「新斗! 死なないで! あんたがいないとこの先どうなるのよ!」
「新斗くん! 新斗くんっ!」
……声が聞こえる。
聞き馴染みのある声だ。
意外と可愛い声してるんだよなぁ……。
バチンッ!
「いとぅあっ!」
「あっ起きました!」
「一葉ちゃんナイス!」
えっ? さっきの一葉ちゃん? めっちゃ痛いんですけど! でも……
「柔らかい……まるでマシュマロのようだ」
「きゃー!」
バチンッ!
「だから痛いって!」
「だって私の胸を……! でも、生きてて良かった」
「かろうじてな」
今は杏沙に膝枕をされている状態のようだ。
手足を動かせないので、頭を動かして感触を確かめることしかできない。
もどかしいぜ……。
「そういえば、タロウは?」
「あんたの横よ」
身体に鈍い痛みを走らせながら横を見てみる。
すると相手の方から声を掛けてきた。
「うらやましいな……膝枕」
「……だろ?」
タロウも俺と同じように指一本動かせないみたいだ。
本来ならしゃべることすらキツイはずなのに、タロウはしゃべり続ける。
「友人ガチャでお前みたいなやつと巡り合えたら……僕は……」
「それはどうだろうな……。俺はボクサーパンツ派、それに対してお前はブリーフ派だ」
「ふっ。そうだったな。……いいか? 最後に真面目な話だ。これだけは覚えておけよ。俺を倒したところで、魔法少女様には絶対に勝てない。あの人は別格だ。いいか、絶対に見た目に惑わされるな。あの人こそが幼い女の子の皮を被った悪魔そのものだ」
「忠告さんきゅ。覚悟しておくよ」
「ふふっ………。……………………………………」
タロウは笑っていた。
そしてそのまま灰になり、天高く舞い散った。
「そうだダピル、俺のスマホを持ってるか?」
「あんた、こんなときになんでスマホなのよ。それに持って来てるわけ————」
「持ってきてるピ」
「なんで⁉」
「時間がきてゲージが溜まったら、すぐにゲームをプレイできるようにしたいらしいピ。でも、ダピルを荷物持ち扱いするのはやめてほしいピ!」
「俺は無類の無課金ユーザーだからな。お金で何も買えない分、時間を切り詰めて頑張るしかないんだよ」
そう言いながら『ウォーター・ウェア―・ストーリー』を起動。
すると、ガチャの途中の画面が出てきた。
そうか、出撃前にガチャを引いたんだっけ。
確かあのガチャ演出的に相当なレアものが手に入るはず。
来てくれ……! マリンちゃんのSSR!
ピカーンッ
ガチャの中身を確認する。
「ははっ!」
思わずその結果に笑ってしまった。
どこの誰だかは分からないが、ある人がこう言った。
『人生はゲームのガチャと同じ』だと。
確かにその通りだ。
生まれてくる場所も巡り合う人も自分にはどうしようもできないことはある。
そう言った意味では、人生はガチャと同じで運ゲーなのかもしれない。
でも、それでいいじゃん。
そこで巡り合ってしまった以上は、それと付き合っていき、自分で変えられるところは、必死に足掻いて少しでも方向が変わるように努力するしかない。
そんなことは分かってるって?
そうだよな。
だけど、言葉にしないと分からないことだってある。
だから俺はあえて言おう。
人生を変えたければ、自分で動くしかない。
ただひたすら前を向いて。
だって……人生にリセマラなんてないんだから。
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