狼少年

俺がBLゲームの世界に迷い込んだってマジ!?
疎影環
疎影環

第四話:フォー!!!???

公開日時: 2025年3月18日(火) 04:31
文字数:3,267

レンガ造りの住宅が続く道を真っ直ぐに進み、3つ目の曲がり角を右に進むと花のアーチが目に付いた。学園前商店街の入り口である。


肉屋や八百屋、スーパーやドラッグストア、ホームセンターや雑貨屋、衣料品やアクセサリーの店なども充実しており、ゲームセンターやペットショップ、様々な専門店や飲食店なども並んでいたりするので、生活には不自由しない場所だ。

沢山並んだ店の前を通り過ぎ、アーケードを抜けた先には大きめの稲荷神社、そしてキャティーリア学園前駅がある。


ちなみに少しだけ郊外に足を延ばせば映画館、カラオケ、ボウリング、スポーツジム、フィットネスジムなどが入った大型の複合施設があったり、美術館と博物館が同じ敷地内に存在していたり、コンサートホールがあったり、テーマパークや水族館などもあったりする。


「知ってたけどめっちゃ色んな店あるな……」


ゲーム内でも全ての店に入ることができ、全ての店で背景や客層も全部違うと言う……どの施設に行っても背景とかお客さんのデザインとか使い回し無いのマジで狂ってるよな……あ、これ誉め言葉です。


「つかめっちゃ腹減った……特に時間制限とかは無いだろうし何か食べて行くか……?」


そんな事を考えて食べ物に目星を付けていると、一つの店が目に留まる。

と、言うのも沢山の人がショーケースの前に集まっていたからだ。


ハッ!此処ってもしかして……?


「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!肉屋の遠山名物コロッケ、桜一番揚げ立てだよ!」


「桜ちゃん、桜一番5個でお願いするわ!」

「兄ちゃん、こっちは桜一番10個だ!」

「こっちは3個で!少なくてごめんねぇ……でもここのコロッケ、旦那が大好きなのよぉ!!」


やっぱり!!オカン属性男子である遠山桜お兄さんのお肉屋さん!

香ばしい匂いが鼻孔を擽り、気が付けば尻尾を振ってしまっていた。


「おー、お前も欲しいのか?ちょっと待ってな」


そんな俺の姿を見つけたのか桜お兄さんから声が掛かる。

邪魔にならぬように店と店の間の路地に寝転んでジッとお兄さんの手元を見ているとまるで手品かの様に次々と無くなっていくコロッケ。

数分程度で店頭に並んでいたコロッケは全て消え失せ、代わりに小さな立て看板が置かれたようだ。


"桜一番コロッケ、昼の販売分は終了しました、夕方と夜の販売分は予約もして頂けますので、お気軽に店員までお声掛け下さい"


ほぼ一瞬で無くなったな……そこまで美味いって事なんだろうけど……俺も食べたい。

そんな事を思いつつ視線を上へと向ければ桜お兄さんと目が合った。人の良い笑みを浮かべたお兄さんは片手に紙の袋を持っている。


「お待ちどうさん、熱いから火傷すんなよー?OBである俺が後輩を火傷させたって噂になると困るからな」


俺がベスである事に気づいていたらしいお兄さんは少し考える仕草をした後に紙袋を持っていない方の手を頭へ伸ばして来る。

これは撫でて貰えるフラグ!?いやでも一番はケイト先輩に撫でて欲し……いや待てよ?……俺がケイト先輩を撫でる予定だから俺は撫でられても良いのでは……?????そんな事を頭で考えて動かずに大人しくしていると頭に優しく手が触れた。毛流れに沿って何度か撫でて貰った後に手が止まる。

その手にグイグイと頭を押し付け、もっと撫でて欲しいと催促すれば楽しそうな声が耳に届く。


「ふはっ、まだ足りないってか?可愛いなぁお前」


えー?こんなに撫でるの上手いなんて反則では?きもちー……ハッ!ダメダメ……思わず野生を忘れちまう所だった……

グイーッと体全体を伸ばしてストレッチをすると目の前には紙袋が差し出される。


「ん、そんじゃぁこれな。旨かったらまた買いに来てくれよ、後輩の銀狼くん」


紙袋を口で受け取り軽く頷く。そのままその場を離れて最初の目的地であった学校へと走って向かえば、ものの数秒で校門前へと辿り着いた。


本当にあの校舎が存在してるー!!!!!!校門からでも見える時計塔とか教会の十字架とかも本当に存在……している……!!

