《石、投げてるの?》
《アホか。こんだけ離れてるんだぞ、サイズが違う》
勇治さんに言われて気がついた。そうだ、離れてるんだ。それじゃあれって……
《多分、湖に岩を投げ込んでいるんですね。でなければ、あれ程の水柱が上がることもないでしょう》
《岩って! そんなの投げられる人いるんですか!?》
近づいていってわかった。人じゃない!
《オーガだ》
鬼のような巨人が三体もいる。何であんなことしてるのよ。
それに湖に水竜っていうのがいるって言ってたよね。岩なんか投げ込まれたら水の中は大変なことになるんじゃ?
《オーガに知性はない。あれは基本的には本能のまま食って寝る程度だが、稀に攻撃性を刺激されるとああいう行動を取る》
眞生さんが淡々と説明するけど、それかえって怖いよ。
《そんな》
《とにかく湖から引き離す。そのまま追い払えればいいが、こちらにも攻撃してくるようなら撃退する》
蓮の言葉に皆が頷く。
《つかさ、お前は上空待機》
《えぇぇ!》
《ええ、じゃない。上から見ていて状況に変化があったら教えてくれ》
《……わかった》
《じゃあ、行くぞ!》
皆は降下してオーガの周りを牽制するように飛ぶ。最初は相手にしてなかったオーガ達も、煩そうにドラゴンを追い払い始めた。もう少し。オーガが湖から離れる。
《少し離れたよ》
《よし、このまま山の方まで追い払えたらそれでいい》
《おう! もう少しだな》
煩く飛び回るドラゴンを追いながらオーガ達はドスドスと移動を始める。
《追い払うだけで何とかなりそうだね》
《そうだが油断するなよ》
《飛ぶだけなら慣れてきたし、こいつらトロいから俺でも大丈……》
オーガの前を通り過ぎようとした勇治さんの上から太い腕が落ちてくる。
《勇治さん! 危ない!》
《うわっ!》
既の所でアルが錐を揉むように回りながら避け、すり抜けていく。
《勇治!》
蓮が叫ぶ。
《悪ぃ、大丈夫だ》
はあっと大きな息を吐く音の後で蓮は言った。
《勇治、お前も上空待機》
《何でだよ! せっかく慣れてきたのに》
《調子に乗んな! 危険だ》
《……すまん》
勇治さんが上空に昇ってくる。
「失敗しちまった」
「怪我しませんでした? 大丈夫ですか」
「ああ」
頷いた後、勇治さんはため息混じりに言った。
「……そうだな、確かに調子に乗ってた。こいつが上手く飛んでくれるもんだから、俺の躁竜が上手いんだと勘違いしちまったわ」
ああ、それはあたしもだ。
「調子乗ってたのはあたしもです。ここまで来れたのも皆のお陰だし、魔物を退治したのだってあたしじゃないのに。あたしも戦えるだなんて思ってしまって」
《反省したんならいいよ》
《蓮!?》
《こっちは何とかなりそうだ。悪いけど二人で降りられそうな場所探しといてくれ》
《わかった》
《了解》
インカム繋げたまんまなのを忘れてた。
うん、調子乗っちゃいけない。気をつけなきゃ。あたしはあたしのできることからやっていこう。きっとそれがあたしの戦うってことだ。
とりあえずは、皆の降りやすい場所を探すこと。あたしと勇治さんはゆっくりと旋回しながら降下して行った。
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