魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、だから僕は描いている

失恋から始まる、高校生の恋愛のお話
至ッ亭浮道
至ッ亭浮道

第4章

第14話

公開日時: 2021年10月11日(月) 19:30
文字数:779

「タロちゃん、かえろー」


 放課後ほうかご、HR(ホームルーム)がわったあと

 佐藤さとうさんは、一目散いちもくさんぼく川上かわかみさんのもとてから、そうった。

 はいはい、と川上かわかみさんはカバンをった。

 けれどぼくは、すわったままでいる。


「どうしたの?」


 川上かわかみさんはかえりつつ、そうった。


「ごめん、今日きょう予定よていがあって。二人ふたりともさきかえってて」


 ぼくは、川上かわかみさんを見上みあげた。

 川上かわかみさんとう。

 川上かわかみさんの緑玉色エメラルドグリーンが、ギラッとひかったがした。


「……なんで?」

木戸口きどぐちさんと約束やくそくがあるんだ」


 川上かわかみさんは一瞬いっしゅんはずして、またぼく視線しせんもどした。

 もどってきたときには、緑玉色エメラルドグリーンのギラツキはえていた。


くんだ」

「……うん」


 どうしてわかったのか、わからない。

 川上かわかみさんは、ぼく態度たいど雰囲気ふんいきから、ぼく木戸口きどぐちさんをこうとしているのを予測よそくしたらしい。


「どこでくの?」

大園おおぞの先輩せんぱいに、生徒会せいとかい倉庫そうこ使つかわせてもらってる」

まえから準備じゅんびしてたんだ?」

「うん。一週間前いっしゅうかんまえから」

「タロちゃんってば、用意周到よういしゅうとうだにゃあ」


 佐藤さとうさんはそうって、ぼくかたっついた。


春奈はるなわたしたちもこう」

「「え?」」


 ぼく佐藤さとうさんはおな反応はんのうをした。


「それはちょっとぉ……」

「いや、こう。峯村みねむらいてるのをよう」

てどうするの?」

たしかめるの。わたしたちに、木戸口きどぐちさんがどうえるか」

なにを?」


 とぼくいた。

 けれど、黙殺もくさつれた。

 そうして、ぼくりにして、会話かいわながれていく。


さ、えなくなったの?」

「いいや。でも、えなくなったほうがいいのかもれない」

「それは、遠慮えんりょ? 決別けつべつ?」

「それをめるためにこ」


 会話かいわ終着点しゅうちゃくてんいたようで、佐藤さとうさんは川上かわかみさんに同意どういしたらしい。


真面目まじめすぎるにゃあ」

「でも、これがわたしだから」


 そうって、川上かわかみさんと佐藤さとうさんが目配めくばせをした。


「じゃあ、こう」

「う、うん」


 川上かわかみさんにうながされて、ぼくは、画材がざいでいっぱいのカバンをってがった。

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