ヨハネと獣の探偵談!?

〜驚愕のベストエイト〜
上崎 司
上崎 司

驚愕のベストエイト

公開日時: 2020年9月18日(金) 12:06
文字数:2,816

驚くべきことに、雷が直撃したことで獅子の秘宝獣の傷が癒えた。


「回復した……!?」


「これがスパークキング・オブ・ビーストの開宝時効果、《招黒雷》♪」


全員が困惑するなか、ピエロだけが笑っていた。


「互いの番の終わりに、ランダムな対象に雷属性の特大ダメージを与える♪ スパークキング・オブ・ビーストに当たった場合、そのダメージ分、回復することができる♪」


「随分とトリッキーな開宝時効果ね。チャンスよ、アザトス!」


「うん! 反撃開始だよ、クロちゃん☆」


「返り討ちだ、T−REX」


アイドルとしての調子が戻ってきたアザトスは、明るい声色で指示を出した。


獅子の秘宝獣は、ティラノサウルスの秘宝獣に噛み付いた。


「《☆☆》」


「可愛い名前つけた!?」


今度はティラノサウルスの秘宝獣に雷が落ちた。身体が痺れて、反撃に移れないようだ。


「いっくよー☆ 《スパーキング》!」


獅子の秘宝獣の口から放たれた閃光弾が、ティラノサウルスの秘宝獣に直撃した。さらに、黒雲から雷が相手に降り注いだ。


(勝てる……!)


アザトスがそう思った矢先、に気がついた。


(違う! 攻撃できないんじゃなくて、しなかったんだ!)


「クロちゃん、相手から離れて!」


「遅い。T−REX、《ベリーウェルダン》」


退くより先に、業火が獅子の秘宝獣の体を呑み込んだ。燃やし尽くされ、灰となった体から、白い球体だけが黄色の秘宝の中へと戻って行った。


ウェルダンはティラノサウルスの秘宝獣を緋色の秘宝に戻させると、入口の扉を開けた。


「……行くぞ、なごみ」


「待ってくださいよー、主様ー♡」


取り残されたベストエイトの面々は、嵐が去ってか静まり返っていた。


しばらくの静寂の後、ピエロがアザトスに声をかけた。


「……聞かせてもらうよ。どうして秘宝獣を盗んだりしたの♪」


「…………だって」


アザトスは言葉を詰まらせ、泣きそうな声で続けた。


「…………お兄ちゃんは、この世界の神を殺すつもりなの! だから、それを阻止するために、が必要だったの……」


「どんな理由があっても、人の物を盗むのは、してはいけない事だよ♪」


「…………ごめん、なさい」


俯いたまま、涙を流すアザトスの肩に、ピエロはそっと手を乗せた。


「キミの事情は理解したよ♪ 今度はこっちの事情を話してもいいかな♪」


ピエロはそう言うとパソコンを起動させ、プロジェクターを使い、トーナメント表を映しだした。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「これは、第一回秘宝大会の……?」


