三日後。
「グルル…!」
「まだまだ」
小屋の裏庭で青年が『Lv18』と表示されてる小柄な魔物と闘いを繰り広げていた。
「…お、今日もやっているのか」
「ああ、身を守るための強さは必要だからな」
男が歩いてきて話しかけると青年は振り向いてそう返し、魔物の方を見ずに攻撃を凌いでいる。
「それに…今の状態が続くならば、守る以外では人に危害を加えないと約束してくれたし…な!」
「ギャン!!」
ギイン!と青年は爪を弾いて剣の面の方で魔物の胴体を叩いて吹っ飛ばす。
「大した経験値も得られないのにご苦労な事だ」
「なに、Lvは上がらなくとも指導スキルの経験値は溜まるさ」
皮肉のような事を言った男に青年は汗を拭いながら爽やかな笑顔で返した。
「指導スキル…か、誰も習得しない捨てスキルだとばかり思っていたよ」
「…君も後輩や弟子が出来れば考えも変わるさ、受け売りだけどね」
男のバカにしたような言い方にも青年は気にせずに水筒を手に取る。
「怪我はしてないか?一応手加減はしたつもりだが…」
「ヘッヘッヘッ…」
青年は叩き飛ばした魔物の所に歩いて行くと頭を撫でながら水筒を開けて中身を飲ませた。
すると緑色の光が魔物を包みHPゲージが少し回復する。
「…回復アイテムまで作れるなんて料理スキルによる付与効果とは本当に万能だな」
「一昨日も同じ事を言ってなかったか?」
「何度でも言いたくなるさ…状態異常、ステータス強化、ダメージ、回復…」
なんでこんな便利なスキルを先人達は放棄したんだかね…と男はため息を吐く。
「習得の難しさと価値観の違い…だろうな」
「途絶えて初めてそのスキルのありがたみが分かるって事か」
「ところで、彼女は?」
男が呟くと青年が話題を変えるように聞く。
「さあ?朝から見てないが…」
「ふむ…もしかしたら畑にでも行ってるのかも知れない…少し探して来よう」
「あ、おい!」
どうせ厄介者扱いされて鬱陶しがられるだけだぞ!という男の注意をよそに青年は走り出す。
「…やれやれ…魔物がいるから危険は無いというのに…」
男は呆れたように肩を竦めて呟くと袋から本を取り出した。
そして木の影の真下に腰を下ろして読み始める。
「てーれれー♪……ん?何しに来たの?」
「いや、ランニングしてたら通りがかっただけだ」
畑で口ずさみ収穫作業をしてる彼女の所に青年が走って来た。
「ふーん?まあ頑張って」
青年の言い訳染みた返事に彼女は怪しがりながらもスルーする。
「ああ……ところで、なぜ今朝の朝食は作り置きだったんだ?」
青年は走り出そうとしてふと思い出したように疑問を口にした。
「…なに?文句?」
「いやっ、違っ…!ただ珍しいから気になっただけで…!」
不機嫌そうに睨んできた彼女に青年は慌てて弁明し始める。
「…ただ単に収穫時間の都合上だよ」
「そ、そうだったのか…では」
彼女の返答に青年はホッと胸を撫で下ろしたような仕草をして、手を上げ走り去っていく。
「…なんだったんだ…?」
彼女は青年が走って行った先を怪訝そうに見ると籠を背負って家に戻った。
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