アラームを消して時間を確認する。
起きなきゃいけないと思うものの、スマホ片手に突っ伏してしまう。さすがに根を詰め過ぎたか。半覚醒の微睡みの中、再びスマホが音を立てた。
SNSの通知が幾つか。ノロノロと画面を見る。これは……つかさか。
《おはよう》
《ちゃんと寝たかな?》
《もう一日がんばろー》
わかってるよ。
《おはよう今起きた》
《お前もがんばれよ》
スタンプが返ってきた。
今日の試験もなんとかなりそうかな。
異世界で勇者だろうがここではただの学生なのだから、講義もあれば試験もある。成績が落ちたなんて言ったら絶対許してくれない魔法使いがいるし、勇者は忙しいなんて言い訳聞いてもくれないし俺もしたくない。
にしても、眠い。シャワーでも浴びてこよう。
少し熱めのシャワーで眠気を振り払う。やっとスッキリした。湯を沸かしてドリッパーをセットしコーヒーを淹れる。
まだなんか連絡来てたな。コーヒーに口をつけながら他の通知をチェックする。
勇者魔王商会のDM。顔合わせしたいって連絡したやつの返事か。
[顔合わせの件、承りました。場所についてお願いがありますので直接伺ってもよろしいでしょうか。]
これ、いつくれたんだろう……三十分前か。今の時間でもいいのかな。あっちの勇者の時間感覚がよくわからない。
[後、一時間程で出かけますが、今でもよければどうぞ。]
メッセージを送って位置情報をonにする。待つほどもなく勇者が現れた。
「よう! 悪ぃな、忙しいのに」
「いえ、それより場所の相談って……何かあったんですか? あ、コーヒーでよければ飲みます?」
「サンキュ」
さっき淹れたばかりのコーヒーをカップに注ぎ、砂糖とミルクを添えてテーブルに置く。
「いやあ、実は魔王がさ、店の人気メニューを当てるっていうのにハマって、ここの……」
勇者はコーヒーにミルクを入れながら、スマホの画面をこちらに向ける。
「ファミリーレストランに行きたいって言うんだわ」
「……ファミレスですか」
「お前らの大学の近くにある?」
「はあ……ちょっと離れてますけど」
「じゃあ、そこで待ち合わせってことで。時間はどうする」
「ええっと。明日なら三時過ぎには多分行けます。明後日は予定があるので、後はその次の日になりますが」
「ん、明日の三時過ぎだな 」
「もしかしたら少し遅れるかもしれないんで三時半でお願いします」
「どうせ魔王があれこれ食うだろうから二時くらいから行っとくわ」
「わかりました。よろしくお願いします」
勇者は残ったコーヒーを飲み干し、ごちそうさんと言いながら手を振って消えた。
勇者魔王商会っていうところは、思った以上にこちらの要求に応えてくれる。
討伐に行くとなった時、もしかしたら討伐メンバーを集めてくれと頼めば揃えて届けてくれるかもなんて思ったこともあった。
さすがにそれはないだろうと思って即却下したんだけど、結局商会にメンバー集めを頼んだみたいなもんだな。何で一緒に行ってくれるのか不思議に思うけど。
勇者と魔王のハマるツボも、よくわからないし……
これは俺には試験の問題よりも難しいかもしれない。
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