真の姿を現したウェルダンに対し、パレットはレッグホルスターからを取り出して牽制した。
乃呑やマナも、金色の秘宝を取り出して臨戦態勢に入った。
「そう身構えるな。今回は味方だ……」
乃呑とパレットにそう告げたウェルダンは、今度はアザトスの方を見て言った。
「アザトス。俺たちの中で一番賢いお前が、なぜカマトトぶっている」
「兄だって勝手なことばかりくせに……」
「レベルの低い妹に合わせるな。お前一人なら、こんなヘマはしなかった筈だ」
アザトスは、自分の側にマナを抱き寄せた。
(あいつとアザトスが……?)
パレットは拳銃を構えながら思考を巡らせていた。
(そういえばさっき、マナちゃんがウェルダンのことを「お兄ちゃん」と呼んでいた。ってことはあいつも……)
「解放、デビル・スコーピオン!」
マナは金色の秘宝を開けた。中から現れたのは、黒い、フラットロック・スコーピオンの秘宝獣だ。
【Aランク秘宝獣―デビル・スコーピオン―】
「やっちゃえ! 《闇討ち》!」
「解放、ハーブ! 《バブルリング》!」
ピンクイルカの秘宝獣は、ウェルダンに襲いかかったサソリの秘宝獣を、泡の中に閉じ込めた。
「ムムム……乃呑、邪魔しないで!」
「私の役目は市民を守ることだからね」
「良い働きだ、狩人。さて、ここからが本題だ……」
ウェルダンは、アザトスの方に向き直ると、金色の秘宝を突き出して言った。
「お前で最後だ、アザトス……」
「くっ……」
ウェルダンがアザトスを追い詰めた瞬間、奥の扉がゆっくりと開いた。
「お待たせしましたー♡ 様ー♡」
「遅かったな、なごみ」
「はい♡ 葉っぱをかけてきました♡」
「葉っぱではなく、発破だ」
なごみは頭の上に葉っぱを置いて、喜々として答えたが、ウェルダンは呆れたように言った。
「目的は果たした。帰るぞ、なごみ」
「はい、主様ー♡」
「……待ちなさいよ! バカ」
アザトスが叫ぶと、ウェルダンの足がピタリと止まった。
「まだ終わってないわ……。私があなたを倒して、それでゲームエンドよ」
「主様に向かって、なんて態度ですかー!」
「なごみ、お前は手を出すな」
「はーい……」
ウェルダンはなごみを制して、アザトスの前に立った。
「アザトス、お前に用はない。手加減なしでいかせてもらうぞ……」
「……臨むところよ」
ウェルダンは金色の宝箱をポケットにしまうと、新たに緋色の秘宝を取り出した。
「開宝、T−REX!」
緋色の宝箱から現れたのは、歴史上、世界最大の肉食恐竜、ティラノサウルスの秘宝獣だ。体表は黒く焦げ付いており、光熱のガスが口の中から煙をあげている。
【Sランク秘宝獣―T−REX―】
「本当はここで使う予定じゃなかったけど、相手がSランク秘宝獣ならしょうがないよね……」
アザトスは腹を括って、スカートの中から黄色の秘宝を取り出し、開けた。
「開宝、クロちゃん!」
激しいきと共に、黒い体表の獅子の秘宝獣が姿を現した。名前の由来はおそらく、閃光を意味するsparking+百獣の王を意味するking of beastからであろう。
【Sランク秘宝獣―スパークキング・オブ・ビーストー】
「あ、あれはボクチンのSランク秘宝獣!?」
(やっぱり、ピエロからSランクの秘宝を奪った犯人は、アザトスだったのね)
パレットは淡々と事件を片付け、二人の秘宝バトルに意識を向けた。
「T−REXの開宝時効果、相手の炎属性耐性を永続で下げ、炎属性の極大ダメージを与える。《クリムゾン・フレア》!」
防御不可の火焔弾が、獅子の秘宝獣に直撃した。獅子の秘宝獣は、大きく態勢を崩した。
「クロちゃん……!? これが、Sランク秘宝獣だけが持つ、開宝時効果……!!」
あまりの威力に、アザトスは思わず息を呑んだ。
「それならこっちも! クロちゃんの開宝時効果!」
Sランクの秘宝から黒雲が立ち昇った。二匹の秘宝獣の上空で、ゴロゴロと激しい音を立てている。
「な、何も起こらない……?」
「自分の秘宝獣なら、能力くらい把握しておけ。T−REX、《ウェルダン》だ」
ティラノサウルスの秘宝獣は、口から炎を吐き出した。獅子の秘宝獣は熱さから逃れようと振り払う。
「《クリムゾン・フレア》は、だ。その身焼け尽きるまで、鎮火することはない」
ウェルダンが言い終えると、獅子の秘宝獣に向かって黒雲からが落ちた。
「クロちゃん……!!」
「……終わりだな」
態勢を崩していた獅子の秘宝獣は、雷を浴びると全身をバチバチとらせ、立ち上がった。
役職説明:【賢い人狼】
賢い人狼。襲撃した人の役職を知ることができる。基本的には他の人狼と同じ行動をとるが、人狼陣営に貴重な情報をもたらすことができるため、重要なポジション。特に占い師と狂人が占い師として出てきている場合に、襲撃した人物が、占い師なのか狂人なのかを知ることができるのは戦局を大きく左右する。
(人狼サイドの【名探偵】です)
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