異世界傭兵物語

~ 物理と魔法を極めた最強の魔族になりました。仲間と楽しく冒険したり、領地経営もしちゃいます!~
黒鯛の刺身♪
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第六十三話……ちょっと変わった収穫祭。

公開日時: 2021年5月9日(日) 07:04
文字数:2,017

「旦那様、敵は一時撤退致したようですぞ!」


 古城に帰り、伝令の報告を受ける。


 パウルス王国の中でも、荒れ地や森林地が多いベルンシュタイン領の寒波は、その他の地域を凌駕した。

 よって、我が方へのズン王国軍の侵攻は一休みとなったようだった。

 例年より早い寒波に感謝せねばならないだろう。



「しかし、二か月も早く雪が降るのは妙ですな」


 スコットさんは首をかしげる。



「寒いのは嫌ですわ」


「嫌ぽこ~」


 女性陣は早い冬の到来に不満げだ。

 実りある秋が早く終わったのだ。

 同じ意見の領民も多いに違いない。



「しかし、収穫祭はいかがいたしますか?」


「……あ」


 秘書のイオに言われて気づく。


 この時期は例年で言えば収穫祭の時期だったのだ。

 領民たちが楽しみにしているお祭りである。

 しかし、祭り会場予定地である古城前広場は、既に厚い雪で覆われていたのだ。



「……よし、雪かきをしよう!」


「ガウ、雪かきってなに?」

「美味しいものぽこ?」


 この世界には、どうやら雪かきの風習は無いようだ。

 ありのままの自然を受け入れるという感じなのだろう。

 それはそれで、とても風流で結構なことなのだが……。




☆★☆★☆


「迸れ、獄炎! ファイアストーム!」


「大地を焼き尽くせ、火竜息! ファイアブラスト!」


 皆で協力して、火炎系の魔法を連呼。

 古城前の雪を次々に解かす。



「次はスクロールを仕掛けるぽこ!」


 電熱線の代わりに、火炎魔法を仕込んだ羊皮紙の巻物を周囲に設置する。



「御館様、ゴブリン工兵参りました!」


「ご苦労様、では計画通りに頼みます!」


 ルカニに率いられたゴブリンの精鋭工兵隊が、私の作った計画書に基づき、雪かまくらや雪像を次々に製作。

 いつもの収穫祭とは違った、でも、趣のある収穫祭の準備を進めたのだ。




☆★☆★☆


――三日後。


 城下町にまで、融雪及び除雪を完了し、祭りの為の飾りつけを行った。



――ドドーン


 パウルス王都から仕入れていた花火を打ち上げる。

 収穫祭の開始だった。



「お店が沢山ぽこ~」

「一風変わった収穫祭ですな」


「雪もこうしてみると奇麗ね」


 ポココやスコットさん、マリーも上機嫌である。

 前世の雪まつりにも似た、ちょっと変わった収穫祭となったのだ。



「安いよ、安いよ!」

「はい、お待ち!」


 冬の為の食料取引市に混じり、子供も喜びそうな出店もあるていど出た。

 出店の品は、焼きトウモロコシや菓子パン、ちょっとした肉料理もある。



 さらに今回、私が企画した仮設料理店を出店。

 そのメニューの一つはコロッケであった。



「これは旨いな!」


 怪我がまだ治らない岩石王だが、人生はじめてのコロッケの美味しさに驚いているようだ。

 コロッケはこの収穫祭の為に下準備した秘密兵器だった。


 卵やパン粉など、この世界では貴重な素材をふんだんに使った逸品料理である。



「この茶色いのは何ですかな?」

「辛い汁ぽこね」


「それはカレーって言うんだよ」


「へぇ、ガウって、物知りなのね」


 マリーたちに尊敬のまなざしを向けられるが、私の案に従って作ってくれたのは、秘書のバンパイアであるイオだ。


 在地の様々な香辛料を混ぜて多数試作、とりあえず甘口のカレーの製作にこぎつけていた。



「この汁をご飯にかけるんですな?」


「パンにつけても美味しいよ!」

「飲んだら辛かったぽこ」


 辛いと言いながら、ポココがぺろぺろとカレーを舐める。

 スコットさんは、コロッケにカレーをかけて食べていた。

 まぁ、この食べ方が正解というモノは無いだろう。



「これは何ぽこ?」

「エビフライだよ!」


「へぇ、これも油の鍋で煮るのですな?」


 ポココとスコットさんが不思議に見つめる中、ルカニが温めた油鍋に、衣のついた大きめの川エビをいれていく。


――ジュゥゥ


 きつね色にあがったエビフライは、コロッケと並び、この後に領民から絶大な支持を得ることとなる。



「このオニオンを刻んだマヨネーズというソースにつけて食べるのだな?」


「はい、そうです!」


 大きめのエビだが、岩石王の巨体からすると、とても小さく見える。



「……う、うまい!」


「あ、貴方、私にもくださいな!」


 岩石王夫婦にもエビフライは好評だった。



「お替わりぽこ~」


 その後、油鍋に好物のカエルを入れようとするポココを全力で阻止。

 こちらで用意した出店も、概ねが完売御礼となったようだった。




☆★☆★☆


「楽しかったわね」

「楽しかったポコ」


「風流なものですな」


 皆で古城から上がる夜の花火を見る。

 お腹もいっぱいで、幸せなひと時だった。



「がはは! 早く来る冬も悪いものでもないな!」


 快活に笑う岩石王。

 確かに早い冬の到来で、ズン王国軍は一時撤退してくれたため、収穫祭を無事執り行うことが出来た。

 流石に戦時中に収穫祭をするのは無理だろう。

 そう考えると、この寒波もまんざら悪いものでは無かったのだ。



――が、しかし、寒ければ良いというモノでは無かった。


 例年より早い寒波により、パウルス王国では食料品が不足。

 各地の町や村では、食品価格が急騰。

 飢えた市民が、支配層である貴族の館を襲うという事件まで発生していた。

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