魔王でニューゲーム!

~リアルで死んだらゲームのステータスを持って異世界に行けました~
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15話 エビのお寿司(かわいい)と、拳の勇者(エロい)

公開日時: 2020年9月1日(火) 14:10
更新日時: 2020年9月24日(木) 13:15
文字数:2,952

 そこにいたのはエビのお寿司だ。

 小さなコッペパンに紛れた形で、エビのお寿司が入ってる。


「寿司か」


 生きているのは珍しい。

 寿司はコッペパンに比べると、鮮度が命で死にやすい。


「こいつをもらおう」

「いいのかい?」

「構わん」

「明日死んでいても、文句は言わんでくれよ?」


 エビ寿司に手を伸ばす。


「すしぃ……?」


 エビ寿司はちょこちょこと、オレの手元に寄ってきた。

 そして――。


 がぶっ!

 

 噛みついてきた。


「サトウ殿?!」


「大丈夫だ」


 オレは慌てるユニコを制し、エビ寿司にやさしく声をかけた。


「怖くない。怖くないぞ?」


「…………」


 エビ寿司は、オレから口を離した。


「すし……」


 エビ寿司が舌を出し、オレの指先を舐めた。


「怯えていただけなのであろう?」


「スシッ!」


 寿司はオレの手のひらに乗った。ちょろりと動き、肩のところまで移動してくる。


「これはどういう光景なのです……?」

「なぞ。」


 しかしこういう世界なのだ。

 この世界では、寿司が普通に生きている。

 わかるね?


 エビは酢を飲ませると元気になった。


「エビーん!」


 ぴょんと飛び跳ねてこてこ動き、オレの手のひらに乗ってくる。


「こうして見ると、ハムスターのようだな」

「それはないと思うのです……」

「サ、サトウ殿の感性は、なかなかに独特なようであるのだな……」

「ゆにーく。」


  ◆


 エビを肩に乗せて歩いていると、不意に声をかけられた。

 かわいらしいハチマキに、スポーティな胴着。そしてスパッツをはいた少女だ。


「初めまして! ボクは拳の勇者ナックル!」


 快活に笑った少女は、ピンク色の笑みを浮かべて――。


「脱衣チャレンジはどうかなぁ……?」

「脱衣チャレンジ……?!」


 R18モードに限定して存在しているという噂の……?!


「簡単な柵の中で、ボクとおにーさんがふたり切り。

 五分以内に、ボクのハチマキを奪えたらおにーさんの勝ち。

 ボクがスパッツの下にはいているパンツかぁ、胴着の下に着ている肌着。

 好きなほうを好きにしていいよ?

 もしも三連勝したら……」


 拳の勇者ナックルは、下唇に手を当てた。色っぽいしなを作る。


「ボクのことも…………好きにしていいよ?」

「ワンチャレンジで金貨一枚であったな」


 オレは金貨を、『三枚』渡した。


「いきなり三枚? ありがとー。えへへぇー」


 拳の勇者ナックルは、金貨をしまった。


「おおおお、お待ちくださいなのです!

 このようないかがわしいたわむれを、おやりになるのです?!」

「相手が勇者である以上、乗るしかあるまい」


「でしたら!

 わたしが!!」

 

 ブレイドはやる気だ。


「ハチマチを取ろうとして胸や太ももに触れちゃうような、ドスケベハプニングがあるかもなのです!!!

 そんなのサトウに、させたくはないのです!

 わたしはヤキモチ焼きなのです!」


「ボクは全然構わないけどなぁー」

「わたしが構うのですぅー!」


 (><)に叫んだブレイドは、柵の中に入っていった。


「まぁどっちでもいいけどー」


 ナックルも柵に入った。

 柵の横にあった台へと向かい、砂時計をひっくり返す。


「時計の砂が全部落ちたら終了。おっけー?」

「はいっ!」


 ブレイドは剣を構えた。


「ちょえええええええええええええええええええええっ?!?!?!」

「どうしたなのです?」


「それはボクのセリフだよ! どうして剣を構えてるの?!

 ハチマキじゃなくて首が取れるよ?!」


「言われてみるとそうなのです……」

「言われなくても気がついてぇ!!!」

「わかったなのです!」


 ブレイドは、剣をしまった。


「それと剣はダメだけどぉ、パンチやキックは普通にアリだよ?」

「アリなのです……?」

「ボクはしないけどね」


 拳の勇者ナックルは、両手を広げてにへらと笑う。


「自信があるのはわかったのです!

