「もう秋だねえ」
放課後。
佐藤さんがそう言った。
僕は、佐藤さんが風情を感じれるのに、驚いた。
「そんなこと言うと、おばあちゃんみたいだよ」
「むう。君はつくづく失礼な少年だなぁ」
「春奈は、割とおばあちゃんじゃん」
「じゃあ、瑠美はおじいちゃん!」
「どこが?」
「説教っぽいところ」
余計なこと言わなきゃいいのに、と思った時には、もう遅かった。
「いたい! いたいーーっ!!」
川上さんは、佐藤さんの肩にグーッと力を入れて、肩を揉んでいた。
佐藤さんの悲鳴が、痛痛しい。
それでも、川上さんは、何秒間か、佐藤さんの肩を、揉み続けた。
「もう! 痛いでしょ! 厳罰すぎますぞ!」
「春奈があんなこというからでしょ」
「だからって、暴力はよくなーい! この怪力少女!」
佐藤さんは、ほっぺたを膨らませながら、怒っている。
けれど、川上さんは、取り合うつもりもない様子だ。
そして、怒りで暴れようとする佐藤さんを制しながら、川上さんは、僕の方を向いた。
「峯村は、まりあ先輩のところに、行くんだよね?」
「うん。少し話して、用事を聞いてから、帰るよ」
「ちょっとー、タロちゃん! 春奈を、こんな凶暴な生き物と一緒に、置いていくの!?」
「でも、行かなきゃだし」
「どのぐらいかかるの?」
「それが、わからないんだよね」
大園先輩が、どうして、僕のクラスまで来たのかも、分かっていない。
だから、どれぐらい時間がかかるのか、という見立てもできなかった。
「ほら、今日は帰るよ」
「あーん! 今日はタロちゃんと帰りたい気分なの!」
佐藤さんは、そのあとも駄々をこねていた。
けれど、川上さんに引きずられるようにして、二人は帰っていった。
二人の姿を見送ってから、僕は準備をした。
そして、大園先輩がどこにいるかを聞くために、生徒会室に向かった。
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