「…スキル『料理』」
「いや、それには及ばない」
彼女が袋からフライパンを取り出してスキルを使おうとすると青年が制する。
「大丈夫か?ほら、コレを…」
袋から水筒を取り出した青年はフタをコップにして女の人に飲ませた。
「うっ……き、傷が…!」
すると緑色の光が女の人を包みHPゲージが赤から黄色になる。
女の人はソレに驚いたように立ち上がりながら自分の手を見た。
「一体なにがあったんだ?」
「…街が、一つ…滅びました」
「なっ…!?」
「…私は先に行ってていい?」
女の人の報告を聞いて驚愕してる青年に彼女はどうでも良さげに道の先を指差す。
「まっ…!も、もう少しだけ待ってくれ!」
「…じゃあ5分だけ」
青年が先に歩いて行った彼女を引き止めるように言うと渋々止まる。
「…彼女は…?」
「俺を助けてくれた例の彼女だ、今はそこに厄介になっている」
「…例の、ですか…」
女の人は青年の返答になにかを思い出したように呟いた。
「ソレより…街が滅びた、とは?」
「…れ、例のアレが輸送中に逃げ出しまして…」
青年の改めての質問に女の人は言いづらそうに答える。
「ばかな!だからあれほどアレに関わるなと…!…いや、君に言っても仕方のない事だ…上層部め…」
青年は声を荒げると少し考えて冷静になり、横を向いて忌ま忌ましそうに吐き捨てた。
「アレの元の同種に襲撃された隙に…」
「…仲間を奪還したのか…なるほど、人間と同じ理屈だな」
女の人の報告に青年はつまらなそうに立ってる彼女を見て納得する。
「…すまない、無理やり同行を申し込んでおいて、言えた義理では無いのは分かっているが…俺と一緒に来て欲しい!」
「ええー…?」
青年が地面に膝を着いて頭を下げると彼女は嫌そうな呟きを漏らす。
「私を置いて二人で行けば?別行動って事でさ」
「それも考えた…が、もし街に行く最中に君が魔物に襲われでもしたらと思うと…!」
彼女の提案に青年は勝手な想像で心配そうな顔になった。
「いやいや、襲われないから…今までも大丈夫だったし」
「だが…!」
彼女の反論に青年はなおも食い下がる。
「…はぁ~…分かったよ、ココで言い争いしてても時間を無駄にするだけで埒が明かなそうだ」
彼女は心底嫌そうに長いため息を吐いて折れた。
「でも行くだけだからな、夕方までには買い物して帰って夕飯作らないといけないし」
「ああ!ありがとう!…では…」
彼女の言葉に青年は嬉しそうに顔を上げてお礼を言うと立ち上がり、ピィー!と指笛を吹く。
すると山の中で魔物の遠吠えが。
「「ヘッヘッ…!…グルルルル…!」」
そして二匹の魔物が素早い動きで山を下りて青年の所に来ると女の人を見て威嚇するように唸る。
「ひっ…!ま、魔物!?それも二体も…!」
「「グルルルル…!」」
女の人が急な魔物の出現に恐怖で慄き、剣を抜いて構えると魔物が警戒したように唸りながらジリジリと近づく。
「おっとストップストップ…大丈夫だ、落ち着け」
その間に青年が入り、お互いに手のひらを向けて興奮状態の一人と二体を鎮めるように言う。
「で、ですが…!」
「良いから俺の言うとおりにしろ、まず剣を鞘に納め、そして深呼吸だ…大丈夫だ、何かあっても俺が守る」
「…は、はい!」
青年の言う通りに女の人は剣を納めて深呼吸した。
「よし、君達も…危害は加えさせない、大丈夫だ、俺がいる」
「「グルルル……クゥーン…」」
言葉は伝わらなくとも気持ちは伝わったのか魔物は唸るのを止めて青年に擦り寄る。
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