 ですがあなたが攻撃をしないなら、わたしのほうもしないのです!」

「おっけー♪

 じゃあ……いつでもどうぞ?」


 拳の勇者、ナックルは構えた。

 そして――。


 ブレイドは六連敗した。


   ◆


「かはっ、はっ、はあっ……」


 六連敗のブレイドは、とても疲れていた。

 地面に手をつけたorzの姿勢で、絶え絶えな息を吐いている。


「まいどありっ♪」

「ふえぇん……」

「そこまでだな、ブレイド。貴様では、百度やってもナックルには勝てん」


 ナックルは、百騎衆の中堅キャラだ。

 最下位のブレイドでは難しい。


「見ていなかったのです?!

 わたしはここまでのチャレンジで、五回はハチマキに触れていたのです!

 あと一歩が遠いだけなのです!」


「その『あと一歩』とは、ナックルが見せた幻影だ。

 余裕をもって勝てるところで『あと一歩』を演出し、チャレンジをさせているにすぎん」

「気づいちゃったかー、あははー」

「それに気づけない貴様が、ナックルに勝てる道理はない」


「サトウは、そんなに下着がほしいのです?! ドスケベハプニングをしたいのです?!

 でしたらわたしに言ってなのですぅ!

 わたしは相手がサトウなら、下着の準備もあるのですぅ!」

 

 ブレイドは、スカートの中に手を突っ込んだ。

 パンツをおろす仕草をしている。


「安堵せよ。

 偉大なる余は、ハプニングを起こす間もなく勝利する」

「ボクとしては面白くないなぁ……それ」


 ナックルの目が険しくなった。


「格闘術には、自信を持っているようだな」

「いちおー拳の勇者だし?」

「しかし偉大なる余は、偉大なる存在である。

 この世のすべての勇者より、単純に優れている」

「……始めさせてもらうよ?」

「よかろう」


 オレは肩のエビをブレイドに預けた。

 ナックルは、砂時計をひっくり返す。


「それじゃあ、どう――」

「取ったぞ」

「えっ……」


 ナックルはオレの右手のハチマキを見つめると、自身の頭に手をやった。


「えっ……?!」

「余の一勝だな」


 オレは金貨とハチマキを渡す。


「っ……」


 ナックルはスパッツを脱いだ。胴着の下に手を入れて、パンツも脱いだ。

 大事なところは胴着のヒラヒラとした部分で絶妙に隠れ、見えそうで見えない。

 ナックルは、自身のパンツを砂時計の横においた。


「つ……次は油断しないからね」

「そうしろ」


 二戦目だ。

 ナックルはファイティングポーズを取った。ケモノのような眼光でオレを見つめる。

 が――。


「取ったぞ」

「ええぇ?!?!?!」


 オレはハチマキを返し、金貨を渡す。


「次に勝てば、偉大なる余は貴様を好きにできるのであったな」

「そうだけど……まままま、魔法はダメだよ?! 禁止だよ?!」

「今までの二戦は、魔法のせいだと思っているのか?」

「そうじゃない……けど、体術で負けるなら仕方ないかなー……って」

「攻撃はしないという話であったが――。

 解約しても構わんぞ?」

「シャクだけど、そうさせてもらおうかな……」


 ナックルの瞳が、金色に輝いた。

 闘気がたぎっているのだろう。髪がわずかに浮いている。


「このモードのボクは、筋力も視力も、今までの五倍になるからね……?」

「それでは貴様に、敬意を表し――」


 オレは素早く前にでた。

 ナックルの動体視力で見える程度のスピードで近づく。

 だがしかし、体のほうが追いつかない。

 腕をピクリと動かすが、それが限界。

 オレにハチマキを取られ、勝負にも負けてしまう。


「取ったぞ?」

「ほんとーに、ふつーに取ってただけなんだねぇ……」

「そういうことだな」


「だけどまぁ、負けちゃったものは仕方ないなぁ。

 ほんとにスルのは初めてだけど、おにーさんはカッコいいし……。

 そこの路地裏でいい?」


 なん……だと?!

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