翌日。
「ウオーン!」
「ん…?」
まだ日が上るか上らないかの暗い時間に犬の遠吠えのような声を聞いて彼女は起きた。
「うるさいなぁ…なにが………」
彼女はドアを開けてフリーズする。
「「「ヘッヘッヘッ…」」」
外には昨日逃げて行ったハズのアセスウルフが居て…その群れに家を囲まれていた。
「あ、これ…詰んだかも…」
昨日逃したのは間違いだったのか…と悟った彼女は目を閉じてそのまま突っ立つ。
「「「ヘッヘッヘッ…」」」
「…?」
だが数秒経っても襲って来ないので彼女は不思議に思い目を開ける。
「あ、そっか」
ヨダレを垂らしながら舌を出してるのを見て、お腹が空いてる…と直感した彼女は中に入って料理を作り始めた。
「私を食べに来たのか料理を食べに来たのか…」
死に直面していながらも彼女は全く恐怖を感じておらず呑気に料理を作っては大皿に移す。
「コレ…?」
大皿に盛られた料理を持って外に出て玄関から少し離れた場所に置く。
「ウオーン!!」
そして彼女が離れると群れのボスであろう『Lv37』と表示される魔物が吠えて皿に近づき食べ始める。
「ああ…やっぱり」
彼女はまた家の中に入り料理を作り始めた。
「ふふんふーん♪」
鼻歌混じりに料理を作っては外に出て空になった大皿に料理を移す…という作業を続ける。
「たとえ魔物だとしても作った物を食べてくれるというのは嬉しいもんだねぇ…」
魔物の群れが交互に食べてるのを見て、大皿に料理を移しながら彼女は呟いた。
「…ってアレ?」
彼女は周りの魔物を見渡して違和感を感じている。
「昨日の魔物が…いない…?」
表示を見るとボス以外で強い魔物が『Lv26』…
おそらく子供であろう一番弱い魔物でも『Lv11』だ。
弱くなっていたとしても彼女には二番目に強い魔物が昨日の魔物と同一だとは思えなかった。
「…もしかして…一晩で戦いまくってレベルが一気に上がった…?」
消去法でボスが昨日の魔物だと思った彼女は不思議そうに魔物に聞く。
「ウォフ?」
「まあ言葉が通じるワケもないか…」
目が合って首を傾げた魔物を見てそう呟いた彼女は大皿を回収して家の中に入る。
「…人が来ない山とは言え、あんなのに棲み付かれたら困るなぁ…昨日みたいに人が来ないとも限らないし…よし」
彼女は家の中をウロウロしながら今後の事を考えて手を叩く。
「…なんでついてくるの?」
日が上った朝方。
木の板数枚と木の杭数本持って下山する彼女の後ろから魔物が一匹ついて来ていた。
彼女が問いかけるも当然返事はない。
「…逃げないように見張り?それとも暇だから?」
興味が湧いたのかね…?と疑問を零しつつも山の入口に到着する。
「よいしょ…っと」
彼女は入り口の柵の所に袋から取り出したハンマーで杭を地面に打ち付けた。
そして『凶暴な猛獣注意!』と書かれた木の板を木の杭に固定して看板を作る。
「あと4ヶ所…」
そう呟いて彼女は山を周り込むように移動した。
「君は…」
3ヶ所目に看板を設置していると昨日の騎士と遭遇する。
「何をしてるんだ?」
「山が危なくなってきたから看板設置中、そっちこそ何してんの?」
微妙にレベルが上がっている『騎士 Lv28』という表示の青年の顔を見ずに彼女は木の板を固定しながら返した。
「いや…昨日の魔物が戻って来てないかと巡回に……っ!?」
「グルルル…!!」
青年が彼女と少し離れた位置にいた魔物に気づくと魔物が威嚇し始める。
「やっぱり戻ってきていたか!」
「あー、もう…めんどくさいなぁ…手ぇ出して」
彼女は頭を掻き、剣を抜いて構える青年に指示をした。
「手…?」
「朝ご飯でもうすぐ食べる予定だったのに…」
青年が魔物を警戒しながらも剣を握ってない方の手を差し出すと、彼女は袋から取り出した箱から山菜とキノコのかき揚げを取り出して乗せる。
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