幼なじみギャル(偽)と異世界転移したら金髪ショタ(謎)に保護されました

定春
定春

探しもの

公開日時: 2021年3月5日(金) 22:16
文字数:2,403

「ひ、ひぃぃぃ!た、たたたすけてくれぇ!い、いのちだけは……!」

 部屋へやすみまれた青髭あおひげの男は、一瞬いっしゅん仲間達なかまたちころした子供こども必死ひっし命乞いのちごいをする。

 その身体からだ外傷がいしょう見当みあたらないものの、仲間なかまびたせいかかおふくあかめられていた。

「この盗賊団とうぞくだん人数にんずうおしえてほしいんだけど……もちろんってるよね?」

 らしをゆるさないかのようなゆっくりとしたいに、青髭あおひげくびれそうないきおいであたま上下じょうげさせる。

「お、おれほかは八人だけだ……!た、たのたすけてくれ!お、俺ははいってもないしたで……ひ、ひところしたこともぇんだって!」

 カガリは男の悲鳴ひめいのような命乞いのちごいにまゆひとうごかさず、右手みぎて人差ひとさゆびけた。

全部ぜんぶで九人?本当ほんとう?」

 ゆびを男のかおけ、カガリがしずかにいただす。

「ほ、本当ほんとうだ!も、元々もともとちいさな傭兵団ようへいだんだったとかで、お、俺もはたらぐちくてもりのうと彷徨さまよってたときつかってよ!へ、兵長へいちょうに"いのちてるくらいなら、ウチで雑用ざつようさせてやる!"ってれてこられた……んだ……」

 自分じぶん自分じぶんみじめにおもえてきたのか、徐々じょじょ青髭あおひげ表情ひょうじょうちからくしていく。

 その姿すがたにカガリはすこしだけ同情どうじょうする。

(うそをついてるようにはえないけど、とりあえずやるだけやるか)

 人差ひとさゆびかまえた。

「"さらし、せ……自白じはく聖法イズナ、ベラド"!」

「ひ、ひぃっ!」

 カガリの人差ひとさゆびに、にぶむらさきいろひかりまとわりつく。

「そうえば、キミは何処どこくにからたんだい?」

「え、えっ?」

 ころされるとおもっていた青髭あおひげは、突然とつぜん質問しつもん戸惑とまどう。

「このもり盗賊とうぞくになるまえ何処どこにいたの?」

 カガリがもう一度いちどく。

「お、俺はロンダバオのまれで温泉宿おんせんやど下男げなんをやってて……し、仕事しごとおぼえも要領ようりょうわるくて……お、女将おかみさんやほか女中じょちゅうたち毎日まいにち馬鹿ばかにされててよ……そ、それであの、し、仕事しごとわりにさけんでたら俺をきら女中じょちゅう嫌味いやみをクドクドわれてつい……」

