「…そうだな、分かった、その役目やらせてくれ」
「政府が条件を呑めば、ね」
青年がせっかく決意したのに、弄ぶかのように彼女は肩透かしのような事を言う。
「…持ち上げておいて落とすとは…」
「落としたつもりはないけど?」
恐ろしい…と呟いた男に彼女は睨みながら疑問系でそう告げて家の中に戻る。
「…まあ、なんだ…アレが彼女なりの激励なんだろう、お前の所為じゃないから気にするなって事だよ、うん」
男は励ますように言って青年の背中を叩くとどこかへ歩いて行った。
「…俺の所為じゃない、か…そうだな、今回の責任は治したあいつらに取らせるべきだ」
俯きながら男の言葉を口にした青年は吹っ切れたように顔を上げる。
「よし!今日の特訓だ!」
青年は気合いを入れるように叫ぶと伏せってる魔物に近づいた。
「…やれやれ、また魔物と闘うのか…」
家の裏側に座っていた男が青年の叫びを 聞いて呆れたように呟いて袋から本を取り出す。
そして剣と爪がぶつかり合う音をBGM代わりにして本を読み始める。
「ふふんふんふ~ん~♪」
「ふぅ…今日の夕飯はなんだ?」
夕方。
日が沈み始めた頃に青年がタオルで汗を拭きながら家の中に入って来た。
「ぎょ…ビムスルだよ」
「ビムスル?」
「細かく刻んだ肉と野菜を薄く伸ばした生地に包んで焼くやつ」
料理名を言っても首を傾げる青年に彼女は細かく説明する。
「…ほう、初めて聞く料理だが…まあ君が作るんだから美味いんだろうな」
青年は笑いながら言うとまた外に出て行った。
二日後。
「うわぁ…スコールだ…」
畑から帰る最中に大雨に降られ、彼女はびしょ濡れになりながら家まで走る。
「…あ、止んだ…」
ようやく家の手前まで来たという所で雨が止む。
「…昼ご飯作る前に風呂に入るか…」
彼女は家の入口でため息混じりにずぶ濡れになった上着を脱いで絞る。
「おお、おかえ…っ!?な、な…!」
ちょうど家の中から出てきた男が上半身裸の彼女を見て絶句した。
「…ただいま」
彼女は男の反応を見ても特に気にせずに上着を絞ってまた着始める。
「…ブラは、着けてないのか…?」
「は?…ああ、うん、そんな趣味は無いからね」
男の質問に彼女は一瞬何を言われたのか理解できないような顔をすると、少し考えて答えた。
「…そ、そうか…それにしても…良い形だったな」
「…ここはありがとう、とお礼を言うべき?」
男の言葉に疑問系で返した彼女は返事を聞く前に家の中に入る。
「さて…風呂にでも入るか」
タンスから着替えとタオルを取った彼女は風呂場の前の洗面所で服を脱いで洗濯機に入れ、ガラガラ…と戸を開けた。
「……え?」
「あ、先入ってた?」
風呂場には身体を洗ってる青年が居たのでガラガラ…と彼女は戸を閉める。
「あ!風呂場にはアイツが先に入ってる…すまん!」
彼女が洗濯機に入れた下着を取ろうとしてると男がドアを開けて報告しようとして謝ってドアを閉めた。
「…?あ、この身体だからか」
男の反応に首を傾げると彼女は原因に思い至り手をポンと叩く。
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