虹色

三國 魅歩
三國 魅歩

第1章【白なんてつまらない】

公開日時: 2021年2月28日(日) 01:46
文字数:2,352

【レインボー】

核戦争が起こり、人口一気に減ったことで世界が一つに統一され、人々は決められたエリア内に集められ、決められた生活を規則に従って決められた寿命まで送ることになった。そのエリアの名前こそが『レインボー』だ。


【規則】

  1. 毎日決められた食事を決められた時間にとること
  2. 毎日指定している白い服を着て過ごすこと
  3. 16歳以上の者は毎日王から与えられるミッションをして過ごすこと
  4. 夜9時以降は外出してはならない
  5. レインボーの外に出てはならない
  6. 王の命令は絶対
  7. 名前や寿命は産まれた時に王が決める
  8. 家や家具、家電などの必需品は配給している物を使うこと
  9. 家族は王が分ける
  10. 6~15歳まで学校へ通うこと
  11. 感情や自我を持ってはならない


これは現代よりも遥か先の世界の話。


世界には国という境界は無くなり、一つに統一され、人々は、『レインボー』と呼ばれる決められた枠の中で生活していた。



アナウンサー「今日一日の献立を発表します。朝は、食パンのトースト一枚、リンゴ一つ、ホットミルクです。リンゴは切っても切らずに食べても良く、ミルクは配給されているマグカップ二杯まで良いとのことです。続いて、今日のお昼は....」

イレーネ「........。」



私の名前はイレーネ。

レインボーの中で生きている18歳だ。


私は昨日、ミアという不思議な思想を持っている少女と出会った。








昨日、私には『読書をせよ』とミッションが与えられたので、近くにある図書館に行った。


外は雨が降っていて、私にとって、このミッションは割りとちょうど良かった。




イレーネ「確か、本の種類の指定はなかったはずだから........あった。」


私は、ある長編恋愛小説を手に取った。


この世界には小説家がいない。

だから、この小説を書いた人はだいぶん昔の人のはずだ。


だけど、妙に私の心を動かしてくる。


私はその感覚がどこか心地よくて、指定のない読書のミッションの時にはいつもこの小説のシリーズを読んでいるのだ。



私は、館内の椅子に腰掛けた。

そして、本を開く。



主人公の女の子が好きな男の子に泣きながら告白しているシーンからスタートしていた。


私、貴方のことを考えるとドキドキして、何も考えられなくなって、胸が苦しくなるの。なんでそうなるのか....分かってたかもしれないけど、今まで認められなかった。でも、あの子が貴方に告白しているのを見た時、私貴方を獲られたくない!って強く思ってやっと認められた。自分は本気で貴方を愛しているってことを。.......だから!あの子じゃなくて私を選んで!!これからの未来を私と過ごして!!........私と、付き合って!!!




イレーネ「....おぉー....中々勇気あるな....」



おそらく、次のページに相手の返事が書いている。

ほんと、自分のことのように緊張する。

でも、この緊張感がまたたまらない。


私がページをめくろうとしたその時。


?「なーに読んでるの?」


突然、何者かに本を取り上げられた。

私は咄嗟に後ろを振り返った。


そこには、同い年ぐらいの黒髪美少女が本を見て立っていた。


少女「恋愛小説かー。どれどれ、あー!これ、前に私も読んだことあるやつだ!しかも最終巻!確か、結構面白い終わり方だったよねー。えーーと.....何だっけかなー...」

イレーネ「....あの、本、返してもらえませんか?」

少女「あっ、ごめんごめん。はい。」


少女は私に本を返した。

私はすぐにまた読もうと元の体制に戻り、本を見た。



少女「ねぇねぇ!私の名前は、ミアって言うんだけど、君の名前は?」

イレーネ「イレーネです。」

ミア「イレーネはさ、よくこういう物語の本読むの?」

イレーネ「指定が無い時は。」

ミア「そっかー!!なんか嬉しい!」

イレーネ「........。」

ミア「だって、この世界の住人って、皆揃って難しい本ばっかり読むんだもん。ほんと、嫌になっちゃうぐらい。」

イレーネ「....それが普通なんじゃないですか。小説なんか読んだって、何の実にもなりませんし。」



小説はいわゆる感情ってものを表している読み物だ。

この世界には感情なんていらないとされているのだから、読まないなんて当然だ。


私とミアさんが異質な存在ってだけだ。




ミア「うーん。私は小説も他の本と同じぐらい大切なことを教えてくれる、必要なものだと思うけどなー。」

イレーネ「えっ?」

ミア「だってさ、小説って、いろいろな人や生き物の人生を描いて、あらゆることを教えてくれるじゃん?嬉しいとか、悲しいとか、辛いとか。それに、人として大切な精神とかも結構示してくれる。」

イレーネ「........それなもの、要りませんよ。」

ミア「なんで?」

イレーネ「レインボーの中では『感情』を持ってはいけない、そう教えられてきたから。」

ミア「....正直、私はこの世界の常識は間違ってると思う。」



私は思いもしない言動に驚いて、ミアさんの方を向き、見つめてしまった。


ミア「だって、おかしいよ....。好きな食べ物を食べれない。好きな服も着れない。おまけに寿命まで決められてるなんて.......そんなのって絶対狂ってる。」



ミアさんは、追い詰めたような暗い表情をしていた。


まるで、この人には感情があるように思えた。




私はしばらく、彼女を無言で見つめた。

すると、それに気がついたのか、ミアさんは一気に最初の時の明るい笑顔に戻った。



ミア「なんか、変なこと言ってごめんね!.......あっ!イレーネ!見てみて!!外、晴れてるよ!」

イレーネ「ほんとだ。」

ミア「虹も出てる!!....ねぇ、イレーネ。貴女は虹、好き?」

イレーネ「えっ?......好きも嫌いもないですよ。」

ミア「私は好きだよ。虹には、赤とか青とか黄色とかいろんな色があって、面白いじゃん!.....あのね、虹色にはいろいろな意味があるらしいんだけど、その中に『夢』とか『希望』っていうのがあったんだ。イレーネは、何か夢ってある?」

イレーネ「分からない....。」

ミア「私はね、いつか、この世界をこの小説が書かれた時代の時みたいに色鮮やかにしたい!」

イレーネ「....それって」

ミア「これって結構危険的思想だと思うから、ここだけの秘密だよ?」



ミアさんは唇に人差し指をあて、いたずらっぽく笑った。


私もそれにつられて、少し笑みを浮かべた.......かもしれない。




私は昨日のことをずっと忘れられないでいた。



私は、決められた朝食を前にあることが頭を過った。



この世界はおかしいのかもしれない。




淹れたてのホットミルクは白い湯気をあげていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


今まで、夢小説はたくさん書いてきましたが、自分で考えた小説を書くのは初めてで、上手く書ける自信がないのですが、少しでも面白いものを投稿できるように頑張りますので、よろしくお願いします(*-ω人)



では、次の投稿がいつになるか分かりませんが、次話も読んでもらえたら嬉しいです。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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