「う、美味いぃ！！この料理、デュールに近いが…美味さが段違いだ…！」

「じゃ、食べ終わったら皿はシンクに置いといて」

彼女は遅めの昼食でソバを啜っている男にそう言ってドアを開ける。

「…？どこかに行くのか？」

「ちょっとね」

男の質問に彼女は適当に返して外に出た。

「ふふんふ～ん♪」

彼女は鼻歌を歌いながら慣れた道を歩き畑に向かう。

そして畑につくと日課である水やりを済まし、今度は洞窟へ。

「そろそろ稚魚とか捕まえて来た方がいいかな？」

魚に餌をやりながら数を数えて呟く。

「あー…でもまあまだ繁殖は終わってないから大丈夫か」

仕切られた場所にある卵の数を見た彼女は立ち上がり洞窟から出る。

「…さーて…夕飯用に動物でも狩ってこっと…」

夜の献立を考えながら家に戻ると彼女は裏にある倉庫から罠やボウガン、矢筒などを取り出す。

「鳥類にしようか獣類にしようか…」

顎に手を当てて迷いながら獲物を探しつつ彼女が山道を下山してると…

「君は…」

「んあ？あんたか、久しぶりだね」

『剣士 Lv36』と表示されている青年と山道で遭遇した。

「…もしかして狩り、か？」

彼女の格好を見た青年が問う。

「正解、あんたは何しに来たの？」

彼女は青年の問いに答えると冷たい目で聞き返す。

「君に会いに来たんだ」

「…なんで？」

青年の告白のような言葉に彼女は嫌そうに問う。

「…君の考えを聞いた時、俺は目から鱗が落ちるような思いだった…だからもっと君の考えを知りたくなったから、かな」

「…へー…」

青年が考えながら理由を言うと彼女はヒき気味に嫌そうな表情で少し後退る。

「…まあ本音を言えば、あの美味しい料理が食べたくなった、という事だが」

「…その理由だけにしてくれる？前半のは聞いてて鳥肌モノだよ…」

青年の本音を聞いて彼女は嫌そうな顔のまま腕を摩りながら返した。

「つーか表示が騎士から剣士に変わってるけど？」

「ああ、コレか？君の考えに賛同するには騎士のままでは難しい…という事に気付いたから辞退してきた」

彼女の疑問に青年は笑いながら答える。

「この選択が正しいかどうか分からない…もしかしたら間違っているかもしれない、だが、間違えば死ぬ…という世界の正義を信じてみたくなったのさ」

「…ああ、そう…まああんたがソレで良いんなら良いんじゃない？」

好きにするとイイよ…と彼女は興味無さそうに言って青年に背を向けると道から外れた場所に歩いて行った。

「待ってくれ！」

青年は歩いて行った彼女を引き止めるように叫んで後を追う。

「…なに？」

「何か出来る事があるなら手伝わせてくれ」

「…なんで？」

後ろからついてくる青年を見て彼女は鬱陶しそうなものを見るような表情で聞く。