結局、彼女がその日ずっと考えた結果…
畑の半分は麦などの穀物を育て、半分は新しい野菜を育てる事に決めたらしい。
そして稲を育てる水田も大きくするんだとか。
「…とりあえず新しい柵も出して広げて…川から引いた水路ももうちょい大きく…」
彼女はまるで農家のごとく農地として使っている場所を弄り始める。
一日かけて農地を増設した彼女はまず果物の木を植えて、接ぎ木をした。
「…こんなもんかな…」
朝始めた作業が日が暮れるまでかかり…畑に5本の木が新たに増える。
次の日。
彼女は増設した畑に穀物や野菜の種を蒔き水田に稲を植えた。
「うーん…気候や温度、栄養剤の効果から考えると収穫出来るのは早くて2~3週間…遅くても一ヶ月ぐらいかな?」
空を見ながら彼女は水で薄めたスープ…もとい栄養剤を畑や水田に撒きながら呟く。
更に次の日。
栄養剤のおかげで無駄に元気になった雑草達をスープ…もとい野菜や穀物に優しい除草剤を撒いて除去する。
そして畑の作業もいつも通り安定してきた頃。
「ふはは!笑いが止まらない!」
プレハブのような納屋に引き篭り『魔導師』から『魔導召喚師』へとランクアップした男が再び高笑いしていた。
「…魔導…召喚、師…?」
「…初めて聞きます…」
青年も女の人も男の表示を見て首を傾げる。
彼女は例のごとく何の興味も示さずにスルーして畑に向かったが。
「当然だ、召喚士と呼ばれる職業は100年に一人出るか出ないかと言われている伝説の称号だからな」
男は自慢するように胸を張って言う。
「…伝説、だと…?」
「ああ、疑うなら外に出ろ」
青年が信じられないように呟くと男はドアを顎で示す。
「…見るが良い…コレが究極の魔法!魔導の頂点、召喚術だ!魔導スキル『召喚』!」
青年と女の人が外に出るや否や男が叫んでスキルを使う。
すると突然空中に魔法陣が浮かび上がった。
「グオオオ!!」
そしてその魔法陣から火を纏った鬼のようなモノが出てきて、天に向かって吠える。
「「「「グルル…!!」」」」
「…コレはマズイな、召喚スキル『ストック』」
突如空中に現れた炎を纏う異形のモノに、魔物達が一斉に臨戦体勢に入って警戒するように唸ったのを見て…男が慌てて召喚獣を消す。
「…い、今のは…?」
「『イフリート』を模した火の召喚獣だ、今のは大してMPを使って無いから2mほどの小ささだったが」
呆然としたように聞く青年に男が軽く説明した。
「…アレで小さいのですか?」
「ああ、ちゃんとしたヤツは3mを超える」
女の人の疑問に男は袋から本を取り出して答える。
「モチーフはコレだ」
「…童話か…?」
男が差し出した『召喚と獣』という名前の本を見て青年が問う。
「ああ、俺が小さい頃に何百回も読んでいた本だ」
「…炎の鬼『イフリート』氷の女王『シヴァ』雷の王『インドラ』風の精霊『シルフ』土の巨人『ゴーレム』…」
青年は本をパラパラと捲って出てくる召喚獣の名前を呟いた。
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