魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、だから僕は描いている

失恋から始まる、高校生の恋愛のお話
至ッ亭浮道
至ッ亭浮道

第4話

公開日時: 2021年10月1日(金) 19:30
文字数:730

「もうあきだねえ」


 放課後ほうかご

 佐藤さとうさんがそうった。

 ぼくは、佐藤さとうさんが風情ふぜいかんじれるのに、おどろいた。


「そんなことうと、おばあちゃんみたいだよ」

「むう。きみはつくづく失礼しつれい少年しょうねんだなぁ」

春奈はるなは、わりとおばあちゃんじゃん」

「じゃあ、はおじいちゃん!」

「どこが?」

説教せっきょうっぽいところ」


 余計よけいなことわなきゃいいのに、とおもったときには、もうおそかった。


「いたい! いたいーーっ!!」


 川上かわかみさんは、佐藤さとうさんのかたにグーッとちかられて、かたんでいた。

 佐藤さとうさんの悲鳴ひめいが、痛痛いたいたしい。

 それでも、川上かわかみさんは、何秒間なんびょうかんか、佐藤さとうさんのかたを、つづけた。


「もう! いたいでしょ! 厳罰げんばつすぎますぞ!」

春奈はるながあんなこというからでしょ」

「だからって、暴力ぼうりょくはよくなーい! この怪力かいりき少女しょうじょ!」


 佐藤さとうさんは、ほっぺたをふくらませながら、おこっている。

 けれど、川上かわかみさんは、うつもりもない様子ようすだ。

 そして、いかりであばれようとする佐藤さとうさんをせいしながら、川上かわかみさんは、ぼくほういた。


峯村みねむらは、まりあ先輩せんぱいのところに、くんだよね?」

「うん。すこはなして、用事ようじいてから、かえるよ」

「ちょっとー、タロちゃん! 春奈はるなを、こんな凶暴きょうぼうもの一緒いっしょに、いていくの!?」

「でも、かなきゃだし」

「どのぐらいかかるの?」

「それが、わからないんだよね」


 大園おおぞの先輩せんぱいが、どうして、ぼくのクラスまでたのかも、かっていない。

 だから、どれぐらい時間じかんがかかるのか、という見立みたてもできなかった。


「ほら、今日きょうかえるよ」

「あーん! 今日きょうはタロちゃんとかえりたい気分きぶんなの!」


 佐藤さとうさんは、そのあとも駄々だだをこねていた。

 けれど、川上かわかみさんにきずられるようにして、二人ふたりかえっていった。

 二人ふたり姿すがた見送みおくってから、ぼく準備じゅんびをした。

 そして、大園おおぞの先輩せんぱいがどこにいるかをくために、生徒会室せいとかいしつかった。


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