妖魔の美少女とスローライフ!

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スローライフ 第二十四話 同じなんだよ!

公開日時: 2021年10月11日(月) 20:45
更新日時: 2021年10月11日(月) 20:46
文字数:1,002

 おれとリンラは、村までの帰り道を歩いていた。

 すでに夕暮れだった。四交代で草刈りに来ていた、両方の村人全員が温泉に入った後だった。


 入る前に、土器か竹づつに湯を入れて浴び、ざっと体を洗う。それから湯につかる。

 もちろん、おれはリンラとは別々に入ったのだ。がっかりなんて言わないぞ。


「いやあ、いいお湯だったね! アイルーン、本当にありがとう」


「いや、みんなの助けもあったからだよ。本当に良かった」


「うん、となり村の人たちも、アイルーンには感謝してると思うよ」


「こんなにヒスイやサンゴをもらえるなんて思ってなかったな」


「それはいいの! ちゃんとエミットさんも同意してくれたんだからね」


 そう言うリンラの首元には、エミットさんからもらったサンゴの首飾りがある。

 ヒスイのまが玉も、リンラがひもに通して、自分の腕に巻き付けて持っていた。


「ヒスイはアイルーンが持っておく?」


「いや、リンラが持っていてくれよ。これはリンラのおかげでもあるし、おれは、リンラのおかげでここで暮らしていけるんだから信じてるよ」


「うん、ありがとう。アイルーン」


「帰ったら、また石けん作りに挑戦しなきゃな」


「そうそう、アタシたち、海の集落で海草をもらわないとだよね」


「そうだな。うっかりと忘れていたよ。温泉を見つけたのがうれしすぎたよ」


「アタシもうれしかったよ。冬の水浴びには慣れてるけど、アイルーンのお手柄だもんね! それも、となり村の人たちまで認めてくれたからんだからね。アイルーン、すごいことしたんだよ? こういうのも財産なんだよ。ヒスイやサンゴ以上にね」


「そうだな。これからも良い物を見つけていきたい。でもな、この力は、おれが欲を強めすぎると働かなくなるみたいなんだ」


「そうなの?」


「そう。あくまでも、何というか、よくばらない気持ちが必要なんだ。よくばると、上手く探知できなくなる」


「そっか。無欲の勝利ってやつだね。分かるよ。アタシも、よくばると上手く魚を釣れなくなる。もちろん釣りたいから釣るんだけどさ。欲が強すぎるとだめ。分かるよ、その感覚」


「リンラも、なのか」


 おれは意外に思った。おれと同じ感覚が、リンラにも分かるとは思ってなかったな。


「うん。狩りをする時の、研(と)ぎ澄まされた感じも、そんな風だって、前に他の人にも聞いたよ。みんな同じなんだよ、そのあたりは」


「そうなのか」


 他の人にも分かる。分かるんだ。おれと同じ感覚が。


 おれはうれしかった。

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