Dragon Rider

〜ツーリング時々異世界〜
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Open sesame

公開日時: 2020年9月27日(日) 12:05
文字数:1,343

 ラウールの迫力に負けて延々と愚痴を聞かされるはめになってしまった。


「それでですね、座標のほうは何とかなると思うんですよ。でも、もう一つのが難しいんです」

「はあ」

「何か指標になるものでもあればいいのですけど。これがなかなかピンとくるものがなくて」

「はあ」

「ちゃんと聞いてますか。異世界の勇者様なのですから、少しは私に手がかりを与えてくださってもよいのですよ」

「はあ」


 途端にギロリと睨まれる。

 そんなこと言われても専門外なんだからわかんねえよ。


「そういえば、勇治様と眞生様はどちらからいらっしゃったのでしたか。ご商売の筋からと蓮様からご紹介いただきましたが」

「すまん、詳しい場所は企業秘密でな。この世界のSNSを中継して商売をさせてもらってる。ここは「異世界」とか「勇者」とか、そういうワードに反応しやすいんだ。だからそれをとっかかりに友好的な相手を見つけて相互に商品を融通し合ってる。お前んとこの農作物もあちこちで評判いいんだぜ」

「なるほど。つかさ様とも違う異世界なのですね」


 俺は頷く。


「だから魔法のことは専門外でさっぱりなんだが、もし、一部だけでも見せていいってんなら画像を上げれば誰かが反応してくれるかもしれねえ」

「あ! そういうこともできるんですね。今、解析したものを持ってきます」


 やっと明るい顔になったラウールがいそいそと紙の束を持ってくる。山ほどの紙の中から数枚取り出し目の前に並べていく。


「とりあえず掻い摘んで説明しますね。これが最初に見つけたものです。パッと見複雑すぎてよくわからなかったので、わかる所から取り出し始めました。次に……」


 から始まる長い講義が続く。だから俺は専門外なんだってば。まだ言い足りなかったのか? もうこれハラスメントでいいんじゃねえの?

 俺が撃沈寸前までいった所でラウールはおもむろに二枚の紙を俺の前に差し出した。


「最終的にこれとこれが分離した魔法陣です」


 ん?


「がんばったんですよ。あの複雑なのをここまでにするの大変だったんですから。褒めてくれてもいいんですよ……って無視ですか? ハラスメントですか?」


 んん?

 食い入るように見入る俺に返事をする余裕はない。

 んんんんん?

 これどっかで見たことあるような……どこだっけ……


「勇治様、聞いてますか」


 ガクガクと体を揺さぶられる。うおお……気持ち悪ぃぃ……あ……


「思い出した!」


 俺は荷物をがさごそと漁り出す。確かこれに入れてあったはず。


「あった。これだ」


 ジャージに刻まれた紋章のようなもの。ここじゃ学校のジャージに名前が入るんだろ? それの眞生んとこバージョンだ。


「その魔法陣これに似てるんじゃね?」


 訝しげなラウールにそれを渡す。


「……そうですね。似てるというか……これの要素が全部入ってますね!」

「それ眞生の」

「それでは!」

「もしかして、あいつんとこに繋がる魔法陣なんじゃねえかと思うんだが。ただ、さっきも言ったけど俺は専門外だから」

「わかりました」


 俺はこの期に及んで秘密とか言ってられねえから元の世界の情報をラウールに伝え、やつは嬉嬉として魔法陣と挌闘を始めた。

 上手くいけばつかさちゃんと眞生がこっちに戻れるかもしれない。これは蓮にも伝えといてやろう。

 俺は駐車場で独り言を言っているヤバいお兄さんに会うべく立ち上がった。

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