ギミックハウス

~第495代目当主~
北きつね
北きつね

第十九話 新しい施設

公開日時: 2023年11月6日(月) 15:12
文字数:3,481


 会談が終わって、セバスが帰ってきた。

 内容は、聞いていたので把握している。しかし、セバスからの報告を聞くのも、俺の役割だろう。


「マスター」


「いいよ。入ってきて」


「はい」


 セバスが入ってくる。

 ミアとヒアも付いてくるのかと思ったけど、どうやらセバスだけのようだ。


 入口で二人に指示を出して、下がらせた。


「マスター。ギルドとの会談を行いました」


「聞いていたから大丈夫。それで、セバスはどうしたらいいと思う?」


「城塞村に本部を作ったギルドは、現状でよいと思います」


「そうだな。問題は、連合国のギルドか?」


「そちらも、現状では問題ではないと分析をしています」


「どういうこと?」


「鹵獲した武器や兵站を調査いたしました。そして、マスターから頂いた資料と突合させた所、技術は産業革命以前程度ではないかと判断しました」


「え?」


「武器の質は、確かに帝国よりも良い物を使っていますが、我らの使う盾を貫けません」


「盾?俺、盾なんて大量に出していないぞ?誰に渡した盾だ?」


「マスターから頂いた書籍に、武器や盾の制作に関する情報があり、カプレカ島で制作を行いました」


「ほぉ・・・。そうか、質の差は歴然というのだな?」


「はい。マスターから頂いた武器では、剣で剣を切り裂けました」


「おかしな表現だが、現象はわかった。それなら、連合国のギルドは無視でよさそうだな」


「はい。しかし、彼らは数だけはいるようです」


「数?」


「はい。まだ、情報としての精査が終わっていませんが、人口だけなら、帝国の3-4倍です。兵数は、傭兵を使う国もありますが、2-3倍程度は存在しています。そして、帝国と違い連合国内での争いは禁じています」


「それは、帝国のように貴族同士の争いがないというのか?」


「建前は・・・。です。争いが発生しても、エルプレ国が調停役として、判断を下します」


「文句が・・・。そうか、ギルドからの資源としてスキルを提供するのか?」


「はい。どうやら、それだけではなく、ダンジョン産の物資も優先的に回しているようです」


「そうか、魔王とギルドと国が連携しているのだな」


「はい。おそらくは、協力関係にあると考えます」


「セバスたちの予想では、”また攻め込んでくる”のだろう?」


「はい。ギルドから提供された情報からも、連合国を支配している魔王は、好戦的だと判断しました」


 好戦的?

 穏やかに過ごせるのなら、それが一番だとおもうのだけど・・・。自分から攻めていく意味がわからない。守って、守り切れないのなら、攻められない方法を考えた方が建設的だと思うのだけど・・・。

 他の魔王・・・。あぁそうか・・・。


 端末を起動する。


「マスター?」


「少しだけ確認したいことがある」


「はい」


 セバスが、立ち上がった。

 俺が飲んでいた紅茶を片づけて、新しい飲み物を用意してくれるようだ。


 端末の中で気になる記述があったのを思い出した。

 モノリスの中に、他の魔王に関する記述があったはずだ。


 やっぱり。記憶違いではなかった。

 連合国のギルドを仕切っている魔王が狙っているのは・・・。


 面倒だな。


「マスター?」


「ギルドの裏にいる魔王の狙いがわかった」


「?」


「魔王は、他の魔王を討伐したら、討伐された魔王が使ったポイントが反映される。すべてでは無い・・・。しかし・・・」


 ポイントを持っている魔王が、他の魔王を狙うリスクは、当然のように存在している。

 そのくらいのことが解らないのか?それとも、自分は連合国とギルドに守られているから、大丈夫だと思っているのか?


 もし、大丈夫だと思っているのだとしても、組織がうまく回っているとは思えない。

 城塞村にできたギルドから得られた情報だけだが、周りの国だけではなく、いろいろな組織から”恨み”を買っている。それだけではなく、周辺国との軋轢も産まれている。


 どこまで、領地を広げているのかわからないけど、現状でもかなりのポイントが得られているのではないのか?

 連合国だけでも、俺が抱えている人数よりも多い。


「ありがとうございます。マスター以外の魔王は敵だと認識しました」


「あぁこちらから手を出す必要はない」


「・・・。はい」


「セバス。言っておくぞ、魔王を討伐しないようにしろ、降伏させるくらいならいいが、殺すのは許さない」


 飼い殺しにできれば、ポイント的にもおいしいかもしれないけど、メリットが少ない・・・。いや、メリットが無いと言ってもいいかもしれない。魔王を奪われたギルドがどうするのか?

