これは今よりも少し先のお話。
七月七日、七夕の日。
この日は、みんなで星を見に行こうと約束をする。
私達にとって、星は大切な思い出だった為、みんなこの日を楽しみにしていた。
そして、待ちに待った、当日。
みんなで集まり、夜空に輝く星を見る。
はずだったのだけど…。
現在、私はベッドの上で寝込んでいる。
前日の朝から風邪を引いてしまい、当日の朝になっても、一向に熱が下がらないでいた。
待ち合わせは夕方からだったけど、これはもう下がらないなぁ…。と思い、グループチャットでみんなに伝えることにした。
上田一樹 みんなぁ…。熱下がらないよぉ…。ごめんねぇ…。
中谷朝日 そっかぁ…。私達のことは気にしないでしっかり休むんだよ!
漆原夏海 うんうん!早く良くなるようにね!
真白雪 そうです…!王子様…お大事になさってくださいね…!
高円寺楓 そうよ!気にせず、今はとにかく風邪を治すことに専念なさい!
みんなの優しさに、嬉しさと申し訳なさを感じる。
最後に、私のことは気にせず、みんなだけでも行ってきてね。と送り、風邪を治す為、眠ることにした。
みんなに会いたいなぁ…。
みんなと、一緒に星を見たかったなぁ…。
そう、考えながら。
目を覚まし、時刻を確認すると、夕方頃になっていた。
もうみんな集まってる頃かなぁ…。
そう考えていると、突然ドアが開く音がし、声がする。
「あ!かずき起きたみたい!」
その声に驚き、顔を向けると、星を見に行っているはずの四人がいた。
「え…?なんで…?」
「んー?かずきのお見舞いに来たんだよー?」
私の疑問にわざと、とぼける朝日。
「そうじゃなくて…。みんなで星を見に行ってるはずなのに…」
「星を見に行くのはやめて、今日はかずっちのお見舞いに行こー!ってなったんだよー!」
片手を上げ元気よく言う夏海。
「で、でも…みんな、ずっと楽しみにしてたのに…」
「やっぱり、五人揃った時に見たいですから…!」
両手でガッツポーズをしながら言う雪。
「そんな…。せっかくの七夕なのに…。私のせいでごめんね…」
「なに言ってるの。また来年の七夕に見に行けばいいのよ」
私の頭を撫でながら優しく言ってくれる楓さん。
申し訳なさから、泣いてしまう私。
みんなが慰めてくれて、なんとか泣き止むと、朝日が言う。
「それじゃあ、みんなでかずきの看病しよー!」
「「「しよー!」」」
それからは、みんなで作ってくれたお粥を食べさせてくれたり、汗をかいた身体を拭いてくれたり、着替えを手伝ってくれたり。
私をとにかく手厚く看病してくれた。
普段の私なら恥ずかしがっていたけど、今日はみんなの優しさが嬉しくて笑顔でいた。
それから、時刻は夜になり、みんなが帰る準備をする。
私は、みんなが帰っちゃうことの寂しさを感じていた。
そんな時、ふと窓の外を見ると、あるものを見つけ驚いた。
「あ…。みんな、あれ見て!」
四人が窓の外を見る。
すると、四人も驚き、そして喜んでくれた。
それは、夜空に輝く、綺麗な一つの星。
今日、見に行くはずだった星。
満天の星空とはいかなかったけど。
それでも、みんなと星を見れたことが、私も嬉しかった。
しばらくみんなで星を眺めていると、朝日がなにかを思い出した様で言った。
「ねぇねぇ!みんなで、短冊にお願い書こうよー!私、用意したんだー!」
そう言うと、一旦家に戻り、小さい笹と、短冊を持ってきてくれる。
四人が先に書き終わり、みんなで見てみると見事に同じようなお願いだった。
そして、書き終わった私の短冊を見せると、みんながそれぞれ言う。
「うん!絶対叶えようね!」
「絶対叶えるよー!」
「はい…!絶対に…!」
「ええ!必ず!」
私も、うん!絶対叶える!と返事をする。
それから、みんなで机の上に笹を飾り、短冊を付けてくれた。
そして、それぞれが私を励まし、私がお礼を言い終わると、みんなが帰っていく。
みんな帰ってしまったけど、もう先ほどのような寂しさはなかった。
四人の優しさが込められた短冊と、私の願いが書かれた短冊。
かずきの風邪が早く治りますように! 中谷朝日
かずっちが早く元気になりますよーに! 漆原夏海
王子様のお身体が良くなりますように 真白雪
一日でも早く健康な上田一樹に戻りますように 高円寺楓
来年も大好きなみんなと、星を見られますように 上田一樹
それを見ていると、みんながずっと側にいてくれる様な温かい気持ちになる。
私はその気持ちまま、風邪を治す為、眠ることにする。
その日、夢の中でも私達は仲良く星を見ていた。
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