魔王でニューゲーム!

~リアルで死んだらゲームのステータスを持って異世界に行けました~
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09話 機械少女・勧誘編

公開日時: 2020年9月1日(火) 14:10
更新日時: 2020年9月24日(木) 13:14
文字数:3,129

 オレがやりすぎてユニコがいじけた。

 だがしかし、この対応は困る。

 このいじけは、ゲームの中で見たことがなかった。

 ゲームでなかったことには対応できない!!!

 なんてオレが思っていると、ブレイドが言った。


「ユニコ。あなたは、自分よりも弱くて能力がない方々を、『無能で不要』と思っているです?」

「そんなことは…………ないのだ」


「なのです!

 一番の存在に追いつけないからと言って

 お役に立てないとは限りません!

 ですからですから、元気なほうがお素敵なのです!」


「サトウ殿があなたを、一番の腹心として傍においている理由がわかったのだ……!」


 ブレイドの瞳が、にわかに輝く。

 ほわあぁ……!

 という擬音も、聞こえてきそうだ。

 

「きききき、聞きましたか、サトウ!

 わたしはサトウ一番の腹心に見えるようなのです!

 わたしはとてもうれしいですが、サトウ的にはどうなのです?!

 わたしはとてもうれしいですが!」

 

 オレは言った。

 

「助かっている」

「くゥ~~~~~~~~んっ」


 ブレイドは拳を握りしめ、ぷるぶると震えた。

 頭のアホ毛もめっちゃゆれてる。

 かわいい。

 

「時にサトウ殿。

 ナタ殿に、質問があるのだ」

「よかろう」


 ユニコはナタに問いかけた。

 

「わたしとあなたは、過去も何度か戦っているのだ。

 しかし今日の貴公は、過去の何倍も強くなっていたのだ。

 いったい、どういうことなのだ?」

 

 ナタは言った。

 


「オリハルコン。」

「なに……?!」

「オリハルコン、食べた。」

「確かに機人は、良質な金属で強くなることができる。

 しかしオリハルコンほどの超希少金属を、容易く食せるはずはない。

「それでも、食べた。」

「どうやって手に入れた?」


 ナタは言った。


「大勇者がくれた。」


 大勇者。

 それは大魔王と対をなす、二強の一角。

 そしてゲームのラスボスだ。

 私欲のために魔王を悪と決めつけて、魔族と魔王を大虐殺。

 諌める勇者の娘を目の前に連れ出して、拷問の末に虐殺するイベントもあった。

 とりあえずオレが、倒すべきと定めている相手。

 

(もちろんここの大勇者が、ゲームと違う性格の可能性もあるが……)


 警戒しておくべきだろう。


「なにはともあれ、一度街に戻ろうなのだ。

 我があるじに、ナタやサトウ殿のことを伝えなければなのだ」

「そうしようか」


 オレたちは、街に戻ることにした。 


  ◆


 同刻。

 機人国の『四天王』が集まり会議をしていた。


「ナタが捕虜にされたようだな」

「やつはマシンガルド最強を名乗っていたが、実際にその通り」

「『四天王の功績』と言われるものも、その九割がナタによるもの」


「我の力はナタに及ばぬ」

「我の力もナタに及ばぬ」

「王もその若さゆえ、ナタの力には遠く及ばぬ」


「……」

「…………」

「………………」


「「「どうしよう……」」」


  ◆

  

 街の手前。城壁近く。


「ついたな」


 オレはナタの縄をほどく。


「サトウ殿?!」

「どうした?」

「拘束を解くのは、さすがに……」

「案ずるな」


 オレはナタの首筋に、人差し指を当てた。


「んうっ………!」


 ナタが苦痛に顔をゆがめる。


「よし」

「………。」


 ナタは自身の手のひらをじっと見つめる。


「ブレイドを倒してみろ」

「サトウ?!」

「余を信じろ」

「承知なのです!」


 素直であった。


「………。」


 ナタはしばし黙っていたが、オレの言う通りにした。

 ブレイドにパンチ。

 ぽこん。

 ブレイドにキック。

 ぺこん。


「――火尖槍。」


 槍を召喚するものの――。


「っ?!」


 下敷きにされた。

 スパアァンッ!

