「魔物が…人の言う事を聞いた…！？」

「…もしかして…」

更に驚愕してる女の子を見て男は何かを思い出すような感じで顎に手を当てる。

「？知り合いか？」

「いや…一度だけ見た事がある、というだけだ」

青年の問いに男は顎に当ててる手を額に移動して考え始めた。

「…問題は無さそうか？」

「…ああ、何かあっても俺一人で大丈夫…」

「…そうか、では俺は戻ろう」

青年は思い出そうとしている男の言葉を聞くと、何か言いたそうな女の子を一瞥して背を向け戻って行く。

「…まさか、こんな所に居たとは…」

女の子は青年が見えなくなると安心したように息を吐いて言う。

「…思い出したぞ、魔導協会の巫女が何の用だ？」

「私を分かるのに用件を問うのか？それにしても…今日は驚きの連続だな」

まさかあの時のが魔導師とは…と男の疑問に聞き返して零す。

「…なに？俺を覚えているというのか…？」

女の子が零した呟きに男は怪訝そうな顔になる。

「…私は記憶力が良い方なのだ、まあ正確には『覚えてる』と言うよりも『思い出した』に近いが」

「…ふん、魔導協会の巫女様に思い出してもらえて光栄だな」

女の子の言葉に男は鼻で笑って皮肉で返した。

「心にも無い事を…まあいい、言うまでもないと思うが私が来たのは『魔導師』の貴方をスカウトするため、だ」

女の子は一瞬だけ不快そうな表情になるも直ぐに元に戻して用件を告げる。

「魔導師…？はっ！その節穴のような目でちゃんと確認しな」

「何を……っ…！！？」

男がバカにしたように笑って表示を大きくすると、女の子の不快そうな表情が驚愕に変わった。

「魔導…召喚師…！？ありえない！今はまだ召喚士などまだ存在していないハズだ！」

…！まさか…魔導師から更に上がったと感じたのは間違いじゃなかった…！？と何か思い当たる事があったのか、女の子の取り乱した様子が一旦収まる。

「…くくっ…あの巫女様がこうも取り乱すとはな…まあ信じようが信じまいがこの表示は事実だが」

その様子を見て男は面白そうに笑いながら告げた。

「貴方は一体…あの時も、今も…才能が無いハズなのに…何故…？」

女の子は信じられないようなモノを見るかのような目で男を見ながら聞く。

「…才能とは必ずしも天から授かる物ではない…人から与えられる場合もある、と言う事だ」

たとえ一定時間と時間指定されていてもな…と男は答える。

「…ココには、いえ…この国には魔導師は貴方しかいない…そこまで優秀な師匠がいるのなら、私の『感知』に引っかからないとおかしい」

「師匠だと？冗談だろ？彼女は魔導どころか魔術にも興味の薄い人間だぞ…」

女の子の言葉に男は呆れたように返した。

「そんなハズは…！」

「まあお前達の『常識』では到底理解出来ないだろうな…俺だってお前と同じ立場なら同じ感じだろう」

否定する女の子に男は腕を組んで昔の自分を思い出すように告げる。

「…貴方の言うその女性は常識外の人間、という事ですか？」

「…そうだな、少なくとも今の常識には当てはまらない方だと思う」

女の子の問いに男は少し考えて同意した。

「…どんな人か興味が湧いて来ました、才能の無かった貴方を世界にまだ4人しか存在しなかった魔導師にまで押し上げたのですからね…」

「…俺が5人目というワケか…」

女の子が呟くと男がニヤリと笑いながら言う。

「…今までは『魔導師』を超えた職業は『召喚士』だけだった、ですから貴方のその『魔導召喚師』とやらは確実に世界で貴方一人でしょう」

その言葉に女の子は男の職業が今現在、この世で唯一である事を断言する。