『……力弱き者よ! 今一度、立ち上がらぬか?』
頭の中に、どこからか念話が入って来る。
『……我を再生させしものよ! その恩に報い、立ち上がる力をくれてやろうと思う。立ち上がるか否か?』
……立ち上がりたいが、今のままでは勝てません。
『相手は邪神の力を手にしておる。戦いを公平に期すため、お前には古代黄金竜の力を与えてやろう!』
…………。
……。
『愛すべき仲間を危険から遠ざけ、一人で戦った勇気を、我は祝福せん!』
…………。
……。
『……すべからく、古代黄金竜の力を与えよう!』
☆★☆★☆
「なんだ貴様!?」
目を覚ますと、ラムザが驚いていた。
「……!?」
驚くべきことに、私の傷は塞がり、魔力も充実していた。
さらに言えば、私の体には見たこともない黄金色のオーラが纏われている。
「奇妙な術を使いおって! 今度こそ死ね!」
ラムザがレイピアを構えて突っ込んでくる。
……!?
……突っ込んでくるのが見えるぞ。
「何だと!?」
私はラムザの動きを見切り、レイピアの切っ先を躱した。
「まぐれは続かんぞ! オルァ!」
ラムザが何度も斬りかかるが、それを全て見切ることができた。
――カキィン
さらに、愛剣でラムザのレイピアを叩き落とす。
「……ば、馬鹿な。この邪神の力を得た俺様の攻撃が見切られるなど!?」
ラムザは明らかに狼狽していた。
「くそう!」
ラムザは後ろにステップすると、魔法を詠唱してきた。
「古の邪悪の源よ、今こそ顕現されたし! デス・フレア!」
「!?」
暗黒エネルギーの大魔法が私に叩きつけられる。
――ドォォォン
大爆発を起こすが、黄金のオーラに護られた私は傷一つない。
「メテオ・ストーム!」
続いて、多数の隕石が降ってくる大魔法を食らうが、私の周りのオーラはそのすべてを打ち消した。
「……ば、馬鹿な! ありえない!」
どうやら、私は膨大な力を貰って、蘇生されたらしい。
今まで捉えられないほど速かったラムザの動きは、まるでスローモーションにも思えるほど的確に把握できていた。
「でやぁ!」
ラムザに飛び掛かり、彼の右肩をあたりめがけて斬りかかる。
――ザシュ
暗黒オーラのバリアを貫通し、ラムザの胴体から血しぶきが上がった。
「……ああ、死ぬ。助けてくれ! なんでもする!」
凄まじい魔力を含有するラムザは、噴水のように血が出ていても動き、そして私に命乞いをしてきた。
死にそうな気配はないのだが、きっと私に勝てないと悟ったのだ。
彼の顔には絶望の色がにじみ出ていた。
……どうするか?
このまま生かしたまま、氷雪の巫女の元へ連れて行こうか。
等と考えていると、
「馬鹿め! 死ねや!」
ラムザは突如、隠し持っていたショートソードで、私の首めがけて斬りつけてきた。
――ヂン
黄金色に輝くオーラが、ラムザの一撃を難なく弾く。
「……お、御助けを!」
ラムザは急いで地面に這いつくばり、命乞いをしてきた。
「嫌だ!」
私は容赦することなく、ラムザを灰に変えることにした。
塵一つ残らぬ高温の魔法の大瀑布によって……。
「ふぅ……、終わったのかな?」
……上を見上げると、空高くに、古代竜の姿が小さく見えた気がした。
☆★☆★☆
――その後。
氷雪の巫女の元へと、エドワードを送り届けた。
……そして、すぐに寒波は去った。
その結果。
パウルス王国から、膨大な額のご褒美が貰えた。
私も騎士に叙任され、『竜騎士』の称号を贈られた。
あまりの報酬の多さに、久しぶりにマリーの眼が『$』模様になっていた。
――古城にて。
「ガウ・ベルンシュタイン殿! 魔族会議は其方を魔王として称えます!」
「有難き幸せ!」
ラムザを失ったズン王家は、直ちに事の収集を図るべく、魔王の位を返上した。
それが、廻り廻って私の元へと来たということだ。
「これが魔王の証、魔剣シュバルツシュルトでございます!」
……これが時間を止められる唯一の武器。
きっと、これによって、ベリアルは死んだのだろう。
「魔王万歳! ベルンシュタイン様、万歳!」
「万歳! 万歳!」
古城のバルコニーから外を見れば、幾多の魔族や人間たちが、私の魔王就任を祝ってくれていた。
☆★☆★☆
――豪華な晩餐の後。
古城の裏庭に人気は少ない。
「本当に行かれるのですか?」
「ああ」
名残を惜しむバルガス達に返事をする。
私の古城や町や領土は、バルガス達にあげることにした。
……私は力を持ちすぎたのだ。
この世界にいたとしても、禍にしかならないだろう。
私はマリーを抱え、ドラゴの背中に乗る。
そのドラゴは小さな羽が生え始めていた。
そのうち空も飛べるようになるだろう……。
「……では、みんな元気でね!」
私はドラゴを駆り、シャルンホルスト台地に別れを告げたのだった。
☆★☆★☆
その後のガウ・ベルンシュタインは、シャルンホルスト台地の外の新たな土地に6つの王国を建国。
魔族と人類に絶大なる繁栄の礎を築いた。
そして、その後はマリーとの間にできた6人の子供に統治を任せて引退。
山の中に小さな小屋を建て、そこで余生を過ごしたと言われる。
……ちなみに、彼の伴侶は終生マリーだけだったそうな。
「ガウ、今晩のご飯はシチューよ!」
「わ~い!」
(おわり)
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