「そう♪ ベストエイトの皆は、自分の対戦の戦績を覚えているかな♪」


ピエロはそう言って、一人一人の戦績について解説を始めた。


「まずは秘宝大会一位、九十九なごみ。彼女は一回戦でウェルダン、二回戦でヴァルカン、三回戦で彩華を倒して、戦績は3勝0敗。文句なしの優勝だよ♪」


ピエロは続けて、彩華に対話するように言った。


「秘宝大会二位、水鳥彩華。一回戦で紅葉、二回戦でアザトスを倒して、三回戦でなごみに敗れる。戦績は2勝1敗。惜しかったね♪」


「次の秘宝大会では、誰にも負けませんわ」


ピエロは続けて、ヴァルカンに対話するように言った。


「秘宝大会3位、ブラウ・ヴァルカン。一回戦で乃呑を倒す。二回戦で彩華に敗れるも、三回戦でアザトスを倒す。戦績は2勝1敗。上手く巻き返したね♪」


「否、某もまだ修行が足りていない」


ピエロは続けて、アザトスに対話するように言った。


「秘宝大会4位、アザトス・スカーレッド。一回戦で宇利亜を倒すも、二回戦でなごみ、三回戦でヴァルカンに敗れる。戦績は1勝2敗。4位なのに意外だよね♪」


「むぅ、何が言いたいんですか……?」


ムスッと機嫌を悪くするアザトス。


「まあ話は最後まで聞いてよね♪」


ピエロは次に、トーナメントの下位についての解説を始めた。


「秘宝大会8位、金剛 宇利亜。一回戦でアザトスに敗れる。二回戦で紅葉、三回戦で乃呑にも敗れる。戦績は0勝3敗。ドンマイ♪」


「ほっとけ!!」


宇利亜は怒りながら答えた。


ピエロは続けて、乃呑に対話するように言った。


「秘宝大会7位、菜の花 乃呑。一回戦でヴァルカンに敗れる。二回戦でウェルダンにも敗れるが、三回戦で宇利亜を倒す。戦績は2勝1敗。ツイてる♪」


「大会ともなると、みんな手強いよねー」


ピエロは続けて、紅葉に対話するように言った。


「秘宝大会6位、紅葉 幹大。一回戦で彩華に敗れる。二回戦で宇利亜を倒すが、三回戦でウェルダンに敗れる。戦績は1勝2敗。こっちも惜しい♪」


「はい。もっとも、乃呑さんとは対戦していないので、どちらが上かはわかりませんね」


「そして秘宝大会5位、ウェルダン……」


ピエロが言いかけると、アザトスが口を挟んだ。


「それは偽名。彼の本名は、クトゥグア・スカーレッド」


「じゃあ改めて♪ 秘宝大会5位。クトゥグア・スカーレッド。一回戦でなごみに敗れるが、二回戦で乃呑、三回戦で紅葉を倒す。戦績は2勝1敗。おやおや♪」


「それだけじゃないわ。彼は今日、2位の彩華、3位のヴァルカン、4位のアザトス、8位の宇利亜も倒しているわ」


パレットが、険しい表情をして言った。


「そうか、ピエロさんの言いたい事が理解できました。事態は僕たちが思っている以上に深刻な状況だった、ということですね」


「そういうこと♪」


ピエロが紅葉の問いに答えると、重たい空気が辺りを包み込んだ。


「そんなやつ、一体どうやって倒せばいいんだよ!?」


宇利亜が狼狽えながら叫んだが、答えられる人物などいなかった。なぜならここにいる全員が、一度敗れているからだ。


「……そう思っていない人物が、約一名いるようだが」


ヴァルカンの呟きに、全員が視線を集めた。


「……そうだろ、パレット」


「ええ。今から戦いたくてウズウズするわ!」


紅葉はハッと気づいて、早口で言った。


「そうか! 第一回秘宝大会に出ていないパレットさんの強さは未知数……。もしかしたら、もしかするかも知れません!」


「それだけではない。パレットは秘宝大会の出場枠を、某を倒すことで物にしている」


「つまり、3位以上の腕前と見て宜しいのですわね?」


彩華に問われると、パレットは頷いて答えた。


「少し希望が見えてきましたね、団長」


「紅葉、彼女に頼ることなく、自分で倒す方法も考えなくてはいけませんわよ」


「前向きに検討してみます!」


(やっぱりは、のなのかも☆)


重たい空気が晴れたところで、アザトスはピエロにさっきの話の続きを始めた。


「ピエロさんごめんなさい。Sランクの秘宝獣、返します」


「そのことなんだけど♪ その秘宝獣はキミが持っていた方がいいよ♪」


「えっ……!?」


「この世界のために役立てられるなら、スパークキング・オブ・ビーストもきっとそれを望んでいると思うよ♪ さっきの戦い、良かったしね♪」


「うぅ……ピエロさぁーん……」


アザトスはウルウルとした瞳で、有り難くSランクの秘宝獣を受け取ることにした。


「これからよろしくね☆ クロちゃん☆」


こうしてアザトスの手持ちに、新しい仲間が加わったのであった。


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