「これで残るは八人ですね……」
「もしこれが人狼ゲームと関連があるなら、最後に誰が人狼なのか明らかになるのよね」
パレットが犯人について考えていると、突如部屋が真っ暗になった。
「停電!?」
「うわぁぁぁぁっ!?」
「悲鳴!?」
パカパカと蛍光灯が点滅し、部屋に明るさが戻った。
パレットは即座に、悲鳴をあげた人物の元へと駆け寄った。
「紅葉、大丈夫……!? 何があったの?」
「暗闇の中、カマキリのような秘宝獣に襲われそうになったのですが、ピンクイルカの秘宝獣が守ってくれたおかげで、なんとか無事でした……」
「良くやったね、ハーブ!」
「Quuu♪」
ピンクイルカの秘宝獣を秘宝に戻すと、乃呑はパレットにVサインを見せた。
「乃呑ちゃんグッジョブ!」
「ぐぬぬ……。あと少しで厄介な新聞配達を排除できたのに……」
「…………」
部屋の隅っこでマナが何やら悔しそうにしていたが、パレットはあえて触れないようにした。
「他のみんなは怪我はない?」
「……………………ヤラレタ」
「やられた……?」
乃呑が周囲に声をかけると、ウェルダンが被害を申告した。
「…………ヒホウ、ウバワレタ」
ウェルダンは鎧の中から、一枚のカードを取り出した。『怪盗キャット参上』と書かれたカードだ。
「ここは密室のはず……。ということは、この中の誰かが怪盗ってこと?」
「人狼ゲームの役職的にも間違いなさそうですね。そうなると、盗まれたウェルダンさんは市民、白で確定ですよ」
「情報を整理してくれる紅葉は市民目線だし、新聞配達で間違いなさそうね」
この時点で推測される役職は、狩人→乃呑、名探偵→パレット、ウェルダン→市民、紅葉→新聞配達。
残る役職は、豚男、霊能者、怪盗、人狼、賢い人狼だ。
「じゃあ後は、まだ役職が確定してない人たちの中から犯人捜ししよっか」
「ちょっと待った!」
話を進めようとする乃呑に、マナが待ったをかけた。
「マナちゃん、実は名探偵なのだよ……!」
「えっと……一応聞くけど、どういうこと?」
呆れ顔のパレットに、マナは自信満々にパイプを吹いて続けた。
「マナちゃんの完璧な推理を見せてあげよう。そもそも犯人は何故、ピエロを襲撃したのか。その目的とは……」
「秘宝大会の選手データと、Sランクの秘宝でしょ?」
「答えは犯人のみぞ知る。こうして事件は、迷宮入りとなった……」
「犯人の真の目的……。そうだ! あたし、気づいちゃったかも!」
名探偵ごっこを始めたマナを無視して、パレットたちは話を進めた。
「パレットさん、何に気づいたんですか?」
「犯人は一人ではなく、複数犯の可能性もあるということよ!」
殿堂の間に入るには、パスコードが必要だ。しかし、駅の改札のように、一人しか入れないという制約はない。
「それなら選手データとSランクの秘宝という、用途の違うものが同時に盗まれているのもおかしくないわ」
「複数犯の説ですか。この中でペアになりそうな組み合わせは……」
姉妹だと言っていたアザトスとマナ。それに水族館で偶然会ったと言っていた、ヴァルカンと乃呑だ。
「犯人はスタンガンを使ったんですよねぇ? アザトスぅ、そんな酷いことしないですよー☆」
「そうだそうだ、マナちゃんが保証する!」
「某は偶然会っただけだ。立ち入った話はしていない」
「そうそう。私はピンクイルカのハーブに、水族館の仲間を見せに来ただけだよ」
どうやら犯人は、なかなか尻尾を出してはくれないようだ。
役職説明:【狩人】
静かに人々を守る、凄腕の狩人。
毎夜、一人を人狼の襲撃から守ることができるが、自分を守ることはできない。基本的には、できるだけ生存し続け、重要な人物を守ることが使命である。正体がさらされると真っ先に人狼の襲撃候補となってしまうため注意が必要。ただし、寡黙になりすぎるのも危険だ。
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