翌日。
「今日の昼は何にしようかな…?」
彼女は朝ご飯の片付けをして椅子に座る。
「うーん…米、麺、パン、揚げ物、炒め物、煮物…そうだ!蕎麦にしよう!」
腕を組みながら魔物が来てからのメニューを思い出しながら呟いてると不意に閃いたらしい。
「あー…でも皿が足りないなぁ…」
戸棚と収納スペースにある皿を見て彼女は残念そうにため息を吐いた。
「ラーメンにしても皿が足りないし…やっぱり麺はパスタ系統じゃないと難しいか~…」
彼女は考えながら家の中をぐるぐると歩き回る。
「薪はこんなもので良いか?」
すっかりこの家に住み着いた『魔術師 Lv21』と表示されてる男がドアを開けた。
「薪?…あ、そういえば焼きそばがあったな」
男の確認に彼女は不思議そうに外に出ると積まれた薪を見てメニューを思いつく。
「…やきそば?」
「こっちの話…で、この薪はなに?」
男の疑問に手を振って流し彼女が逆に問う。
「いや、風呂に必要だろう?見当たらなかったから取って来たんだ」
「…うちの風呂は電気だよ?」
胸を張って、褒めてくれ!と言わんばかりの男に彼女は冷たい目で馬鹿にするように告げる。
「バカな!こんな山奥にあるのに電気だと!?昨日は俺が入浴中に薪で焚いてたじゃないか!」
「あれ、風呂用にやってたワケじゃないから…まあとりあえず裏に持って行っといて」
必死に弁明する男をどうでもよさ気に扱うと彼女は家の中に入って行った。
「ふふんふん、ふんふ~ん♪」
「あの倉庫の隣で良かったか…って何をしてるんだ?」
戻ってきた男は大きなボウルの中の生地を鼻歌混じりに踏んでいる彼女を見て不思議そうな顔で聞く。
「昼ご飯の準備」
「もう…か?」
彼女の返答に男は小屋に取り付けられてる時計を見ながら更に聞いてきた。
「なるべく余裕を持ちたいからね」
「そうか…何にするんだ?俺に手伝える事があったら遠慮せずに言ってくれ」
「ガルバントに近い料理、今は無い」
彼女は男と話しを続けたくないのか短く返して口を閉じる。
「て~て~てれれ、ててれてれれ~♪」
「…ソレはもう鼻歌じゃ無いだろ」
口ずさみ始めた彼女に本を読んでいた男が思わずツッコむ。
「別に鼻歌だろうが口ずさもうがあんたには関係なくない?」
「そ、それはそうだが…」
責めるような彼女の口調に男は口ごもった。
「小説読むのに集中できないと思うなら外で読んでこいよ」
彼女は追い討ちをかけるように更に続ける。
「いや、コレは小説じゃなくて魔導書なんだが…」
「魔道書でも地獄の黙示録でもどっちでも良いよ」
「…地獄の黙示録…?」
興味無さそうに言った彼女の言葉に男が興味を持った。
「現実的に不透明な何かが書かれた本だよ、魔道書なんてそんなもんだろ」
「いや、違う…魔道書には魔術の使い方が書いてあって、魔導書には魔法の使い方が書いてあるんだ」
オカルトに分類した彼女の発言を否定するように男が説明する。
「魔道書に魔道書?どっちも同じじゃないの?」
「魔道書は真ん中に道と書かれていて…まあ魔術の入門編である魔道だ」
多少興味を持った彼女が聞くと男は本に栞を挟んで閉じ、説明を始めた。
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