「蓮様! つかさ様! ご無事ですか」
「お前ら、どこ行ってたんだよ!」
「……」
ラウールさんと勇治さんが食いつくような勢いで話しかけてくる。眞生さんはあたし達を上から下まで見た後、うんと頷いてから聖樹に目を向けた。
「急にいなくなるから心配したじゃねえかよ!」
「あの、ごめんなさい。あたしが急に連れ出しちゃったから」
「ああ……いや、すまん。女の子が会いたがってるからって走ってった所までは俺らも見た。すぐその辺にいるんだと思ったしな」
うん、勇治さんの言う通りあたしもそのつもりだったよ。
「でも走り出したと思ったら、目の前で消えちまったんだよ!」
「ここの人達はユグドラシルに呼ばれたのだと言っていましたが、我々にはわかりませんでしたから」
少し心配しましたとラウールさんも言った。
「でも手に入れて来たぞ」
蓮が手にした剣とあたしの持ってる弓を見せる。
「でけえな。その分威力もありそうだが」
「つかさ様は弓が使えるのですね」
「はい、暫くやってなかったから引けるか心配ですけど。でもユグドラシルがくださったものなので大事に使いたいと思います」
ラウールさんは笑って頷くと、それにしてもと困った顔をする。
「持ち帰るのはなかなか大変ですね」
「あ、あたしは大丈夫です。ちゃんと収納方法わかりますから」
不思議そうな顔をするラウールさん達の前で、胸当ての結び目を解く。それはしゅるしゅると袱紗状に戻り、小さくなった弓矢をちょこんと乗せて畳まれていった。
「このまま手首にでも巻いておけば、なくさないから大丈夫です」
「ほおおおお、便利だな!」
勇治さんがすごくキラキラした目で覗き込んでくる。あたしもこういう秘密アイテムみたいなのって好きなんだ。ワクワクしない?
「それで? 蓮、お前の剣も小さくなるのか!?」
「いや、このまま」
「へ? どうやって持ち歩くんだよ」
「どうしよう。つか、そもそもこれ向こうに持っていったら銃刀法違反……」
「今時のコスプレする人ならこのくらい作るわよ」
「そうですね」
あたしが食い気味に言うと、ラウールさんもなるほどと手を打つ。
「目立たないようにすればいいでしょう。部屋の荷物に紛れさせます。どのみち、こちらには置いていけませんし」
この大きさじゃ目立たなくはないと思うんだけど。
あたし達はああだこうだと策を凝らし、結局、通路越しに部屋へ運ぶのが無難だろうということになった。
「では一旦戻って撤収だな」
「はい。先にお戻りください。向こうに着かれたら部屋でお待ちを」
出立を決めたあたし達が仕度をしていると集落の人達が気づいて見送りに出てくれた。
「最早、立たれますか」
「慌ただしくてすまない。世話になった」
「いえ、私共は何も」
「俺達は北へ向かう。ユグドラシルがいるから大丈夫だと思うが何かあったら連絡をくれ」
「なんの、お気遣いは無用です。女神ユグドラシルと共に道中の無事をお祈りしております」
エンジンをかけたあたし達と別れ、ラウールさんは布都御魂を預かりドラゴンに跨る。
「行きますよ、リンドヴルム」
飛び立ったリンドヴルムは、そのまま先導するように移動を始めた。
「では、行ってくる」
「お気をつけて」
手を振る人達に見送られて、あたし達は走り出した。
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