謁見の間。
秘密基地の殿堂の間の奥にあるその場所で、英雄は祝福を受けようとしていた。
「あなたが、この世界の神様ですか?」
「ああ。俺の名はアダムだ」
かつて世界を七日で制圧し、人々から神と呼ばれたその男は、玉座に鎮座していた。
「お会いできて光栄です」
「そうかしこまるな。呼んだのは俺の方だ」
アダムは玉座から立ち上がると、真ん中に赤い絨毯の敷かれた階段を降りきった。神と呼ばれる彼だが、人と対等な場所にまで降りてきたのだ。
「……九十九なごみ。秘宝大会での活躍は見せて貰った。優勝者であるお前に、これを託したい」
「ありがとうございます」
アダムは水晶のネックレスを、彼女の首にかけた。すると彼女は、水晶を力強く握り、その場で粉々に砕いたのだった。
「な、何をするだぁーーー!」
「ふふ、これであなたのSランク秘宝獣、The Melt Doragonを制御できるものは、無くなりました♡」
さっきまで片膝をついていた九十九なごみは、埃をって立ち上がると、明るい口調で言った。
「神様♡ いいえ、アダム・グレイマンと呼ぶべきでしょうか? あなたは以前にも、水晶のネックレスを託した相手がいましたね」
アダムはまだ記憶に新しい、『黙示録事件』の事が頭によぎった。
「そこらでスカウトした人物に水晶のネックレスを渡した。ですが、彼らはその力を使いこなせないまま、敗れてしまった」
「どうしてその事を知っている……」
「そこで貴方は考えました。世界で最も強い秘宝遣いになら、を払う水晶のネックレスを託すことができると」
九十九なごみは全てを見透かしたように、アダムの思考を読み解いていく。
「ですが、それは失敗でした。なぜならそれは、秘宝大会一位の私が、善人であることが大前提に成り立つ条件ですから♡」
「お前、一体何者だ。何の為にこんな事を……」
「教えてあげましょうか♡」
九十九なごみは、狐耳の可愛らしい顔を、ずいっと近づけながら言った。
「二十年後の世界から、貴方を殺しにきました……♡」
「んな………………!?」
アダムは呼吸をするのも忘れるほど、衝撃を受けた。未来から来たというのも驚きだが、見ず知らずの少女に、いきなり殺意を向けられたのだ。
「とは言っても、今はその時ではありません。ですが近いうちに。よーく首を洗って、待っていて下さいね♡」
「なっ……おい……!」
アダムは言いたいことも言えず、笑顔で部屋から去っていく九十九なごみを、引き止めることができなかった……。
人物説明:【アダム・グレーマン】
この世界の神。厳密には人類最初の男。
秘宝を開発し、第3次世界大戦をたった7日で鎮圧した張本人。本人自身も【時の停止】、【時の加速】といったチートじみた能力を持っているが、黙示録事件を機に【時の逆行】だけは使わなくなった。
(そのため今は、裏切りや不意打ちに滅法弱い)
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