魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ、だから僕は描いている

失恋から始まる、高校生の恋愛のお話
至ッ亭浮道
至ッ亭浮道

第17話

公開日時: 2021年10月14日(木) 19:30
文字数:576

駄目だめだった?」


 今回こんかいは、ぼくなかでは自信作じしんさくだった。

 ふか海底かいてい宮殿きゅうでんがあって、そのおくかがみがある。

 そのかがみ装飾そうしょくすくないけれど、綺麗きれい縁取ふちどりがついている。

 その鏡台きょうだいしたに、ちいさなあかいしちている。

 あかせきが、かがみたってかがみちいさなヒビがはいっている。

 文字もじにしてしまうと、それだけのだった。


駄目だめというか、自分じぶん想像そうぞうちがっていて。……肖像画しょうぞうがかとおもってたので」

「あれ? ってなかった? ごめんね!」

「いや、でも――」


 そうやって木戸口きどぐちさんは、まじまじとながめている。


「やっぱり……駄目だめかな?」

「いや……、いいです。ればるほどいいです。きです」

本当ほんとう?」

「なんだか、予想外よそうがいでしたけど、ればるほど、自分じぶんのことがいてあるがしてきます」

「よかったぁ。ぼくのイメージをんでみたんだ」


 ぼくがそううと、木戸口きどぐちさんは、からはなした。


いてもらってよかった……」

「え?」

「……なんでもないです」

「ええ? そうわれると、になるよ」


 それでも木戸口きどぐちさんはおしえてくれない。

 木戸口きどぐちさんはしばらくなやんでいるようだった。

 そして、最後さいごにこうった。


「――さかなおよいでるとき一番いちばんきとしてるし、とりんでるとき一番いちばんうつくしいんです」

「え?」


 ぼく木戸口きどぐちさんをた。

 れかけだから、木戸口さんの表情ひょうじょうえない。

 でも、そこに村口むらぐちさんにおんなはいなかった。

 ……ような気が、した。

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