「藤次郎くん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな」
「なんですか?」
あたしは小さな青い玉を取り出し彼に見せる。
「もしかして、これと同じようなもの持ってない?」
「……おねーさん何者っすか」
急に彼の声が低くなる。
「どうした、藤次郎」
「藤次郎、俺の後ろに下がれ」
二人とも藤次郎くんを後ろに庇うようにあたしの前に出る。え? ちょっと、なんでそうなるの?
「伊達成美、片倉景太。両名共下がれ。儂が話そう」
「「……はぃっ!」」
二人は藤次郎くんの後ろに回るけど、それでもあからさまに警戒してるのがわかる。それに藤次郎くんの雰囲気が変わった?
「つかさ、俺が話す。ごめんな、嫌な役させちまった」
「ううん、いいの。大丈夫だよ」
蓮はあたしの前に庇うように立ちはだかると藤次郎くんを見据えた。
「すまない。市川蓮と言う。彼女の方が警戒されないかと思って話しかけるよう頼んだ」
「伊達藤次郎政宗だ」
ああ、やっぱり藤次郎くんに憑いてたのか。そしてあの子達二人はそれを知ってるんだな。だから藤次郎くんを守ろうとしてるんだ。
蓮は居ずまいを正す。そして、もう一度独眼竜と対した。
「政宗殿、雑な話し方ですがお許しください。俺は異世界で勇者をやってます。俺達は異世界で水竜王から和御魂を預かり、貴方が持つ荒御魂の存在も伺いました。あの世界の魔王を調伏するためには貴方の持つ荒御魂が必要なのです。俺達に荒御魂を預けてくれませんか。お願いします」
対する政宗様は鷹揚に答える。
「お主らのことは龍神から聞いていた。この者共は荒御魂を守ろうとしてくれたのだ。 何せ伊達の宝物などと言って掠め取りに来る輩が後を立たなかったでのう」
「そちらの方々には感謝しかありません。こうして無事に持ち主と宝に会えたのですから」
「はっはっは。言いよるのう。持っていけ」
「ありがとうございます!」
藤次郎くんは蓮に小さな袋を手渡す。中には紅に燃える玉があった。
「わあ、綺麗だねえ」
「そうだな」
「藤次郎くん、ありがとう」
「いえ、大事に使ってください。伊達の宝物も俺にとっては爺さんの形見って意識のほうが強いんで」
「伊達藤次郎、貴様あれと共存しておるのか」
不意に眞生さんが口を開く。
「ああ、あんま違和感ないですね。ちゃんと認識するようになったのは最近ですけどわりと平気です。同じ名前をつけられたのもそうだけど性格も似てるなって政宗は言ってましたよ」
「貴様は勇者だな」
眞生さんは心の底から感心したように言った。
「そっかな……ありがとうございます。ま、政宗と付き合うのも含めて人生楽しまなきゃ面白くないですからね。いつもそういう気持ちでいようと思ってます」
後ろの二人もうんうんと頷く。
「それでこそ我らの筆頭だからね」
「いつか俺達がカフェ開いたら皆で来てくださいね」
彼らの経営するカフェか。さっきの味も接客態度もよかったし、ありかも。
「うん、楽しみにしてる」
「おおお! 将来の経営者か。名刺渡しとくわ。よろしくな」
勇治さん。彼らに名刺渡してるのはいいけど、どういう肩書きなんだろ。動画投稿者? まさか異世界勇者とかじゃないよね。怪しげなものを見るようにしてたらニヤッと笑ってはぐらかされた。
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