感動で思わず口を開いてしまい、咥えていた紙袋を石畳の上に落してしまいそうになったが横から出て来た何かに紙袋がポスンと乗った。


「っと、危ない。……サクラ先輩のコロッケ、台無しにしなくて良かったねぇ」


この声は……!!!??


「いやマジで本当に……ありがとうございます」


「いいえ、丁度通りかかっただけだから」


勢い良く頭を下げてお礼を述べた後にドキドキとしながらも顔を上げる。

目の前には片手にコロッケ入りの紙袋を持ち少し小柄に見える男子生徒が立っていた。

その姿は予想していた通りでやはり……!!と思わずガッツポーズをしそうになったが、急にそんなことをすると変な奴と思われかねないので気合で耐える。


名前は狼谷かみや エル。年齢は16歳の高校二年生だ。

太陽の光を受けてキラキラと輝くホワイティゴールドの髪を長めのツーブロックマッシュにし、イエローゴールドのタレ目は柔らかい印象を与える。俺の最推しである狼谷ケイトの弟である彼は白いシンプルなYシャツに鴇色で遠吠えしている狼の全身シルエットが胸元に入ったロングカーディガンを合わせており、下はシンプルな黒いパンツと黒い革靴のようだ。


良いですね、良いですね。彼にお似合いのファッションじゃないですか。

……にしても鴇色が似合うとかやばない?これで高校二年生でしょ?

高校生でピンク系統の色が似合うの良いなぁ……あざとい。だがそれが良い。



「本当にありがとうございます、お礼に何か……えぇと……すみません、お名前とか、聞いても良いですか……?」


いや、もちろん知ってるんだけど、でもエルくんからしたら初対面だからね。しかもこの容姿よ?

万が一ストーカーに間違われでもしたら絶対に怖がらせる事になるし、もしそんな事がケイト先輩の耳に入ったとしたらどう?

あ、知らない?そっか、そう言えば言ってなかったね、ケイト先輩、一見冷たそうに見えて懐に入れた人には大層温かい方なんですよ。

えぇはい。つまりそう、絶対に警戒されちゃうじゃんね?それは絶対に困る。


「あ、そう言えば名乗って無かったね。僕は狼谷 エル。キャティーリア学園高等部の二年生だよ」


「二年生って事は同級生か!あー……良かったー……!先輩かと思ってめっちゃヒヤヒヤした……」


「同級生って事は君も二年生なんだ?でも初めて見るな……」


「あぁ、俺は今学期からキャティーリア学園高等部の二年生になるんだ。名前は観音坂 柊。観音坂って長いから適当に呼びやすいように呼んで?」


「そうだったんだ!なら気軽にエルって呼んでくれると嬉しいな。僕は……カノンくんって呼ばせて貰おうかな」


「カノン……?」


ノンザカでカノンくん」


「なるほど!ほいじゃ、改めてよろしく頼むな」


「うん、よろしくね。折角出会えたんだから同じクラスになれれば良いんだけどなぁ」


フォー!!!???まさかのあだ名、だと……!?嬉しいけどパニックになるが……?

どういう仕組みなん……?え?ゲーム本編では自分が付けた名前に付随するあだ名とかはなかったよな……?

名前以外の呼び方だと役職とか年齢(会長とか委員長とか先輩とか後輩とか)だった気が……

しかもよ?普通に会話の中であだ名つけてくれましたよね……?もしかして最新のAI技術……?最近のAIさんってやべぇんだな……

心中では何かやべぇ波っぽいのがざわついている気がするが、俺は努めて平静を装い何事も無かったように会話を続ける


「それなー。まだクラス聞いてないからソワソワする」


「そうなんだ?じゃ、一緒のクラスになれるのを祈っておくね」


「ありがと、転校とかって初めてだからちょっと不安だったんだけど、そう言ってくれると心強いかも」


「任せておいて!」


ってえ、待てよ?????……って事は、もしかしてケイト先輩とか他のキャラとかも名前に付随したあだ名を付けたりしてくれる可能性微レ存!!!???え、そんな待遇受けて良いんですか?マジで運営さんありがとうすぎるんだが……?????????

は?え、大丈夫そ?俺の心臓持ちそう?????



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