「その時間までに連絡が無かったら作らないから」
「分かった」
続けて言った彼女の言葉に男は了承して頷いた。
「…出張した時には何かしらのお土産を買ってくるが…何か欲しい物とかないか?」
「いや、無いけど……まあ強いて言うなら食材、かな…?その地域の特産品とか」
男が聞くと彼女は一旦断って、少し考えながら挙げる。
「特産品か…」
「流石にこの山だけの食材じゃ頑張っても100種類程度ぐらいしか作れないし」
「…そ、それでも十分だと思うが…」
彼女の返事に男は驚いたよう口角をヒクヒクさせて呟いた。
「ただ…まあ…あんたが珍しい食材を持って来たらその都度弁当を作ってやるよ」
「べん…?…なんだそれは?」
彼女がモップがけを終えて言うと聞き取れなかったのか男が聞き返す。
「料理を容器に詰めて外出先でも食べれるようにする事」
「!?なんと…!珍しい食材だな、分かった!」
彼女の説明に男は慌てて袋から本を取り出すと読み始める。
「…珍しい食材とは、こういう物か?」
男はガイドマップのような本の写真を指差して彼女に問う。
「ん~…この辺じゃあまり手に入らないような食材が珍しいんじゃないの?」
「うぬ…確かにコレは良く見かけるな…」
彼女が否定するように疑問系で言うと男は唸ったように呟いて家から出て行った。
「?…まあいいか」
彼女は外に出て行った男を見て首を傾げるとモップを片付けて掃除を再開する。
「…?いまアイツがブツブツ呟きながら新しい納屋へ入って行ったが…何かあったのか?」
「いんや?何もないよ?」
夜のランニングから戻って来た青年が問うと彼女はどうでも良さげに返した。
「…そうか」
青年は彼女の返事を特に気にせず風呂場に向かう。
「…ふう…」
すると女の子が息を整えながらドアを開けて中に入って来る。
「お風呂、先入ります」
「おー」
女の子の報告に掃除中の彼女は興味無さそうに返した。
「…あ」
「っ!きゃああああ!!」
青年が先に入ってる事を思い出した彼女が呟くと同時に、女の子の悲鳴が響き渡る。
「…あーあ…」
「…何事だ!?」
やっぱりな…と彼女が零すと男が慌ててドアを開けて事態を確認しに来た。
「…アレが先に入ってる風呂に、女の子が入って行った」
「…なんだ、ラッキースケベか…」
彼女の報告に男は安心と呆れが混じったように息を吐いて呟く。
「まったく人騒がせな…」
男は迷惑を被ったかのように呟きまた家から出る。
「…若いっていいねぇ…」
風呂場から聞こえてくる声に彼女は目を細めながら漏らし、掃除を続けた。
「ふぅ…まさかこんな事が現実にあるとは…」
少しして脱衣所から出てきた青年は疲れたように椅子に座って零す。
「…次からは騒がないように言っといてね、流石にうるさかった」
そんな青年に彼女は女の子に注意するよう指示する。
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