異世界傭兵物語

~ 物理と魔法を極めた最強の魔族になりました。仲間と楽しく冒険したり、領地経営もしちゃいます!~
黒鯛の刺身♪
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第七十三話……最後の戦い【後編】 ……そして。

公開日時: 2021年5月24日(月) 00:28
文字数:2,057

『……力弱き者よ! 今一度、立ち上がらぬか?』


 頭の中に、どこからか念話が入って来る。



『……我を再生させしものよ! その恩に報い、立ち上がる力をくれてやろうと思う。立ち上がるか否か?』


 ……立ち上がりたいが、今のままでは勝てません。



『相手は邪神の力を手にしておる。戦いを公平に期すため、お前には古代黄金竜の力を与えてやろう!』


 …………。

 ……。



『愛すべき仲間を危険から遠ざけ、一人で戦った勇気を、我は祝福せん!』


 …………。

 ……。


『……すべからく、古代黄金竜の力を与えよう!』




☆★☆★☆


「なんだ貴様!?」


 目を覚ますと、ラムザが驚いていた。



「……!?」


 驚くべきことに、私の傷は塞がり、魔力も充実していた。

 さらに言えば、私の体には見たこともない黄金色のオーラが纏われている。



「奇妙な術を使いおって! 今度こそ死ね!」


 ラムザがレイピアを構えて突っ込んでくる。


 ……!?


 ……突っ込んでくるのが見えるぞ。



「何だと!?」


 私はラムザの動きを見切り、レイピアの切っ先を躱した。



「まぐれは続かんぞ! オルァ!」


 ラムザが何度も斬りかかるが、それを全て見切ることができた。



――カキィン


 さらに、愛剣でラムザのレイピアを叩き落とす。



「……ば、馬鹿な。この邪神の力を得た俺様の攻撃が見切られるなど!?」


 ラムザは明らかに狼狽していた。



「くそう!」


 ラムザは後ろにステップすると、魔法を詠唱してきた。



「古の邪悪の源よ、今こそ顕現されたし! デス・フレア!」


「!?」


 暗黒エネルギーの大魔法が私に叩きつけられる。



――ドォォォン


 大爆発を起こすが、黄金のオーラに護られた私は傷一つない。



「メテオ・ストーム!」


 続いて、多数の隕石が降ってくる大魔法を食らうが、私の周りのオーラはそのすべてを打ち消した。



「……ば、馬鹿な! ありえない!」


 どうやら、私は膨大な力を貰って、蘇生されたらしい。


 今まで捉えられないほど速かったラムザの動きは、まるでスローモーションにも思えるほど的確に把握できていた。



「でやぁ!」


 ラムザに飛び掛かり、彼の右肩をあたりめがけて斬りかかる。


――ザシュ


 暗黒オーラのバリアを貫通し、ラムザの胴体から血しぶきが上がった。



「……ああ、死ぬ。助けてくれ! なんでもする!」


 凄まじい魔力を含有するラムザは、噴水のように血が出ていても動き、そして私に命乞いをしてきた。

 死にそうな気配はないのだが、きっと私に勝てないと悟ったのだ。


 彼の顔には絶望の色がにじみ出ていた。



 ……どうするか?

 このまま生かしたまま、氷雪の巫女の元へ連れて行こうか。


 等と考えていると、



「馬鹿め! 死ねや!」


 ラムザは突如、隠し持っていたショートソードで、私の首めがけて斬りつけてきた。



――ヂン


 黄金色に輝くオーラが、ラムザの一撃を難なく弾く。



「……お、御助けを!」


 ラムザは急いで地面に這いつくばり、命乞いをしてきた。



「嫌だ!」


 私は容赦することなく、ラムザを灰に変えることにした。

 塵一つ残らぬ高温の魔法の大瀑布によって……。



「ふぅ……、終わったのかな?」


 ……上を見上げると、空高くに、古代竜の姿が小さく見えた気がした。




☆★☆★☆


――その後。


 氷雪の巫女の元へと、エドワードを送り届けた。


 ……そして、すぐに寒波は去った。



 その結果。

 パウルス王国から、膨大な額のご褒美が貰えた。


 私も騎士に叙任され、『竜騎士』の称号を贈られた。

 あまりの報酬の多さに、久しぶりにマリーの眼が『$』模様になっていた。




――古城にて。


「ガウ・ベルンシュタイン殿! 魔族会議は其方を魔王として称えます!」


「有難き幸せ!」


 ラムザを失ったズン王家は、直ちに事の収集を図るべく、魔王の位を返上した。

 それが、廻り廻って私の元へと来たということだ。



「これが魔王の証、魔剣シュバルツシュルトでございます!」


 ……これが時間を止められる唯一の武器。

 きっと、これによって、ベリアルは死んだのだろう。



「魔王万歳! ベルンシュタイン様、万歳!」

「万歳! 万歳!」


 古城のバルコニーから外を見れば、幾多の魔族や人間たちが、私の魔王就任を祝ってくれていた。




☆★☆★☆


――豪華な晩餐の後。


 古城の裏庭に人気は少ない。



「本当に行かれるのですか?」


「ああ」


 名残を惜しむバルガス達に返事をする。

 私の古城や町や領土は、バルガス達にあげることにした。


 ……私は力を持ちすぎたのだ。

 この世界にいたとしても、禍にしかならないだろう。



 私はマリーを抱え、ドラゴの背中に乗る。


 そのドラゴは小さな羽が生え始めていた。

 そのうち空も飛べるようになるだろう……。



「……では、みんな元気でね!」


 私はドラゴを駆り、シャルンホルスト台地に別れを告げたのだった。




☆★☆★☆


 その後のガウ・ベルンシュタインは、シャルンホルスト台地の外の新たな土地に6つの王国を建国。

 魔族と人類に絶大なる繁栄の礎を築いた。


 そして、その後はマリーとの間にできた6人の子供に統治を任せて引退。

 山の中に小さな小屋を建て、そこで余生を過ごしたと言われる。


 ……ちなみに、彼の伴侶は終生マリーだけだったそうな。



「ガウ、今晩のご飯はシチューよ!」


「わ~い!」





(おわり)






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