「共存って…!魔物は敵なんですよね!?人間に害を与えるから倒すべき存在だ、ってみんな言ってるじゃないですか!」
私のお父さんだって魔物に殺されたのに…!と女の人は青年に対してヒスる。
「…そうだな、だが…こんな事になったのだから騎士団の教えは間違っていたのだろう」
青年は少し迷って自分の考えを話した。
「間違っていた、って…!」
「彼女から教えて貰ったよ…世の中に正義とやらが存在するのなら、間違えた物は死ぬ…と」
騎士団の暗部には俺も間違っていると断固反対していた…そしてこの結果だ、と青年は女の人を諭すように続ける。
「…それなら、人間を殺す魔物が悪で、それを退治して人々を守る騎士団こそが正義でしょ!?」
「…そりゃ人間側から見れば、ね」
自身の正義を叫んだ女の人に大きなダンボール箱を持った彼女が後ろから声をかけた。
「魔物から見たらその真逆の事が言えるよ?はいコレ」
「…おお、この紐…背負えるようになっているのか…緩衝材入り…?」
彼女は女の人に疑問系で言うと青年に大きなダンボール箱を渡す。
青年はダンボール箱に書かれた文字を見て首を傾げる。
「中に皿が入ってるからね…一応陶器じゃないから乱暴に扱っても割れないと思うけど」
「とう…?」
「ん~…タラサットゥオ製じゃない耐久、耐熱性に優れた丈夫な材質の製品」
彼女の発言で青年が更に不思議な顔をして聞き返したので言い直した。
「なるほど、確かにタラサットゥオ製は見栄えは良いが割れ易い」
「さて帰ろう」
青年が納得して大きなダンボール箱を背負ったので彼女は伏せっている魔物に跨る。
「…ここで一旦お別れだな」
「待って下さい!まだ話は…!」
青年が別れの言葉を告げると女の人は引き止めるような事を言う。
「…何が正義で何が悪かを決めるのは君自身だ、そして人は変われる…良い意味でも悪い意味でも…な、今俺が言えるのはこれだけだ」
「それはどういう…」
「悪いが時間だ…すまない…頼む」
青年の言葉に意味を問いただそうとした女の人に対し時計を見て謝った。
そして青年は魔物に跨って走るように指示する。
「…おお?おかえり」
山奥の小屋に着くと外を歩いていた男が魔物に乗ってる二人を不思議そうに見て挨拶した。
「ただいま」
「…た、ただ…いま…」
「ボスが、若いのが見当たらないって探してたんだが…お前達と一緒に行ってたのか…」
大きいダンボール箱を背負って体調悪そうにしている青年を見て男が呟く。
「ありゃ、心配かけてた?」
「いや、心配してるって感じじゃなかったぞ」
彼女が聞くと男は顎に手を当てて思い出しながら返す。
「確か…昼飯を出してる時だったかな?」
「あ、そういえば昼飯あげてないや…まだ残ってる?」
男が言葉を続けると彼女が思い出したように呟いて問いかける。
「いや…残念ながら残ってない」
「…だろうね、しょうがない…今から作るか」
夕方に帰ってくる予定がまだ昼過ぎだし…と呟いて彼女は家の中に入って行く。
「…何かあったのか?」
男はそんな彼女を見送りつつ地面に膝を着いて手で口を覆ってる青年に聞いた。
「…どう、して…だ…?」
「いや…彼女は元々徒歩で行く予定だっただろう?ソレが魔物に乗って行った、と言うことは…」
青年が聞き返すと男は推測を話し始める。
「あ、ああ…あったさ…さい、あくな事、が…な」
「最悪な事だと?詳しく」
「その…前に、水を…一杯、くれない、か…?」
青年は返答を聞いて怪訝な顔で聞き返した男にいかにも体調悪そうに水を頼んだ。
「…分かった」
男は直ぐさま了承すると家の中に入って行った。
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