「グルルルル…!」
「ガルルル…!」
「くっ…!こんなの…自殺行為だぞ…!」
小屋に近づくと魔物達が青年を見て威嚇し始めた。
青年は冷や汗をかきながら警戒し右手で剣の柄を逆手に握りながら歩く。
「グルル…グオフ!!」
「っ…!!」
「ほらコレ、さっきみたいにな」
小屋の玄関で伏せっていたボスが青年を見るとすぐさま立ち上がって警戒したように臨戦体勢を取り、唸った後に吠える。
ソレを見た彼女は袋から箱を取り出して最後の一個のかき揚げを青年に渡した。
「…だ、大丈夫なのか…!?」
失敗したら死ぬぞ…!と青年は恐る恐るボスの前にかき揚げを投げる。
するとアセスウルフのボスは警戒したように匂いを嗅いで食べ始めた。
そして青年を警戒したままソッポを向いて玄関から離れる。
「ふぅ…」
危機を脱したからか青年は冷や汗を拭う。
「今から昼ご飯作るけど…あんたも食べる?」
「!?あ、ああ…お願いする」
家の中に入り、ドアを閉めて彼女が聞くと意外そうに青年が頼む。
「…エプロンが似合うな」
「だろ?この外見に合いそうなのをわざわざ街で買って来たんだ」
「そうか…ん?この外見…?その言い方だと他にもあるのか?」
青年は椅子に座りながら彼女とのやりとりで引っかかった事を聞いた。
「ああ、私も初めて見た時はびっくりしたんだけど…なんと料理の付与効果の中には『美形補正+』と『美形補正-』ってのがあって…」
「『美形補正』!!?」
彼女の発言に驚愕したように青年は椅子を倒して立ち上がる。
「ん、隠しステータスってやつじゃない?鏡とにらめっこしながら色々と試した結果…この顔と体型が良いかな、と」
「か、隠しステータス…だと?…しかし美形補正か…そんなのが世間に知れ渡ったら…」
青年は色々と想像したのか顔が少し青ざめた。
「って…今サラリと流したが、体型…と言ったよな?もしかして…」
「うん、察しの通り…胸の大きさに関する付与効果もあったよ?確か、『乳房補正』…だったかな?」
彼女は大きな鍋を取り出してコンロに乗せながら思い出すように言う。
青年はあまりにも衝撃的な内容に絶句している。
「色々と試した結果…やっぱりロリのような子供は貧乳、今ぐらいの少女なら並乳、お姉さんぐらいの大人が巨乳…の方がバランス良かったよ」
「…結構変幻自在なんだな…」
「って言ってもその料理、作るの結構難しいからね?火加減や時間で効果が変わるし」
美形や成長って言っても元の顔からあんまり変わらないし~?と彼女は食材の皮を向きながら裏事情を告げた。
「…そういえば…『料理』というスキルを調べたのだが…」
なんとも言えない顔をした青年が話題を変えるように話を切り出す。
「はるか昔までは使い手が結構居たらしいが…習得の難しさゆえに200年ほど前に途絶えたスキルらしい」
青年は鎧の中からメモ帳を取り出して説明する。
「君みたいに付与効果を追い求めた者も居たらしいけど…スキルなど無くても料理は出来る、と当時の人達は放棄したらしい」
「ふーん…それより、実はこのエプロン…他にもあってな、ロリ用お姉さん用大人用と揃えてるんだ」
青年の説明を興味無さそうに一蹴すると彼女は青年の方を全く見ずにエプロンの話題を押す。
「…君は男性なのだろう?精神が身体の方に寄っていってるのか?」
彼女の発言に青年は心配そうに聞いた。
「バカだなー…男だからこそ、可愛い美少女の格好や妖艶な美女の格好を見たいんじゃないか」
「…なるほど、一理あるな…」
説得?されてしまったのか青年は納得したように椅子を立て直して座る。
「ふんふ~ん♪…あああ~♪」
「その姿を見てるとどこからどう見ても女の子にしか見えないんだが…」
鼻歌混じり大きな鍋をかき混ぜる彼女を見て青年が水を飲みながら呟く。
「っと…コレは私らの分っと…」
彼女は弱火にして中身を少し柄付きの鍋に移す。
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