Dragon Rider

〜ツーリング時々異世界〜
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騎竜隊

公開日時: 2020年9月15日(火) 06:27
文字数:2,215

「なんだよ、こいつら」

「わからない。なんで急に襲ってくるんだ」


 勇治さんと蓮は倒した魔物を見下ろしながら言った。

 その間にも戦闘が終わるまで隠れていたという人達がちらほらと戻ってくる。無事な人が多くて本当によかった。


「蓮様!」

「ラウール、大丈夫か」

「はい、ご迷惑をおかけしました。今、村に残っているトゥロさんと話しましたが、あちらはまたゴブリンの襲撃があったと」

「無事なのか!?」

「はい、前回の襲撃から柵も補強しましたし見廻りも欠かしませんでしたから、先手を打って撃退したそうです」 

「そうか」


 ほっとする蓮の様子を見てあたしも胸を撫で下ろす。


「そうなると他にもありそうだな。どうする」

「近くの町や村の様子を見ながらこのまま北に向かう」


 勇治さんの問いかけに、即答する蓮と頷くあたし達。 


「ってなると、やっぱこれ騎竜に変えるのか」

「そうですね。術式を覚えていただければ眞生様にもお願いできるかと」


 ラウールさんと眞生さんは打ち合わせ中。なんちゃら変換がどうとか聞こえるけどさっぱりわからない。そして勇治さんはそわそわと落ち着かない。


「勇治さんなんか落ち着かないですね」

「そりゃそうだろ。ドラゴン乗るなんて初めてだからな」

「騎竜ってあんまり一般的じゃないんですか」

「どうかな。ここは普通にあるんだろうけど、俺んとこはドラゴン自体魔王側の戦力だったから。ちょっと不思議な感じはするなあ」

「へえ、色々違うんだあ……」


 眞生さんがラウールさんに魔法を教わっている図。うーん、とても珍しいものを見てる感じが否めない。

 ラウールさんが手を翳して魔法陣を展開する。

 頷いて眞生さんがおなじようにしてるけど……威力がすごく違わない? 慌てて魔力を絞ってたけど、広がる魔法陣の大きさと光の強さが……眞生さん、力の調整にまだ苦労してるのかな。それでも最後の魔法陣を重ねる。


「騎竜、五頭もいたら壮観だなあ」

「そうだな」

「……でっかいドラゴンだねえ」


 思わず呟いてしまった。

 白っぽい少し小型のドラゴンはリンドヴルム。小回りが効いて偵察に便利そうなこの子はラウールさんが乗る。

 黒い艶のある金色の目のドラゴンがニーズヘッグ。

 そしてあたしの赤いドラゴン、ボルドール。

 その隣のドラゴンは艶めいた濃紺の中に翆に縁取られた鱗が輝く。


「勇治さん、この子綺麗ですね。なんて呼べばいいんですか」

「好きに呼んでいいって言ってたけど……色々言ったら、アルでいいって本人、ってか本竜が言ってた」

「アルかあ、よろしくね」


 最後の一頭は一回り大きい。闇のように真っ黒な体にオレンジ色の目が輝く。


「デューク、こんな風になるんですね」


 あたしが言うと眞生さんはため息をついて頭を振った。


「やはり、こういう細かい作業は難しいものだな。未熟だ。もう少し力の入れ具合を見極めねばならぬ」

「いえ、元が大きいのですからこれで大丈夫ですよ。最初はちょっと驚きましたけど」

「そうか、ならば良い」


 ラウールさんの評価はいいみたい。ほっとしたように眞生さんは表情を緩めた。


「今、村で騎竜用の鞍を用意していますからもう少しお待ちを」


 そういえば蓮は鞍なしで乗ってたなあ。慣れればそんなこともできるのか。ボルドールも鞍がなかったら体が楽そう。なんて考えてたら、赤い竜がチラチラとこっちを見ている。何か話があるのかな?


『ご主人、鞍なしで乗ろうなどとしてはいけない』

「ええと、そんなことを考えてはいません」

『安全に乗らないのなら乗せない』

「わかった! ごめん、ちゃんと安全にベルトもかけて乗るから。約束します」


 ううう、考えてるのが丸わかりな上にドラゴンに諭されるとか。勇治さんが隣でニヤニヤ笑ってる。


「お互い初心者同士、安全第一で乗ろうなあ」


 ぐうの音も出ない。 


「皆さん、届きましたよ」

「あ、ほらほら! 届いたみたいですよ」

「おう! ドラゴンに怒られないようにちゃんと装備つけようぜ」


 一言多いよ! 

 あたしも今度は付け方を教えてもらった。胸元で交差するように帯で鞍を固定する。こう……かな。村の人に見てもらって大丈夫だと太鼓判を押してもらった。ふっふっふ、どうよ。あたしも一つできることが増えたわ!

 後は乗った時に落ちないように腰の辺りを固定するようにベルトをかけるだけ。


「なあ、これ不安定すぎね?」

「そんなことないです。あたしもこれで乗ったけど、思った以上に安定してましたよ」

「そ、そうなんだ」

「大丈夫です、一回飛べば慣れますって」


 多分って続けようとしたけど、ものすごく不安そうな勇治さんの顔を見てそれを飲み込む。


「もしかして高いとこ駄目なんですか」

「多分大丈夫……なんじゃないかな。なんか地に足がついてないってのが……初めてだからな」

「アルは勇治さんを落としたりしませんから信じて乗ってみてください」


 あたしがそう言うと、勇治さんは信じるの苦手なんだよとボソッと呟いた。


「まあ、そうだな。よしっ、何事も経験だ!」


 勇治さん?

 不自然に明るく返事をくれる勇治さんに戸惑う間もなく、出発の合図がくる。


「おーい、そろそろ出発するぞ。インカム繋いどけよ」

「はい!」


 蓮の声にあたしは手を上げて答えたけど、本当に勇治さん大丈夫なのかな。


「行け、ニーズヘッグ!」


 黒竜が艶めいた翼を広げる。続いて小柄な白竜と大きな闇竜が羽ばたいた。


「行きましょう、勇治さん」

「ああ……行こう。飛べ!」


 青いドラゴンは任せておけというように頷くと空へ飛び出した。


「ボルドール、あたし達も行こう!」

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