 どう考えても、連合国の・・・。あぁエルプレ国は、魔王と互助の関係になっている。

 武器や防具だけではなく、スキルも融通してもらっているのだろう。その提供が”止まる”彼らにとっては致命傷になる。俺も、別に戦乱の世を作り出したいわけではない。できるだけ、平穏に安全に過ごしたいだけだ。


「それは・・・」


「セバス。魔王は、討伐されると、新しい魔王が産まれる」


「はい」


「どういう理屈か解らないが、時代が進む印象がある」


「??」


「セバスたちは、歴史書を読んだな?」


「はい」


「セバスの報告で考えると、連合国を支配している魔王の時代は、俺がいた時代基準で考えると、1000年くらい前になる」


 セバスも考えているようだが、1000年も1100年も大きくは違わない。おおよそで考えれば十分だ。

 1000年の違いは大きい。主に、技術の分野では大きな違いがある。


「魔王が討伐されると、時代が進む」


「確実なのですか?」


「わからない。しかし、先代たちの情報から、ほぼ間違いではないと考えている」


「わかりました。皆と共有してよろしいですか?」


「四天王と、各種族のトップまでは許そう。今後、魔王との戦争になる時に、開示するようにしろ」


「かしこまりました」


 手で、話が終わったと合図をすると、セバスが少しだけ寂しそうな表情をしてから、頭を下げて部屋を出ていく。

 甘い顔をすると、いつまでも部屋に残ろうとする。それだけではなく、風呂の世話だけではなく、トイレの世話までしようとする。心を鬼に、部屋から追い出す。別に、世話をしたければさせてやるが、セバスの意図が解らないから困惑している。

 こんな子供に抱かれたいのか?今度、聞いてみるか?いや、俺の勘違いだと、恥ずかしい。セバスの尊厳を無視したセクハラ発言になってしまう。


 さて、愚かな考えは頭から追い出そう。

 連合国とギルドの関係は解った。やつらの裏の狙いはなんとなく想像できた。表の狙いは、捕えた者たちから聞きだしている最中だ。拷問に関する情報が役立つとは思わなかった。


 地図を見ると、最終防衛ラインにした場所も領域に組み込めるようになっている。最終防衛を行った草原が俺の領域に指定できる。

 ポイントも残っているから、領域にしてしまおう。領域を広げるだけでは、防衛の役には立たない。


 どうしようかな?

 何か、俺が考えなくても済むような物で、楽しそうなこととかないかな?

 魔王城の1階とか見ていても楽しくない。


 そうだ!


 今の壁の前に内側の壁よりも高い壁を設置する。

 壁には、門を作る。門の前に、4つの屋敷を作成する。


 うん。面白い。

 4つの屋敷は、四天王に任せよう。


 門には、それぞれの屋敷を攻略するとロックが外れる。4つの屋敷を攻略できたら、門が開かれる。


 門の先には、さらに壁があるから、別にこちらとしては困らない。屋敷を破壊したら、壁とは反対側に爆風が発生するようにしよう。ヒントは、城塞村のギルドから、自然な形でギルドに流れるようにすればいいだろう。


 屋敷と繋がる仕組みは、罠で実現できそうだ。

 スイッチ式にしよう。屋敷の中に隠されたスイッチを押すことで、門が開かれる。


 屋敷の一つは、大量の罠が張り巡らされている。

 屋敷の一つは、魔物が徘徊する。

 屋敷の一つは、魔物と罠で構成される。

 屋敷の一つは、作る者に任せよう。


 セバスを呼んで指示を出す。


 セバスからは、四天王ではなく、四天王に使える者たちに対応させたいと言われて許可をだした。

 使えるポイントを制限して、知恵を巡らせるように変更する。


 魔物を使うのも、罠を使うのも、自由にした。


 新しいアトラクションのようで楽しい。

 致死性の罠も許可を出す。アイテムや素材を落とさない魔物だけにする。屋敷を攻略したら、今の時代としては逸品の武器か防具が手に入るようにした。そのくらいのご褒美は必要だろう。


 あと、セバスから言われて修正したのが、攻略してから48時間しかスイッチが有効にならない。有効になっている最中は、その屋敷には、新規にアタックができないようにした。


 やはり、一人で考えるよりも、誰かと考えた方が、考えの粗が見つかっていい物ができる。


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