「…ああ、そういえば…今さっき電話が鳴っていたぞ」
「電話が…?珍しいな…」
思い出したように男が報告すると青年が呟きながらケータイを取る。
「…もしもし?」
「あ、お疲れ様です!政府から報告が来ましたので連絡した次第ですが…」
青年が直ぐさま掛け直すと2コール目で電話が繋がりこの前の女の人からの報告が。
「…思ったより早かったな、それで?」
青年は聞き返すと周りにも聞こえるようにスピーカーをオンにした。
「はい、政府はそちらの条件を呑む…と、ですが…そのための条件を提示して来ました」
「条件を呑むための条件、か…」
「…まあ政府としては言いなりになるのは面白くないんだろうね」
「…条件とは?」
女の人の報告に男は鼻で笑って彼女は政府の真意を探るような事を言う中、青年が続きを促す。
「国が街の所有権を放棄する代わりに、問題解決のための援助は一切行わない…と」
「…こっちとしてはありがたい条件だね、下手な人員よこして魔物を刺激しなくて済むし」
「分かった、その条件を受け入れると即答した…と伝えてくれ、あの街の問題は我々が解決する」
条件を聞いて彼女が皮肉気に言うと青年が女の人に了承の伝言を頼む。
「…大丈夫ですか?」
「ああ、既に作戦は練ってある…今日から動くさ」
「…幸運を祈ります」
電話越しの心配したような問いに青年が笑いながら返すと女の人はボソッと呟いて電話を切る。
「おいおい…」
「…今日から動くって…」
「ああ、昼飯を食べたら早速あの街に行って魔物達と話し合いをしてくるつもりだ」
意外そうに呟いた男と彼女に青年は決意を込めた目でそう告げた。
「んじゃ、コレ渡しとく」
昼食後、片付けを済ました彼女が冷蔵庫から水筒を3本取り出して青年に差し出す。
「これは…?」
「赤いテープが貼られてるのが『耐性・極』で一口飲めば一定時間…5分間ぐらい?は全ての状態異常やステータス変化にかからなくなる」
不思議そうに3本の水筒を見る青年に彼女が左から順に説明する。
「「なっ…!?」」
最初の一本の説明に対して青年と男がほぼ同時に驚いた。
「んで青いテープが貼られてるのが『回復』、効果は端折るよ」
彼女は驚いている二人をスルーして話を続ける。
「で、最後の黄色のテープが貼られてるのが『ゾンビ解除』…ゾンビになっても気合いで飲むぐらいはできるっしょ」
「…感謝する、ありがとう」
説明を終えた彼女に青年が90°の綺麗なお辞儀をして礼を言う。
「普通にやったんじゃ魔物と話し合いなんて無理だろうし、さあ早く行け」
彼女は適当に流すとシッシ…と追い出すように手を振った。
「あっと忘れてた…ホイよ」
ドアを開けて出て行こうとした青年に声をかけると彼女は小袋を投げる。
「…これは?」
「『意思疎通』の効果がある焼きキノコ、適当な魔物に食べさせて通訳でもさせろ」
「…何から何まですまないな」
彼女が小袋の中に入ってる料理の説明をすると青年は笑いながら出て行った。
「…アイツにだけサービスが良すぎないか?」
「そう?だったらあんたも一緒行けば?」
男の疑問に彼女は適当に聞き返す。
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