「…おっ、おかえり」
「ただいま」
彼女が家に戻ると裏の方で本を読んでいた男が帰宅に気づき手を上げる。
「…おお、おかえり」
「…ああ、うん」
彼女が男に適当に返事をして家の中に入ると…なぜか洞窟方面に走って行ったハズの青年が帰宅していた。
まっすぐ帰ってきた自分よりも早く帰って来てるのに、彼女は特に気にする事もなく流す。
「いやー、山でのランニングは足腰や瞬時の回避術が鍛えられるな」
「…そうだね」
爽やかに笑う青年を興味無さげにスルーして彼女は籠を置いて外に出る。
「「どこかに行くのか?」」
ちょうど家の中に入ろうとした男と、外に出ようとした青年の声が被った。
「…ちょっと街に買い出しに、昼ごはんは冷蔵庫に入ってるから…昼時になったら魔物達にも出して」
彼女は鬱陶しそうに眉を寄せるも冷たい対応はせず二人に魔物への昼ごはんの提供を任せる。
「街に?珍しいな…」
「ちょっと調理器具や大きめの皿やボウルが欲しくなったからね」
自分で作るのも面倒だし…と呟いて彼女はスタスタ歩いて行った。
「…どっちかが一緒に行った方がいいかもな」
「ああ、山の外でなにがあるか分からないからな」
「ヘッヘッヘッ…」
青年と男が相談してると『Lv32』と表示された魔物が近づいてくる。
「…いや、お前達がこの山から出たら色々な意味で危ないから護衛は山の麓までにしてくれ」
「クゥーン」
男の発言に言葉が通じなくとも言ってる事が分かったのか魔物は落ち込んだように頭を下げた。
「…じゃあ俺が行こう、鬱陶しがられるのは慣れてるからな」
「…自覚してたのか…分かった、何かあれば連絡をくれ」
青年の提案に男は呆れたようにため息を吐いて家の中に入って行く。
「さて、追いかけるか…」
「ウォフ!」
青年が走り出そうとすると魔物が伏せって吠える。
「おお、運んでくれるのか…ありがたい…ってうおっ!?」
魔物の意図を理解出来た青年が背中に跨(またが)るや否や魔物が走り出す。
突然の行動に青年はバランスを崩し危うく振り落とされるところだった。
「ウォフ!」
「…え?なに?」
「に、荷物持ちとして…一緒に…行かせてくれ…」
山の中腹を歩いていた彼女が突然現れた魔物に驚くと顔を真っ青にした青年が背中から下りる。
「…大丈夫?」
流石(さすが)の彼女も体調悪そうな青年を見て心配そうに声をかけた。
「あ、ああ…馬と違って、予想外…でな…」
フラフラとした足取りで歩きながらも彼女に心配はかけまいと青年は無理やり笑う。
「…まあそこまでして来たんだから無理やり追い返せないけどさ…体調悪いんなら帰ったら?」
「…大、丈夫だ…少しすれば…」
珍(めずら)しく彼女が気を使うも青年は止まる事なくフラフラと山道を下る。
15分後。
「ふう…もう大丈夫だ」
「なんで魔物に乗ったの?」
「いや、乗れと言わんばかりに伏せってたから…」
「ふーん…まあ進歩してるのかね」
彼女は青年に疑問を聞くも返答を聞いてどうでも良さげに呟く。
「ところで、どの街に……あれは…っ!?」
青年が彼女に問いかけようとすると麓に差し掛かった所で倒れてる人を発見した。
「何故ここに…!おい、大丈夫か!?」
倒れてる人の格好を見ると青年が慌てたように呟き、急いで駆けつける。
「…う……やはりココに…間に合っ、た…」
青年が『騎士 Lv16』と表示されている女の人の上半身を起こすと少し呻いて目を開け、青年の顔を見ると安堵したように呟いた。
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