遅いなあ……
残っていた試験とレポートをクリアし、一足先に夏休みになったあたしは、最後の試験を終わらせたはずの蓮を待っていた。
旅に同行するメンバーの顔合わせをするんだそうだ。
あたしは先方の指定と言ってたファミリーレストランで飲み物を啜っていた。
頬杖をついて周りを見る。夏休みに突入しているせいか待ち合わせに使う人も多いみたい。意外と混んでる。
それにしても女子高生は元気だな。少し離れた所から楽しそうな明るい声が聞こえてくる。これからカラオケかあ。ほんのちょっと前には、あたしもあの立ち位置にいたはずなんだけどな。なんだか眩しい。
ふぅ。ドリンクばかりだったし、ちょっとお手洗い行っとこうっと。
立ち上がって手洗いに向かうと女の子達が賑やかな理由がわかった。
日焼けと無縁そうな白い肌、長い黒髪、切れ長の目元。少し酷薄そうな薄い唇が取っつき難そう。
もう一人は茶髪で目の大きな悪ガキタイプ。顔立ちはいいけど、見かけよりも修羅場をくぐっていそうな雰囲気の目の力を感じる。
うん、こんなイケメンが二人も近くの席にいたら、そりゃ賑やかにもなるね。
それにしても不思議な組み合わせだなあ、なんて思いながら席に戻ると、やっと見慣れたバイクが駐車場に入ってくるのが見えた。バイクを停めてヘルメットを脱ぐ。あ、やっぱり当たり。
蓮は店の中のあたしを見つけてごめんと片手で拝んだ。あたしは睨む振りをして手を振り返す。
入口のドアがカランとベルを鳴らした。蓮はいらっしゃいませと声をかける店員に待ち合わせだからと断りを入れて店内を見渡す。あれ? なんでこっち来ないの?
「すみません、お待たせしました」
離れたところから蓮の声が聞こえる。その席って……
「待ち合わせの人来たんですね」
「そちらの人も一緒にカラオケ行きませんかあ」
立ち上がろうとした二人に、すかさず女の子達が声をかけている。
「悪いね、さっきも言ったけど俺ら大事な用があるから行けないんだよ」
さすがだ女子高生、絡みにくそうなあの二人に一度は声かけてたんだ。そのバイタリティは見習わなきゃいけないかも。一緒には行けないと言われても、尚も食い下がろうとした彼女達に黒髪の人は魔王のような台詞を浴びせた。
「行かぬと言っておろう。用があるのは貴様らではない」
ひょえええ……も、もうちょっと優しめに言ってあげてもいいんじゃ……
周りのお客さん達も顔が強ばる。凍った空気の中をごめんねと彼女達に謝りながら蓮はあたしの席に向かってきた。
ってことはやっぱりあの人達がそうなんだ。うわっ、背高っ! 足長っ! 黒髪の人はモデルって言われても納得の体型だわ。目立つことこの上ない。
「おまたせ、遅くなってごめんな」
「ううん、いいの。で、申し訳ないんだけど早目に座ってもらってもいいかな」
あたしは小さくなりながらそう言った。
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