その後、直ぐに青年が出てきた。
まるで彼女に追い出されたかと思わせるようなタイミングで。
「…ふう…」
「…どうかしたんですか?」
出てきて早々ため息を吐いた青年に女の人が尋ねる。
「…いや、どうやって彼女の機嫌を元に戻そうか…と思ってな…」
青年は難しそうな顔をしながら返す。
「…怒ってる、という感じでは無かったですよ?」
「…そうだな、怒ってると言うよりも…」
完全に興味を失っているように思う…と青年が女の人の言葉に同意しつつ呟いた。
「…?どういう事ですか?」
「つまり、俺という人間が彼女の中で眼中に無い状態になった…という事だろう」
女の人が聞くと青年が少し悲しそうに言う。
「…どうでも良くなった、という事ですか?…でもそんなのいつもの事じゃ…」
女の人は青年をフォローしようとしながらも躊躇いがちに呟く。
「…『どうでもいい』と『興味が無い』は似てるようで違う」
「?」
青年がそう告げると女の人は意味を図りかねたのか首を傾げる。
「どうでもいい、は存在を認めているが興味を持てない事で…興味が無い、はそもそも何が起ころうとどうでもいい事だ」
「??なにか違うんですか?」
青年の説明を理解出来なかったのか女の人は逆向きに首を傾げた。
「…どうでもいい、は彼女の中に俺の存在があるが興味が無い、は彼女の中の俺が消えたと言う事だ」
「…つまり、存在が忘れさられた…?」
青年の補足のような説明に女の人は自分なりの解釈を疑問系で返す。
「…そうだ、それに近い…」
だから今の状態では俺が何を話そうと、何をしようと彼女には届かない…と青年は弱音のような言葉を零すように言う。
「…えーと…あの…」
女の人は青年に声をかけようとしたが、かける言葉が思いつかないのか少しして口を閉じる。
「…まあ、気にしていても仕方ない…方法が見つかるまではいつも通りでいこう」
「…そうですね、それが良いと思います!」
青年が軽く笑いかけるように言った言葉に女の人も賛同した。
「…あと少し休憩したらランニングをしようか」
「はい!」
青年は女の人にそう指示すると家から離れるように歩いて行く。
「…何故だ、この状況だと言うのに…どんどんと新技が閃いてしまう…!」
林のような所まで歩くと青年が信じられないようにボソッと呟いた。
「…魔剣士になったから、なのか…?」
食後すぐだと言うのに男は剣を抜いて構える。
「…ふう…魔剣スキル『黒狼剣』!…!?」
青年は目を瞑り深呼吸すると薄く目を開け…ごく自然にスキルを使い、そのあとに驚愕した。
「な、んだ…コレは…!スキルとは、修行修練鍛錬で身につくモノでは無いのか…!?」
青年が自分の手を見ながら信じられないように呟くと、持ってる剣の先が銀色から薄い黒に変わる。
「…そうか、コレが『魔剣士』…堕落した騎士や剣士、戦士の証…」
青年は剣の先をマジマジと見るとハッと何かを思い出したように呟いた。
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