「……つい?」

 男の言葉ことばにカガリはまゆをひそめる。

「お、おもいっきりかおぱたいちまったんだ!」

 きじゃくる男。

「ま、マズいとおもったときにはもうおそくてよ……!じ、女中じょちゅう大声おおごえさわしたもんだから、お、俺はそのままはしってして……」

 かたとして項垂うなだれる男。

「い、行くあてもなくてはらって……も、もうんじまおうってもりに入ったんだ!」

 それだけはなして、青髭あおひげ沈黙ちんもくしてしまった。

「なるほど。そんなことがあったんだね」

 自白じはく内容ないよう想像そうぞうしていたものとちがったことにカガリは安心あんしんし、自白の聖法ベラドいた。

「もしキミがボクの条件じょうけんめるなら……キミを見逃みのがしてもい」

 その言葉ことば青髭あおひげおどろいた表情ひょうじょうせる。

「ほ、本当ほんとうか!?」

勿論もちろん条件じょうけんむなら……だけどね」

 カガリの言葉ことばに、男はふたたあたま上下じょうげる。

「わ、わかった!な、なんでもするっ!」

「いい返事へんじをもらえて良かった。キミたちぬすんだものいている場所ばしょはどこ?」

「そ、倉庫そうこならこっちにある!つ、いててくれ!」

 男はふるえるひざおさえながら、ゆっくりとあるす。

 あしおそさに若干じゃっかん苛立いらだちをかんじつつも、カガリは無言むごんいてった。



「こ、こっちだ……す、すこくらいからけてくれ」

 青髭あおひげ案内あんないあるつづけ、カガリはほか部屋へやより一際ひときわおおきな部屋へやはいった。

「へ、兵長へいちょう部屋へやだが、か、かえっててないいまうちに……」

 兵長が二度にどかえってないことつたえるべきかなやんだが、カガリは黙秘もくひすることにした。

「ぬ、ぬすんだものはいつもこの部屋へやからだけはいれるかく部屋べや仕舞しまってるんだ」

 青髭あおひげはしゃがみみ、つくえしたれてなにかをさがす。

「あ、あった!」

 カチッ

 ゴゴゴゴとかたいものがこすおとがして青髭あおひげがる。

「こ、これでいわうごくようになるから……」

 部屋へやかべからせりしていたいわ青髭あおひげすと、いわ抵抗ていこうなくよこすべおくつうじるみちあらわれた。

「こんな仕掛しかけをわざわざつくるなんて……。よっぽど用心深ようじんぶかひとだったんだね」

 もうこのに居ない男をしのぶようにカガリはつぶやく。

かりがいけど、いつもくらなままではこんでたの?」

「ち、ちょっとっててくれ……た、松明たいまつをつけるからよ」

 男は火打ひういしして壁掛かべかけの松明たいまつけていしらした。

 二回、三回とらすと松明たいまつともって周囲しゅういらされる。

 松明たいまつかりにらしされた宝石ほうせき金貨きんか銀貨ぎんか見回みまわしたあと、カガリは盗品とうひんちかづき物色ぶっしょくはじめた。

 はこけ、かぶせてあったぬのよこにどけて箪笥たんすしもけていく。

 全体ぜんたい半分はんぶんほどを物色ぶっしょくしたかというころ、カガリのうごきがまった。

「……あった!」

 さがものつかったのか、カガリはにした赤い何か・・・・ふところ仕舞しまう。

ぬすんだのがキミたちうんかった。善意ぜんい第三者だいさんしゃひろっていたらはなしがややこしくなるところだったし……」

 ジッとうごかずにっていた青髭あおひげる。

「これでボクの目的もくてき達成たっせいできた。キミはこれからどうするんだい?」

 青髭あおひげすこつらそうな表情ひょうじょうをしたが、カガリのいにこえしぼすようにしてこたえた。

「お、俺は……ま、まわりにながされつづけてこんなとこまでちまった……だ、だけどこれからは、こ、こころえてやりなおそうとおもってる……!」

 つらそうな表情ひょうじょうわらないが、そのこえにはすこ決意けついらしき力強ちからづよさがはじめていた。

「ふぅん……。キミがそううなら、ここはしんじて見逃みのがすことにするね」

 青髭あおひげたいしたわるさをできる男ではないとかんがえるカガリは、無感動むかんどう表情ひょうじょう出口でぐちへとかう。

「キミたちうばった鬼馬ゴーダはボクがっていくけど……もしほかくにきたいなら一緒いっしょせてかまわないよ?」

 あるいてくにわたるのもひと苦労くろうだろうと、カガリは青髭あおひげ提案ていあんした。

「い、いやいい……あ、あんたはさっきの子供こどと二人と合流ごうりゅうするんだろ?だ、だったら俺と一緒いっしょじゃないほういだろうし……」

「だろうし?」

「い、いますこし|一人になりてぇ」

 そうはなす男はどことなく何かれたような表情ひょうじょうだ。

「ふうん?もし、またったときはキミが真面目まじてはたらいていること期待きたいするよ」

 男をにしてカガリはかくあとにした。

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