「…どこへ?」
椅子から下りてドアの所に歩く男に女の子が不思議そうに駆け寄りながら聞く。
「点検や調整だ、この紙の通りに機能しているか…飛行中はどのようになっているのか…の確認だな」
着いたら知らせるからお前は好きにしろ、と男は袋から取り出した紙の束を見せて操舵室から出る。
「…好きにしろと言われても…」
女の子は反応に困ったように呟くと結局男の後をついて行った。
「…ふむ、この部屋も問題なし…か」
「…何を?」
部屋に入っては窓や棚、机やベッドを確認して紙に何かを書く…という作業を何十回も繰り返してる男を見て女の子が呆れたように問う。
「見て分からんのか?部屋の安全度を確認してるんだ」
「似たような作りの部屋をもう40は回ってるのにまだ確認する気?」
男が部屋から出ながら言うと女の子は呆れたまま聞いてくる。
「同じ作りだからといって全ての場所に同じ圧力や振動、衝撃が加わっているとは限らん」
「…それは…」
男の説明に女の子は何も言い返せなかったのか黙ってしまう。
「場所によって風圧による圧力や振動は違う、だから一部屋一部屋目で見て確認しなければならない」
隣の部屋に入って確認しながら告げた男の言葉に女の子はさっきの言葉が失言だったと気づき、背を向けて恥ずかしそうに俯いた。
「暇ならラウンジやデッキ、テラスなどに行ってみると良い」
「…私と貴方以外誰も居ないのに?」
男が移動を勧めるも女の子は恥ずかしさを紛らわすためか皮肉で返す。
数時間後。
「…コレで全ての確認が終了したな」
「…もうとっくに着いてるけど」
紙の束の内容を確認して男が満足そうに呟くと女の子が不機嫌そうに告げる。
「…30分ぐらい大目にみるぐらいの心の余裕は無いのか?」
「30分?今の時間を確認してみたら?」
男が不満そうに聞くと女の子はイラついたように聞き返した。
「…む、もう0時を過ぎてるじゃないか…アレから2時間近くも経っていたのか…」
「貴方は2時間も人を待たせておいてなお、不満を言う?」
袋から取り出したケータイで時間を確認して呟いた男に女の子が聞く。
「俺はお前だけでも降りたらどうだ?と提案したハズだが?」
「…そ…あ、貴方が逃げないように!」
男が逆に聞くと女の子は何かを言いかけてたった今閃いたかのような事を声を上げて言う。
「…逃げないように…か、まあいい…ココは俺が折れておこう、すまなかったな」
男は言い合いが長引かないようにと不満そうにではあるが謝る。
「…わ、私の方こそ、心が狭かったというか…」
「どうせ教皇と会うのは午後だろう?俺はこのまま修正作業に入るからお前は先に降りて休んでおけ」
女の子も謝ろうとするがそれを遮るように男は告げた。
「修正作業って…今から?」
「ああ、どうせなら休む前にMPを使い切ってからの方が良いからな」
では…と女の子の疑問に答えた男は手を振って廊下を歩いて行く。
「ちょっと待て…!どうやって降りれば…!?」
離れようとした男に女の子は焦ったように駆け寄って質問する。
「…スキルを使うように『ダウン』だ、ただし一旦降りると俺が居ないと乗れなくなるが」
「『ダウン』」
男が注意と共に説明すると女の子は試すように直ぐさま唱えた。
すると一瞬で女の子の姿が消える。
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