妖魔の美少女とスローライフ!

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スローライフ 第二十三話 草刈りをするぞ

公開日時: 2021年10月7日(木) 20:00
更新日時: 2021年10月8日(金) 00:03
文字数:1,141

 次の日から、双方の村で総出で、温泉までの道を造るために草刈りした。おれもリンラも草刈(くさか)りに駆(か)り出された。


「うはあ、大変だね、これは」


 リンラの手足は土まみれになっていた。おれも似たようなもんだが。


「リンラ、少し休んでいていいぞ。おれがそっちの分もやる」


「大丈夫だよ。少し休んだらここはアタシが刈るよ」


 リンラの手には、木製のクワがある。これで根本から掘り返して草を取り除いているのだ。


 おれは、愛用の黒曜石ナイフをここでも使っていた。歯こぼれしないか気になるが、意外なほどナイフは丈夫だ。と言うより、草がやわらかいんだろう。


 おれたちは刈り取った草を並べて積み重ねていった。ふわふわとやわらかな草。青っぽい新鮮な香りがあたりにただよう。


「リンラ、この草の上に横になると気持ちいいぞ」


「そうだね。後で干し草にして、編んだ布の下に入れてその上で寝られるようにするよ」


「それはいい考えだな!」


「秋にはいつもそうしてるよ。冬の寝床を作るんだよ。毛皮やケモノの毛を入れた布のふとんでもいいんだけど。干し草のはまた違う良さがあるよ」


「そうか。おれも干し草のがいいな。いい香りがするよ」


「草を取り替えないと香りは消えてしまうけど。干し草、地下の保存部屋に入れておくから、まあひと冬は保(も)つんだよ」


「そうなんだ」

 

 この穏やかないい香りに包まれて眠ったら、きっといい夢を見られそうだ。


「取り替えるのは、ひと冬に一回だけでいいからね」


「それならよかったよ」


 これまでは季節が夏、暑い盛りだ。地下は気温も湿度も安定しているから、ゴザ数枚を敷いた上に、布のシーツみたいなのを敷いて、上には同じように一枚布をタオルケット代わりにしていればよかった。


 ここに来てから、こんな風に自然はムダなくおれたち人間に恵みをくれる。おれたちは、自然に、世界に愛されているんだ。


 そうだ、この世界を作った神は、もしも神がいるならば、人間と自然を創るのに失敗しなかったんだよ。おれはそう思っている。


 おれたちの村ととなり村、協力して三日で草を刈り終わった。草原(くさはら)の中に道ができて、温泉周りもきれいになった。


 とりあえず道は土を踏み固めただけだが、温泉周りには、きれいに土を落とした石を敷(し)きつめて、上がった人が体を汚さずに休めるようにした。

 


 ま、みんなゴザくらいは持ってくるとは思うけど、これは景観のためでもあると聞いた。


「できた! できたよ、アイルーン」


 おれたちは温泉のそばに立っていた。


 道は左右に、両方の村に向かって伸び、温泉周りにはきれいに石が並べられている。おれは石の上に座り込んだ。それぞれの石は丸みがあって大きく、かすかに太陽の熱の温かさが伝わってきた。


 やったあ、やったぞ。


 これで冬を暖かく、楽に過ごせる!

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