 そのダメージで服が弾ける。


「んうっ………。」


 涙目でオレを見た。

 オレは裸から目を逸らし、槍を持ちあげる。

 

「ナタには偉大なる余が呪いをかけた。

 今のナタなら、一般人でも押さえつけられる」

「さすがはサトウなのです!」

「すさまじいのだ……」

「あなたの力………おかしい。」

「街に入るぞ」


 ナタの服を元に戻して、街に入った。

 淡々と歩く。

 賑やかな露店街を通りがかった。

 魚や肉に、果物や武器屋が並んでいる。


「サ、サトウ……」

「あの串焼き肉か?」

「自分のお金で買いますゆえ!」

「よかろう」

「ありがとうなのです!!!」


 ブレイドは、肉を四本買ってきた。


「サトウや、おみなさまの分なのです!」

「気が利くではないか」

「気持ちはありがたいのだが、私は肉を食えぬのだ」

「同じく。」


 オレはありがたくいただくが、ユニコとナタは断った。


「ざんねんなのです……」


 ブレイドは、露骨に肩を落とす。


「みなさまが食べないのであれば、わたしが三本食べても……?!」


 しかしすぐさま立ち直った。

 オレと二本ずつわけるのではなく、自分が三本と言う。

 このブレイド、地味に食い意地が張っている。


「おいしいなのですぅ~~~~~~」


 しかし満面の笑みで食べているのはかわいい。

 そんなブレイドを見ていると、ナタが奇妙な動きを見せた。

 夢遊病患者のようにフラフラとした足取りで、武器屋のほうへ吸い寄せられる。


「いらっしゃい、お嬢ちゃん。

 メリケンサックはもちろんのこと、小手やヒザ当て、鎖カタビラも全部ミスリルのミスリル屋台だよ!」

 

 オレも屋台に寄って見る。


「剣や盾は少ないのだな」

「獣人族は、拳や双短剣で戦う者が多いのだ。私はハルバードを使用してるが、例外と思ってくれなのだ」

「なるほど」

「しかしミスリル製品にしては、価格が少々安い気がするのだ……」

「そこはもう、サービスでさぁ!」

「ふーむ……」


 ユニコは武器屋を怪しんだ。

 ナタがメリケンサックを手に取ると――。


(ぱくり。)


 食べた。


「いったい何をやっているのです?!」


 ブレイドが、慌ててナタの首を絞めた。


「落ち着け、ブレイド。ナタが死ぬ」

「もももも、申し訳ないのです!」


 やれやれ。

 心配するブレイド。しかし当のナタはというと……。 

 顔が青ざめていた。

 そのままパタリと倒れてしまう。


「メリケンサックなんて食べるからなのです……!」

「ブレイド殿が、首を絞めたのが原因にも思うのだ……」

「………。」


 ナタは武器屋の武器を指差す。


「ミスリルじゃない………。

 安………物。」

「通りで安いと思ったのだ」


 ユニコは懐から、金色のメダルを出した。

 ライオンがデザインされている。


「じゅじゅじゅじゅ、獣王メダル?!」

「メダルを示した私への偽りは、王に対する偽りなのだ」

「ひいいっ……!」

「では改めて問うのだ。

 この店の製品に使われている金属は――――ミスリルなのだ?」

「半分以上が、メッキをしているだけのクズ鉄でさぁ……!」


 店主はへなりと崩れ落ち、深々と土下座した。


「正直に吐いた点は褒めるのだ。

 騎士を派遣しておくがゆえ、沙汰を待つのだ。

 正直の分、減刑はしてやるのだ」


「ははぁー!」

「おすごいなのです! ユニコはとっても、おすごいなのです!」

「ま、まぁ、この国の中でも、八指に入る程度には」

「おすごいなのです……!」


 ブレイドは、キラキラと目を輝かせた。


「ブ、ブレイド殿は、容易く人を褒めるクセがあるのだ。

 それはとても素敵だが、恥ずかしいのでよくないと思うのののの、だ」


 ユニコは照れているようだった。しかし満更でもない様子ではある。

 そして――。


「大丈夫か? ナタ」

「きびしい。」

「よい金属で治るか?」

「うん。」

「ふむ」


 オレは『宝物庫』から、ゴールドミスリルを取りだした。


「食してみろ」


 ナタの口に入れさせる。


(ぱくん。)

(かりかりかり。)

(こくん。)

「どうだ?」


 ナタはゆっくりと起きあがる。


「治った。」

「そうか」

「おかわりもほしい。」

「おかわりか……」


 これは懐柔に使えるかもしれない。

 オレは二個目を取りだした。


「これがほしいのだな?」

「とても。」

「ならば余の配下となれ」

「わかった。」

「あっさりだな」

「思うところがある。」

「そうか……」

「あとは………。」

「あとは?」


 ナタはブレイドやユニコを見て言った。


「楽しそう。」

「それはその通りだな」


 オレは、フッ――と笑って見せた。

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