「そして…そうだな、今の所はコレで最後か…俺が魔導協会の外で動く場合には『魔導召喚師』という表示を隠す事、だ」
「…隠す…?」
「それにはどういう意味が?」
男が考えながら言うと女の子が首を傾げながら呟き、おじさんが意味を問う。
「魔導召喚師は世界で俺1人しかいない、つまりは俺が何かすれば恩人である彼女の耳に入る可能性がある…その可能性を排除したい」
「…つまりは行動を内密にしたい、という事ですか?」
男の説明におじさんは理解出来ないといった様子で聞いた。
「ああ、職業の表示を上書きするには地位が必要だ…貴方の『教皇』やそいつの『巫女』みたいに」
「…分かりました、それぐらいならば容易い事…本当に条件はそれだけですか?」
男が『巫女』や『教皇』の表示を示しながら言うとおじさんは条件を全て呑む事を了承して他に無いか問う。
「今の所は無い…が、何かあれば条件は増えるかもしれん」
何も無ければ条件はそのままだがな、と男は少し考えるようにして返す。
「…分かりました、その時は今みたく内容を聞いてから判断致しましょう…では貴方は今から正式な魔導協会の一員となります」
魔導の加護があらん事を…とおじさんは机に立てかけられてる杖を手に取り、上に掲げながらかなり略式の儀式を急ぎ足で済ませる。
「…これから事務局に魔導協会所属の証であるペンダントを取りに行ってもらいます…魔導の巫女、貴女に案内を任せても?」
公務の時間が迫ってるのかおじさんは急ぎ足で話を進めると女の子に聞いた。
「はい、任されました」
「…こいつについて行けばいいのか」
「貴方の働きに期待していますよ」
女の子が頭を下げて部屋から出ようとすると男がついて行き、ドアが閉まる直前におじさんが声をかける。
…こうして『魔導召喚師 Lv21』の男は魔導協会所属となった。
「…ただいま」
「おー」
「飛行テストの割には時間がかかったな…修正作業は大丈夫なのか?」
男が山小屋に戻ると彼女は料理の最中で青年は椅子に座っている。
「大丈夫だ、それより…あの女の子はどうした?」
青年の問いに答えると男は家の中を見渡して聞き返す。
「ああ、あの子なら着替えとかの必要な物を取りに帰ってるよ」
「…本格的に居座るつもりなのか…」
青年が笑いながら言うと男は彼女を気にするようにチラリと見て呟く。
「いや、あの子がココにいるのは修行のためらしい…だから強くなれば離れて行くさ…」
青年は男の言葉に軽く否定するように首を振って寂しそうに言った。
「…どうだかな、まあ少なくとも俺はたとえ魔導を極めようとも彼女から離れるつもりはない」
男が彼女を見ながら青年にだけ聞こえる音量でコソコソ告げる。
「…なに?」
すると、ジッと見ている男の視線に気付いた彼女が振り向いて不機嫌に問う。
「い、いや、なんでもない…!あの女の子はどこ行ったのかと思ってな」
男は焦ったようにさっき青年に聞いた事と同じ事を言って強引にごまかそうとした。
「ああ…修行目的で暫く厄介になるから、って着替えとかを取りに行ったよ」
まったく…厄介になるって自覚してるんなら出て行けばいいものを…と彼女は呆れたようにため息混じりで言う。
「…何も返せんな…」
「ああ…」
彼女の言葉に男がなんとかフォローしようと口を開いたが結局諦めたように呟き、青年も同意する。
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