「…なるほど、顔にスープをぶっかける…か」
「ああ、ゾンビは呻く時に口を開くだろう?その時に少し深いお玉でスープを掬ってかけてやれば、少しぐらいなら飲むハズだ」
「流石に身体が欠損してるゾンビは回復させるのが優先だけどな」
男が青年に説明してる最中にも料理を作っていた彼女が、肉野菜炒めが盛られた皿をテーブルに置きながら会話に参加する。
「欠損って…回復させるのと再生は違うんじゃないか?」
彼女の言い方に疑問を感じた青年が聞く。
「ゾンビ状態ってのはな、ありがたい事なのか厄介な事なのか…HPが回復すると身体も元に戻るんだ」
青年の疑問に知らんぷりして大きな鍋を持って外に出た彼女の代わりに男が答えた。
「…そうなのか?」
「ああ、魔物に回復系のスキルが使えるやつがいたらゾンビ状態の敵はかなりの強敵になる事間違いなしだ」
青年が初耳のように驚くと男が言い切る。
「…そうか、だから騎士団は…」
「だが…そのゾンビの特性を生かした『死んだ人間を生き返らせる蘇生法』というものがある」
説明を聞いて青年が納得したように呟くと男が続けた。
「コレはゾンビ解除の法術と、ゾンビ状態にする魔法が使える賢者じゃないと出来ない方法で…死んだ人間を一旦ゾンビにして、回復魔法をかけ、ゾンビ解除する…という荒技だ」
「…なんという…」
「へぇ、そんなんあるんだ」
男の説明に青年が絶句してるといつから聞いていたのか分からない彼女が適当な感じで呟く。
「だったら金持ちとかは直ぐに生き返るんじゃない?」
「いや…そもそもゾンビ解除の技を使える賢者自体が極めて稀なんだ、ソレにリスクの方が高い」
彼女の能天気な質問に男は首を振って否定する。
「それに回復した後の解除を素早く行える術者じゃないとゾンビにされてしまう」
「ふーん…ミイラ取りがミイラになる感じか…」
男が続けた言葉に彼女は独特な解釈で納得した。
「じゃあゾンビにする魔導師?と回復させる賢者?とゾンビ解除させる賢者がいれば?」
それぞれ役割分担させた三人用意させるとか…と彼女は提案する。
「…!役割分担か…!それは思いつかなかったな!……その方法なら確実に蘇生は可能だろう、金がかなり必要になるが」
男は目から鱗!みたいに驚いて考え込むと彼女のさっきの質問への答えを否定から肯定に変えた。
「…話を戻すが、身体が欠損したゾンビ状態の人々は回復させれば元通りになるんだな?」
話がひと段落したところで青年が確認する。
「ああ」
「…ゾンビ状態の魔物も、ちらほらいたが…ソレはどうするんだ?」
「当然戻すに決まってんじゃん」
青年の疑問に自分の分の茶碗蒸しを食べながら彼女が答えた。
「だと思った、が…街の人々との折り合いとかの考えはあるのか?」
予想通り…と言わんばかりに頷いた青年は更に質問を続ける。
「…そこは俺も考えていた…とりあえずは魔物から元に戻し、お前の元の仲間である騎士団を戻してから決めようと思っている」
少し間を空けてから腕を組んで考えていた男が口を開く。
そんな重苦しい雰囲気の中でも、彼女は我関せずでご飯をパクパク食べていた。
「…良い考えだ、ノープランなら一緒に考えようと思っていたが…どうやら杞憂だったようだな」
青年は男の言葉に笑って返してスプーンで肉野菜炒めを掬う。
ソレで会議的な場は終了したのか男もご飯を食べ始める。
「…ご馳走さん…あ、分かってると思うけど…あの街の人達のゾンビ状態を解除するための料理を作るのには時間がかかるし、なにより今ある材料じゃ全然足りないから」
彼女はご飯を食べ終わると作戦の要である料理の事を告げて、スキルを使い皿と箸を綺麗にした。
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