「…こうか…?」
「んー?…まあいいんじゃない?」
何故か餃子の中身を皮で包む作業を手伝い始めた青年の確認の問いに彼女は疑問系で返答する。
「…こんな感じですか?」
「まあそんな感じ」
女の人からの確認にも彼女はチラッと見ただけで適当に返した。
「…むう…意外と皮が破れ易くて難しいな…」
自分の手元のなんとかギリギリ形になっている餃子と、彼女の大きめの餃子を見て青年が呟く。
「指の力加減が難しいですね…」
青年に同意するように女の人も沈みながら呟きを漏らす。
「…だが初めから上手く出来る人などそうそう居ない…回数を重ねれば上手くなるさ」
青年は女の人を元気付けるような事を言って2枚目の皮を取る。
「そうですよね!」
元気よく返事をした女の人が2枚目の皮を取るが…
彼女は既に11枚目の皮に中身を入れて包んでいた。
「…端からやった方がいいよ」
2人のやり方がおかしかったのか見かねた彼女がアドバイスをする。
「端から…?」
「あと具材入れすぎ、もう少し減らした方がいいかもね」
青年と女の人にそう告げると彼女はスキルで綺麗にした大きな鍋に、大きめの餃子を並べるようにして入れていく。
「…おお、確かにやり易いな…」
「中身を減らすとやり易い…」
彼女が火を点けて大きな鍋に水を入れて蓋をすると青年と女の人が感心したように呟いた。
「んじゃまあ…それくらいで十分じゃない?」
青年と女の子が作った不恰好な餃子が20個ほど出来ると彼女が止める。
「…中々上手く出来ない物だ…」
「本当ですね…」
青年は自分で作った餃子を摘むと苦笑しながら呟き、女の人も同じように呟いた。
「さて…あと半分だ」
女の子と青年が手を洗いに行くと彼女は椅子に座って手際良く中身を皮に包んでいく。
「…まだ残っていたのか?」
「あんた達にやらせてたら昼ご飯が遅れそうだからね」
洗面所兼脱衣所から戻ってきた青年が作業を再開した彼女を見て意外そうに聞くと皮肉で返される。
「…すまない」
青年は善意での手伝いが小さな親切大きなお世話的な感じになったと思ったのか、彼女に謝った。
「…あれ?まだあったんですか?」
彼女がシカトすると戻ってきた女の人が青年と同じ事を聞いてくる。
「…あ、終わったかな?」
餃子の中身を皮に包む作業も終わりに差し掛かると彼女は大きな鍋の蓋を開けて中を確認した。
「おー…終わってる、あんた達ヒマならコレあげて来てくれない?」
蒸し具合を確認した彼女は大きな鍋を指差して青年と女の人に頼む。
「分かった」
「分かりました!」
「魔物一体で3個だからね」
即答に近い感じで了承した青年の女の人にそう告げながら彼女は作業を再開する。
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