「……はっ!…ほ、本当か!?」
二度目の予期せぬ返事に男は我に返ると立ち上がって確認を取る。
「今日の昼と夜だけならな」
「…く…むぅ…!俺は、いつからこんな贅沢な…!…ありがとう、ソレだけでも十分だ!」
彼女の言葉に男は少し落胆したような表情を見せ、直ぐに自己嫌悪してお礼を言う。
幸いな事?なのか彼女は背を向けていたので気付いてないが。
「MP関連…ねぇ…ちょいとレシピ帳から探してみるか」
彼女は少し考えるように呟くと寝室に向かった。
「MP…MP…確かMP3…あった」
本棚に置かれているノートを指差し確認しながら彼女は目当てのノートを取る。
「…ああ、こんなのもあったなー…」
彼女はノートをパラパラとめくりながら昔の自分が書き綴ったメニューを懐かしそうに見た。
「…よし、大体思い出したぞ」
2分ほど流し読みした彼女がノートを閉じて立ち上がり本棚に戻す。
「ふんふんふん…ふふんふん♪」
そして鼻歌交じりに保管庫のような部屋から食材を取り出すと、彼女は昼ご飯の準備を始める。
「…お…おお?」
彼女が料理を作り終わり、魔物達にあげてると青年がテーブルの上の料理を見て首を傾げた。
椅子が2つある側には料理が盛られた皿が2つずつしか置いていないのに、椅子が一つしかない側には7~8種類の料理が盛られた皿が8つ置いてある。
「…あれ?」
その異様な光景に手を洗って戻ってきた女の人も不思議そうに首を傾げた。
「…?お前らどうし…た…」
テーブルを見たまま突っ立っている2人を見て男が話しかけるも、同じテーブルの上の異様な光景に言葉が小さくなる。
「…なんだコレは?」
「さあ?俺も今戻って来たばかりだから…」
男が聞くと青年も聞き返す。
「位置的にはコレが私達の?」
「じゃあこの豪華なご馳走が俺のになるのか?」
「待て待て、おかしくないか?なんでお前だけ…」
女の人がいつもの場所に座り2皿の料理を指差すと男が豪華な料理を指差して疑問に思い、青年も不思議そうに呟いた。
「…ソレもそうだよな…彼女を喜ばせる事をしたなんて身に覚えがないし…」
むしろ逆の事なら身に覚えがあるが…と男は不思議そうに首を傾げる。
「…彼女が来ない事には食べようが無いな…」
「…そうだな」
青年の呟きに男は賛同して定位置ともいえるいつもの場所に座った。
「…それにしてもこの豪華さ、何か良いことでもあったのだろうか?」
「…うーむ…俺が知る限りご機嫌では無かった…」
「私も良いことがあったようには見えませんでしたが…」
料理の不自然さに考察してみるも結局答えは出ずに不思議なままで終わる。
「…あれ?食べないの?」
大きな中華鍋を持って戻って来た彼女は料理に手を付けずただ座ってるだけの3人を見て聞く。
「いや…どれが誰のだか分からなくて…」
「…んー…分かりやすいように置いたつもりだったけどなあ…まあいいや、コレがコイツのね」
青年の言葉に彼女は考えるように呟いて8皿の料理を男側に寄せた。
「「え…?」」
「コイツがMP増やす効果の料理が良い、ってワガママ言うから…何回も作るのも面倒だし一気に作った」
コレが『最大MP増加』で、コレが『魔力強化』、コレが『MP自動回復』で…と彼女は呆然している男に料理の付与効果を軽く説明する。
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