ん? 反乱だと?」


 ゴミ虫どもが、重税に反発してきたか。



「我に任せよ!」


 俺様は反乱に加担した村々を焼き払い、逆らう奴等は皆殺しにし、残りは稚児に至るまで捕縛。

 ズン王城の城下で、奴隷として売りさばいた。



「無能な奴らは、奴隷こそ相応しい!」


 こうして日々、ズン王国に誠実な忠臣として働く俺様。


 ……嗚呼、今日の仕事の後の酒も、大変に美味だった。

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